2021年2月1日月曜日

電流モードD級(Current Mode Class D; CMCD)増幅回路の実装実験

 VN-xx02シリーズやVN-L5シリーズの終段増幅回路はE級増幅回路を採用し、高効率で消費電流や素子の発熱もかなり抑えていますが、E級ネットワークの性質上狭帯域で多バンド化は困難です。

そこで主に海外の事例をたどってみるとD級増幅が目にとまり、実装実験を試みました。(ここでいうところのD級はオーディオアンプのD級アンプとは異なります。追記:オーディオ用のD級もPWM変調をかけているVMCDの一種と記載されている文献がありました。

実験前にまずE級とD級の回路と動作をおさらいします。

E級は図のようにスイッチング素子の出力側にE級ネットワークという一つの共振回路を形成して素子のオンオフで各々素子にかかる電圧と電流をE級ネットワークで共振させゼロボルトスイッチング(ZVS)を実現しスイッチング損失を抑えて効率を高める方法です。


それに対してD級には2つの動作モードが存在しますがいずれもプッシュプル増幅回路に適用されます。

ひとつは電圧モードVoltage Mode Class Dで、素子がオンの時流れる電流が半正弦波状となりZVSとなった直後素子がオフとなりその間は電圧が最大になります。

もうひとつは今回実装した電流モードCurrent Mode Class Dで、素子がZVS後オフの間に電圧は半正弦波状となって再び電圧ゼロになったときに素子がオンとなり、オンの間流れる電流は最大になります。


いずれのモードもE級と同じくZVSを実現しているので高効率で、しかもE級のように電流電圧それぞれに共振させるのではなく出力回路に電流もしくは電圧にのみに対する共振回路を追加すればよいことになります。ただしE級に比べてのデメリットもあります(素子の出力容量による損失や、スイッチングのタイミングのずれによってZVSが崩れてスイッチング損失が生じる可能性がある)が、E級ネットワークを省けるため、例えば広帯域化の可能性も見えてきます。

D級増幅回路を実装している例はフィンランドのJUMA製135kHz、475kHz送信機、TX-136、TX-500の50W出力の終段回路やネットで見つけた400W級のRFパワーアンプくらいしかありません。

TX-136やTX-500を所有しているのでその高効率ぶりは体験していますが、今回E級プッシュプルを採用しているVN-L5シリーズにも適用できないかということで、CMCD化実験をしてみました。


上はVN-L5の終段E級プッシュプル増幅回路です。L1-C10、L2-C11がE級ネットワークなのでこれらを外してQ4,5のドレインをT3の3ピンと6ピンに各々直接繋げます。


実際のVN-L5オリジナルTX部の画像です。基板の右上の2つの小さなトロイダルコイルとその右側にある水色の四角いフィルムコンデンサを取り除き下の画像のように各FETのドレインを出力トランスに直接接続しました。

出力トランスに2次側の巻き数を半分に減らすことで、電源電圧13.8Vで14~15W程度の出力を得ましたが、出力トランスのコアの発熱が著しく長時間の出力にはどうやら耐えられそうにありません。そこで出力トランスをコンベンショナル型から伝送線路トランスに巻き方を変更することで出力トランスのコアの発熱は抑えられました。

またRFCも一つのコアにまとめる実験も行いましたがRFCコアの発熱が著しいため個別に用意するようにしました。

下の回路図が最終的なCMCD化終段回路です。


これは160m版も80m版も回路は同一で、LPFの定数のみバンド別となっています。

上の画像は片方のFETのドレイン電圧波形をオシロスコープで観察したキャプチャでおおよそFETオフ時の電圧は弧を描いています。

電流波形は今回観察できていませんが連続出力でもFETの発熱が緩やかなのでおそらくZVSにはなっているでしょう。

念のため160m版、80m版の出力波の高調波スプリアスを測定すると、2次3次高調波はいずれも-50dBc以下と新スプリアス基準はクリアしているようです。

80m版の高調波スプリアス

160m版の高調波スプリアス

ちなみに効率はおよそ75%前後とE級増幅回路と遜色ない程度でした。

そうゆうわけで今回のCMCD化実験ですが、いくつかのポイント(RFCと出力トランスなど)を押さえることで、LPFの切り替えによる多バンド化の可能性を少しばかり見出すことができました。

2021年1月8日金曜日

遅ればせながら本年もよろしくお願いいたします

 新年あけてはや1週間経過してしまいました。

 遅ればせながら本年もどうぞよろしくお願いいたします。


 昨年はCOVID-19蔓延の影響で無線関連のイベントはハムフェア含めほとんど中止になってしまったため主にキットの通信頒布に終始しましたが、本年もCOVID-19終息の兆しが見えない状況のためAKCでのイベント参加はやはり難しそうです。

ともあれ一人でできる範囲で活動は続けていくつもりです。

んで今回の本題ですが、年はじめ恒例のニューイヤーQSOパーティにちょっとだけ参加しました。今年は規約が変わって開催期間が長くなり参加しやすくなったので、まず160mのCWから出てみようと思いました。今までは160mのアンテナは自作SRAを上げていましたが、今回新たにアンテナを自作してみました。

アンテナはエレメントを過去に関西アマチュア無線フェスティバルで購入した3.6m長の大型ロッドアンテナを使用し、ローディングコイルを巻いてインピーダンス変換トランスで整合した短縮型1/4波長バーチカルアンテナとしました。

アンテナエレメントのロッドアンテナを同じ長さ程度の塩ビ管に入れてロッドアンテナの保護と支持を行い異径ジョイントでふた周大きい径の別の塩ビ管につなぎ、写真のように0.8mm径のUEWでローディングコイルを巻きました。

MMANAで計算したインダクタンスを目標に巻き数を決定し(今回の場合はVU40(48mm径)に0.8φUEWを100巻き、約220μHとしました)、巻いたコイルの下にマストクランプを取りつけ、ベランダの金具に設置した短いマストに取り付けました。


アンテナ本体をマストに取り付けたら、ロッドアンテナを伸ばしてアンテナアナライザで共振点を探ります。今回はnanoVNAではなくminiVNAproBTでandroidスマホにBluetooth接続して測定しました。余談ですが操作性はminiVNAproBTが良いですね。でも1台で済むnanoVNAも捨てがたいので、フィールドでどちらを使うかまだまだ悩んでいます。

ロッドアンテナを目いっぱい伸ばすと共振周波数は1.6MHzと低く出ました。周囲の影響もあると思いましたが、今回はローディングコイルは解かないで、ロッドアンテナを若干縮めるることで1.9MHzに共振するように調節を行いました。

共振周波数での純抵抗が約20ΩとMMANAの計算値より大きい(ローディングコイルのQが思ったより高くないのかもしれません)結果でしたが、トランシーバのアンテナインピーダンス50Ωに整合するため自作のインピーダンス変換トランス(マルチアンアン)を挿入し整合させた結果が下のスクリーンキャプチャです。


 VSWR1.5以内の周波数範囲は10kHz以下と狭いですが、1.9MHzバンド内に収まるためひとまずOKとしました。

ちなみにインピーダンス変換トランスの外観はこんな感じです。


 ケースの中には確かFT114-43にテフロン線を巻いて作ったマルチアンアンが入っていたと思います。ロータリースイッチでタップ切り替えを行いインピーダンスを合わせます。

VN-L5プロトタイプでNYP参加局を呼びまわりましたが、10W強出力でもよくピックアップしていただきました。計算上は超短縮型のためアンテナゲインは-10dBi以上でしたが、SRAよりは確実に飛んでいます。

今後はロッドアンテナを伸ばし切った状態で1.800MHzあたりに共振するようにローディングコイルの巻き数をやや減らし目にするなどもう少し調整を重ね常設アンテナとして仕上げようと考えています。

またローディングコイルを変更して80mや40mにも使えるようにすると面白そうです。ロッドアンテナを伸び縮めるだけでバンド内をフルカバーできるので便利かもしれません。

そういうわけで新年の初工作は160m短縮アンテナでした。