2017年8月17日木曜日

160m用E級アンプ顛末記と今年のハムフェアについて

7,8月といろいろイベントが重なって160m用の送信機を弄る時間がありませんでしたが、ちょっと落ち着いてきたので、しばらく悩んでいた不具合の原因を探っていました。

160m版はVN-4002とは異なりプッシュプル型のE級アンプで構成しています。


Si5351Aで発生させた1.9MHz台の矩形波を180度位相差をつけるため、片方だけに(回路図の上側部分)インバータを通します。各信号を74HC04を3パラにしたドライバでNchパワーMOSFETのFKI10531を5Vで駆動しています。

電源9Vで8W強、12Vで15W、13.8Vで20W前後得られますが、13.8Vの場合符号を打っているとランダムなタイミングで急に電流が上昇して必ず上側のFETだけが壊れてしまいます。また過電流でキーイング用のDMG3415も壊れてしまいます。まずはDMG3415を高耐圧のPchMOSFET 2SJ334に交換しました。

対策を模索しゲート・ソース間の抵抗値を下げたりゲートにシリーズにコンデンサを挿入したりしましたがまったく効果なし。ローサイドドライバを間に挿入してみたけれど、今度はドライバが壊れてしまうという泥沼に・・・壊れたFKI10531はかれこれ十数個にのぼり・・・(涙

しかし、上側のFETだけがいつも壊れるのでどうもロジック回路になにか問題があるのかと考えロジック出力とFETのゲートを一旦切り離してロジック回路の動作検証を行いました。

上側部分は送信用信号入力から一度インバータを通しているので、信号が途絶えるとロジック出力はHI状態が続きます(下側はLO状態が続きます)。このため信号がないときはNANDゲートを通してキーイング信号をLOにすることで、上側のロジック出力もLOになるようにしていますが、何かが原因で上側の出力が持続してHIになっているのかもしれません。

で、キーイング信号と上側ロジック出力、上下ロジック出力をそれぞれ同時観察して符号を繰り返してみると・・・

 ちょっと斜めになってます^^;
上の赤い曲線はキーイング信号で下の黄色は上側のロジック出力です。約500μ秒HIが持続してから1.9MHz台の矩形波となっています。どうやら信号入力に対してロジックがしばらくの間無反応になっているのかもしれません。さらに厄介なことに、この現象はランダムに出現します。

 ロジック回路の電源もキーイング信号でオンオフしている関係なのか曲線が乱れ分かりにくいため、ロジック回路の電源を常時接続に換え、今度は両方のロジック出力を観察しました。

(上下逆にすればよかった^^;)
上の赤い曲線は下側のロジック出力です。オシロが2現象タイプなのでキーイング信号曲線は観察できませんが,ランダムに↑画像のように700μ秒ほどHIレベルが持続している現象が確認できました。

FKI10531のデータシートの安全動作領域図とVGS-ID曲線をみると、

  と、VDS13.8V、500~700μ秒のパルス幅ではID10~20Aが限界ラインに見えます。30A供給可能な電源を繋げゲートに数百μ秒間5Vかかると、一瞬大電流が流れてFETが壊れてしまいそうです(直流負荷がほとんど0Ωなので)。

 この現象について、たまたまこのロジックIC固有の問題かそうでないのか考えてみましたが、データシートを見ているとどうも入力信号のHIレベル3.3Vに対して5Vロジックで受けていることが原因かと思い、ロジック回路の電源を3.3Vに下げて観察すると上のようなランダムな現象は起きませんでした。というわけで結局5Vでは3.3Vの入力HIレベルはギリギリなためという一応の結論になりました。(最初からレベル合わせろよという声が聞こえます・・・はい、ごもっともです、すいませんごめんなさい^^;)

ID-VGS曲線を眺めているとVGS3.5VあたりでIDが25A程度となって、3.3Vで駆動するともう少し少なくなります。オン抵抗や効率では多少劣るものの安全面、精神衛生上良いかもしれません。

ということで、VDS13.8V、VGS3.3VでFKI10531を駆動してみました。

赤がVDS、黄色がVGS曲線です。Cissが1500pFと高いので立ち上がりと立下りがかなりなまっていますが一応駆動できているようです。このときの出力は約18W(LPF通過後)、電流は1.72Aで効率は約75%程度となりました。

しばらくこれでテストを続けてみて問題なさそうであればプリント基板を起こしてみようと考えています。

・・・これで順調かと思われましたが、やはり13.8Vで送信しているとどこかのタイミングで上側のFKI10531が壊れてしまいました。どうもロジック回路がほんとうの原因ではなさそうです。ちょっとめげそうになりましたが、ロジック回路以前の制御系が問題なのではないかということでコントロール部の送信波出力とキーイング信号を引き出してオシロスコープで観察してみました。

赤がキーイング信号 黄色が7MHzの送信波出力
 送信波出力が発生して約2ミリ秒後にキーイング信号出力がHIになっています。これは設計どおりの動作です。しばらく符号を繰り返していると・・・


 ときどき送信波出力発生からキーイング信号HIまでの時間が短くなったり、さらに


 キーイング信号が先にHIになって約500~700μ秒遅れて送信波が発生しています。
これらの現象がランダムに起こっており、最後の画像の場合上側のFKI10531のゲートが500~700μ秒オン状態が持続していることになり、その結果上側のFKI10531が壊れてしまったというところまで突き止めました。

ファームウエアのコードを見直し問題を見つけて修正したところ、このランダムな現象はようやく解消されました。ソフトウエアの問題でこれだけハードの障害をおこすという事例自己解決することができましたがとても勉強になりました。

最初に疑っていたロジック回路には問題がないとおもわれるので5V駆動に戻そうかと思います。

閑話休題。

ところでまもなくハムフェア2017が開催されますが、今回は残念ながら別の用件で両日とも参加できなくなってしまいました。したがってここ数年参加していた全日本長中波倶楽部やVN-4002の展示や頒布もありませんのでご了承ください。

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