2021年12月31日金曜日

まもなく年を越しますが・・・

 2021年を振り返ろうと思いましたが、VN-L5を3台製作していて3台目がトラブって解決に時間をとられてしまいました。

 ですので簡潔にまとめ。

1.VN-xx02シリーズとVN-L5キット頒布終了

  VN-xx02シリーズは約200台、VN-L5キットは人柱版含めて40台程度頒布しましたが、次期トランシーバーキット開発のため頒布終了となりました。キットを組み上げて免許をおろして実際に運用していただいた各局ありがとうございました。

2.おかもちGoBox製作

  おかもちをGoBoxにするアイディアを武村OMが発案され、それを真似て自分も作ってみました。160mから6mまで5.6mの内蔵ロッドアンテナとマッチングボックスでカバーできるように仕立ててあります。 運用実績はまだまだですが、暖かくなってきたら外に持ち出して移動運用をしてみたいと思っています。

3.RFワールドに寄稿

  原口OMからSi5351Aの記事をお勧めいただきまして、最新号のNo.56に基本的なSi5351Aの制御法について書かせていただきました。自分なりに整理するつもりでまとめてみましたがお役に立てたかどうか。

まだまだあったかと思いましたが、あと15分ほどで新年となりますので、この辺で締めます。

来年もどうぞよろしくお願いいたします。

2021年11月2日火曜日

RFワールド No.56へ寄稿させていただきました

 10/29にCQ出版のRFワールド誌No.56が発刊されました。

 

RFワールド誌は『無線と高周波の技術解説マガジン』と銘打ち、無線通信はもちろんのこと産業や医療にかかわる高周波の利用の実際等詳細な解説を特徴とした季刊誌です。

今号と前号のNo.55で製作による無線・高周波の実践体験シリーズという特集の執筆を担当された7L4WVU原口OMのご紹介で、3出力プログラマブル・PLLクロックジェネレータIC Si5351A-B-GTの解説と使用例の記事を執筆させていただきました。

Si5351Aに関しては以前よりこのブログでも設定方法などの記事を投稿していましたが、今回は一旦総まとめという形で残すことができました。

RFワールドのサイトには各記事のpdfファイルやダウンロードサービス(私の記事でも制御プログラムのソースコードやバイナリを用意させていただきました)がありますので、興味がありましたらアクセスしてみてください。

なお残念なことに今回のNo.56をもってRFワールドは休刊となりますが、同出版社から刊行されているトランジスタ技術誌の常設コーナーとして記事を継続する予定だそうです。

2021年9月17日金曜日

FT-857DMメインダイヤルのロータリーエンコーダ交換記

 しばらく投稿サボっていました。すみません。

今もってCOVID-19蔓延が続いていますが、とりあえず元気に過ごしています。

さて、アマチュアキットクリエイターズ AKCのまとめ役であるJQ1SRN武村OM発案のおかもちGoBox(またはGoKit)に触発され、自分もおかもちを入手して少しずつおかもちGoBoxを作成中なのですが(そのうちまとめて記事にする予定)、おかもちに内蔵するFT-857DMのメインダイヤルの動作がいつの間にかおかしくなってチューニングしにくくなっていました。

製作中のおかもちGoBox 単体でQSO可能 災害時に有用か?

通常ダイヤルをまわすと1ステップずつ周波数が上下するはずですが、ある範囲で1ステップ上下を繰り返してしまったりでもどかしいです。

 


 この手の動作不良の原因はたいていダイヤルのロータリーエンコーダなので、この際自分で交換を試みようと考えました。まず857シリーズに使用されているロータリーエンコーダを検索すると、COPAL製のRES20D50-201-1Gという型番の光学式ロータリーエンコーダが使わていることが分かりました。

FT-857DMはずいぶん以前に購入して今やディスコンの機種ですが、幸いなことにエンコーダ自体はまだ入手可能のようでした。

Amazonでも交換用のコネクタ付きのものが検索でヒットしたのですが、現在取り扱いがないようで代わりにコネクタなしのRES20D50-201-1が2000円以下で入手する事が出来ました。

でもって早速コントロール部を分解してロータリーエンコーダにアクセスします。

 

 分解は比較的容易でした。各ダイヤルのツマミを外し、裏側のネジを外して裏蓋をとりはずし基板を固定するねじを外します。あとはエンコーダーのコネクタとフラットケーブルを外して基板を写真のように前面パネルから離すとロータリーエンコーダにアクセスできます。

左が新品のエンコーダ 社名がNidecに変わっていますね

 購入したエンコーダはコネクタが付いていないので、オリジナルのエンコーダの配線を切って新しいエンコーダの配線につなげました。
エンコーダの裏蓋を外すと中の基板に配線がハンダ付けしてあったのでここで換えればよかったなーとちょっと後悔しました


制御用にH8マイコンが使われていますね

 そんなわけで各パーツを戻してコントロール部を組みなおし、早速動作確認。


 当たり前ですが、1ステップずつ変化するようになりました。快適快適(笑)

ちなみにこのロータリーエンコーダは、データシートを見ると光学式で、コンパレータICを内蔵しており確実に5Vのパルスが出力するような設計になっています。

交換した動作不良のエンコーダの動作を確認すべく5V電源に繋ぎA,B各相の出力波形をオシロスコープで観察しました。


 本当は定回転モーターがあると分かりやすいかなと思ったのですが、手持ちにはないので857DMのダイヤルをつけて手で回してみました。

その結果回転速度に依らず、ある範囲の角度でA,B相ともにパルスが抜ける箇所が見られました。パルスの抜けている範囲はA,B相で異なっており、このことがエンコーダの挙動がおかしくなった原因でしょう。

しかし光学式でこのような故障が普通に起こりうるのかは分かりません。またそもそもの原因がコンパレータICか光源LEDの不良によるものかはさらに分解してみないと何とも言えないのですが、これ以上は面倒なので追及しません。

ともあれ動作不良が解消されたのでおかもちGoBoxの作りこみを進めていこうと思います。

2021年2月1日月曜日

電流モードD級(Current Mode Class D; CMCD)増幅回路の実装実験

 VN-xx02シリーズやVN-L5シリーズの終段増幅回路はE級増幅回路を採用し、高効率で消費電流や素子の発熱もかなり抑えていますが、E級ネットワークの性質上狭帯域で多バンド化は困難です。

そこで主に海外の事例をたどってみるとD級増幅が目にとまり、実装実験を試みました。(ここでいうところのD級はオーディオアンプのD級アンプとは異なります。追記:オーディオ用のD級もPWM変調をかけているVMCDの一種と記載されている文献がありました。

実験前にまずE級とD級の回路と動作をおさらいします。

E級は図のようにスイッチング素子の出力側にE級ネットワークという一つの共振回路を形成して素子のオンオフで各々素子にかかる電圧と電流をE級ネットワークで共振させゼロボルトスイッチング(ZVS)を実現しスイッチング損失を抑えて効率を高める方法です。


それに対してD級には2つの動作モードが存在しますがいずれもプッシュプル増幅回路に適用されます。

ひとつは電圧モードVoltage Mode Class Dで、素子がオンの時流れる電流が半正弦波状となりZVSとなった直後素子がオフとなりその間は電圧が最大になります。

もうひとつは今回実装した電流モードCurrent Mode Class Dで、素子がZVS後オフの間に電圧は半正弦波状となって再び電圧ゼロになったときに素子がオンとなり、オンの間流れる電流は最大になります。


いずれのモードもE級と同じくZVSを実現しているので高効率で、しかもE級のように電流電圧それぞれに共振させるのではなく出力回路に電流もしくは電圧にのみに対する共振回路を追加すればよいことになります。ただしE級に比べてのデメリットもあります(素子の出力容量による損失や、スイッチングのタイミングのずれによってZVSが崩れてスイッチング損失が生じる可能性がある)が、E級ネットワークを省けるため、例えば広帯域化の可能性も見えてきます。

D級増幅回路を実装している例はフィンランドのJUMA製135kHz、475kHz送信機、TX-136、TX-500の50W出力の終段回路やネットで見つけた400W級のRFパワーアンプくらいしかありません。

TX-136やTX-500を所有しているのでその高効率ぶりは体験していますが、今回E級プッシュプルを採用しているVN-L5シリーズにも適用できないかということで、CMCD化実験をしてみました。


上はVN-L5の終段E級プッシュプル増幅回路です。L1-C10、L2-C11がE級ネットワークなのでこれらを外してQ4,5のドレインをT3の3ピンと6ピンに各々直接繋げます。


実際のVN-L5オリジナルTX部の画像です。基板の右上の2つの小さなトロイダルコイルとその右側にある水色の四角いフィルムコンデンサを取り除き下の画像のように各FETのドレインを出力トランスに直接接続しました。

出力トランスに2次側の巻き数を半分に減らすことで、電源電圧13.8Vで14~15W程度の出力を得ましたが、出力トランスのコアの発熱が著しく長時間の出力にはどうやら耐えられそうにありません。そこで出力トランスをコンベンショナル型から伝送線路トランスに巻き方を変更することで出力トランスのコアの発熱は抑えられました。

またRFCも一つのコアにまとめる実験も行いましたがRFCコアの発熱が著しいため個別に用意するようにしました。

下の回路図が最終的なCMCD化終段回路です。


これは160m版も80m版も回路は同一で、LPFの定数のみバンド別となっています。

上の画像は片方のFETのドレイン電圧波形をオシロスコープで観察したキャプチャでおおよそFETオフ時の電圧は弧を描いています。

電流波形は今回観察できていませんが連続出力でもFETの発熱が緩やかなのでおそらくZVSにはなっているでしょう。

念のため160m版、80m版の出力波の高調波スプリアスを測定すると、2次3次高調波はいずれも-50dBc以下と新スプリアス基準はクリアしているようです。

80m版の高調波スプリアス

160m版の高調波スプリアス

ちなみに効率はおよそ75%前後とE級増幅回路と遜色ない程度でした。

そうゆうわけで今回のCMCD化実験ですが、いくつかのポイント(RFCと出力トランスなど)を押さえることで、LPFの切り替えによる多バンド化の可能性を少しばかり見出すことができました。

2021年1月8日金曜日

遅ればせながら本年もよろしくお願いいたします

 新年あけてはや1週間経過してしまいました。

 遅ればせながら本年もどうぞよろしくお願いいたします。


 昨年はCOVID-19蔓延の影響で無線関連のイベントはハムフェア含めほとんど中止になってしまったため主にキットの通信頒布に終始しましたが、本年もCOVID-19終息の兆しが見えない状況のためAKCでのイベント参加はやはり難しそうです。

ともあれ一人でできる範囲で活動は続けていくつもりです。

んで今回の本題ですが、年はじめ恒例のニューイヤーQSOパーティにちょっとだけ参加しました。今年は規約が変わって開催期間が長くなり参加しやすくなったので、まず160mのCWから出てみようと思いました。今までは160mのアンテナは自作SRAを上げていましたが、今回新たにアンテナを自作してみました。

アンテナはエレメントを過去に関西アマチュア無線フェスティバルで購入した3.6m長の大型ロッドアンテナを使用し、ローディングコイルを巻いてインピーダンス変換トランスで整合した短縮型1/4波長バーチカルアンテナとしました。

アンテナエレメントのロッドアンテナを同じ長さ程度の塩ビ管に入れてロッドアンテナの保護と支持を行い異径ジョイントでふた周大きい径の別の塩ビ管につなぎ、写真のように0.8mm径のUEWでローディングコイルを巻きました。

MMANAで計算したインダクタンスを目標に巻き数を決定し(今回の場合はVU40(48mm径)に0.8φUEWを100巻き、約220μHとしました)、巻いたコイルの下にマストクランプを取りつけ、ベランダの金具に設置した短いマストに取り付けました。


アンテナ本体をマストに取り付けたら、ロッドアンテナを伸ばしてアンテナアナライザで共振点を探ります。今回はnanoVNAではなくminiVNAproBTでandroidスマホにBluetooth接続して測定しました。余談ですが操作性はminiVNAproBTが良いですね。でも1台で済むnanoVNAも捨てがたいので、フィールドでどちらを使うかまだまだ悩んでいます。

ロッドアンテナを目いっぱい伸ばすと共振周波数は1.6MHzと低く出ました。周囲の影響もあると思いましたが、今回はローディングコイルは解かないで、ロッドアンテナを若干縮めるることで1.9MHzに共振するように調節を行いました。

共振周波数での純抵抗が約20ΩとMMANAの計算値より大きい(ローディングコイルのQが思ったより高くないのかもしれません)結果でしたが、トランシーバのアンテナインピーダンス50Ωに整合するため自作のインピーダンス変換トランス(マルチアンアン)を挿入し整合させた結果が下のスクリーンキャプチャです。


 VSWR1.5以内の周波数範囲は10kHz以下と狭いですが、1.9MHzバンド内に収まるためひとまずOKとしました。

ちなみにインピーダンス変換トランスの外観はこんな感じです。


 ケースの中には確かFT114-43にテフロン線を巻いて作ったマルチアンアンが入っていたと思います。ロータリースイッチでタップ切り替えを行いインピーダンスを合わせます。

VN-L5プロトタイプでNYP参加局を呼びまわりましたが、10W強出力でもよくピックアップしていただきました。計算上は超短縮型のためアンテナゲインは-10dBi以上でしたが、SRAよりは確実に飛んでいます。

今後はロッドアンテナを伸ばし切った状態で1.800MHzあたりに共振するようにローディングコイルの巻き数をやや減らし目にするなどもう少し調整を重ね常設アンテナとして仕上げようと考えています。

またローディングコイルを変更して80mや40mにも使えるようにすると面白そうです。ロッドアンテナを伸び縮めるだけでバンド内をフルカバーできるので便利かもしれません。

そういうわけで新年の初工作は160m短縮アンテナでした。