7MHzQRPCWトランシーバの基板パターンレイアウトをぼちぼち描いている途中ですが、試作機でワッチしているとAGCの効きは十分なものの、やはり立ち上がりが一歩遅くて信号の最初一瞬音が大きくなってしまいます。
AGC電圧はAF信号を整流した電圧をオペアンプの差動増幅器を通して作り出していますが、周波数が低くまたダイオードを使った半波整流のため平滑コンデンサがある程度大きくなり、立ち上がりが遅れてしまうため特に強信号時にワンテンポAGCの効きが遅れるようです。
なんとかファーストアタック・スローリリースなAGCに近づけたいといろいろ模索してみました。
辿りついたのはオペアンプで構成する理想ダイオードによる絶対値回路でした。
採用した絶対値回路はいろいろとある中で、比較的部品点数が少なくてそこそこの精度が出せる回路としました。
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2つのオペアンプ間にぶら下がるコンデンサがミソ |
回路的には反転増幅型の理想ダイオードに続いてボルテージフォロワが繋がっていて正電圧領域を出力に繋げる抵抗、2つオペアンプ間に接続するコンデンサで構成されています。
1N4148に並列に接続する33pFは負電圧領域に切り替わった際に生じるリンギング抑制目的です。
でもって早速ブレッドボードで組み上げて実験です。
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このくらいの回路なら数分で組み上げ BBはホント便利ですねぇ |
iPhoneのアプリで生成した500Hz正弦波を入力して入力波形とともにオシロで同時観測。
(このときオペアンプ間のコンデンサは外しています)
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赤いラインが入力波形 黄色が出力波形 |
特に高精度抵抗は使用しませんでしたが、出力は見た目綺麗な全波整流波形です。
このくらいの周波数なら問題はなさそうです。しかし、時間軸を拡大してみると・・・
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入力が負電圧に切り替わる部分の拡大図 |
入力が負電圧領域に切り替わった瞬間ある時間まで出力が0になっています。それでもって入力周波数を上げると
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8KHz正弦波入力時 遅れがさらに目立ってきます |
このように遅れが目立つようになってきます。使用しているスイッチングダイオードの応答かオペアンプ自体の特性が原因かどうかまだ切り分けしていませんが、この全波整流回路では使用できる周波数がかなり限られそうです。
ただCWでは扱うAF信号は2kHz程度までで良いと思うので、これで十分かもしれません。
さて、次に入力周波数を500Hzに戻しオペアンプ間のコンデンサを接続して入力信号を断続的にオンオフして観察しました。
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1μF時 立ち上がりは鋭く立ち下がりはなだらかです |
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10μF時 立ち上がりの遅れはあまり見られずより立下りがなだらかに |
オシロで見る限りでは結構期待できそうな波形になりました。
なぜこのように立ち上がりが鋭く立下りがなだらかになるのかは説明するのが難しいですが、オペアンプの理想ダイオードに使用している2つのダイオードの役割が大きいかもしれません。
試作機ではオペアンプ2個分使っているのでもう2つ用意しなくてはならず実装は難しいので、作成中の基板に実装してテストしようと思います。
追記:
LM358とは別のオペアンプNJM7032Dを手持ちで見つけたので、LM358を換装して8kHzの正弦波を入力して出力波形を観察してみました。
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NJM7032D換装後の8kHz正弦波入力・絶対値回路出力波形 |
NJM7032Dは、単電源動作可能な出力レールトゥレールなオペアンプで5Vの単電源でも十分動作可能です。
出力波形はLM358と比較して立ち上がりの遅れが短くなっています。
なお、出力波形の遅れは回路に使った抵抗とオシロスコープのプローブ線によって信号遅延が起こった結果でした。信号源に直接繋ぐプローブと100kΩ抵抗をシリーズに別なプローブに接続して観察すると同程度の遅延が見られ、測定系による影響と判断しました。