2017年5月19日金曜日

mcHF用中華ケースとの攻防

ここのところVN4002のドキュメント作成などでmcHFから離れていましたが、eBayを見てみるとmcHF用のケースがいくつか出品されていたので1セット購入してみました。

 いずれもV0.4からV0.6まで対応しているということでしたが、過度の期待はしないでおこうと思い一番安いところを選んでみました。(掲載されている写真を見る限り2種類ほどあるのかなと思えますが実体は不明です)

free shippingでしたが1週間ほどで到着しました。


四つ角が丸まっていて一抹の不安がよぎりました。

説明書なんて贅沢なものはありません
内容はこんな感じで、ケース本体と側版、中のシールド板、つまみネジ類です。ハンドルや傾斜させるスタンドもありません(一番安かったし・・・)。そのかわりメインダイヤルがアルミダイキャストっぽくて質感もなかなか良さそうです。サブダイヤルは最近多く見かけるローレット用のただ被せるだけのタイプでしたが、強めに押し込めばD軸にも入ります。(D軸用のつまみってほとんど見かけなくなりましたよね・・・)

 ケースの中に各パーツが同梱されていましたが、開封してチェックするとやはりというか内部の緩衝材がほとんどなく、そのため搬送中にお互いが当たったのだろうと思いますがシールド版の一部が曲がり側版の内側が傷ついています。ケース自体は綺麗に仕上がっているだけにこの辺残念ですね。緩衝材もう少し入れてくれればこういったことはないんですが、まぁ中華製ということで諦めて曲がったところは自分で直すことにしましょう。

この細いところがひん曲がっていました。折れてなくてよかった^^;
 でもってmcHF本体を組み込むのですが、V0.6をうたっているだけあって中シールド板は穴の位置などバッチリ合っていました。(ほかの記事ではケミコンの穴の位置が違っているとかがあるみたいです)そのままではキャリアバランス用のポテンショメータが干渉するのでオリジナルにいったん戻しました。

一連の組み込み作業の中で一番の問題は、側板の各端子の穴の位置が高すぎてタクトスイッチとLCDがもろ干渉してしまうことでした。

V0.6だけの問題なのか分かりませんが、側板の穴はどれも2ミリほど高い位置にあります。側板の穴についてはアンテナ端子が他の穴とずれており、ヤスリで位置を3ミリほど下方向にずらしましたが他の穴には手を加えませんでした(見た目がかなり悪くなります。アクリル板に起こしても良いかも知れません)。一方タクトスイッチの頭を1,2ミリほど、LCDユニットを装着するソケットも2ミリ以上鑢で削り高さをなるべく低くしました。

これで何とかケースに組み込むことが出来ましたが、後で判明しましたが削りが不十分なこともありLCDユニットがケースの枠に押されて一部表示がおかしくなってしまいました。よく見ると、表のケースパネル部分が下側に若干たわんでいてLCDをよけいに圧迫しているようでしたので、手でたわみを減らすことで影響を少なくしました。しかし時すでに遅くLCDにダメージが残ってしまいました。ちょっと悔しかったので同じLCDユニットを調達して後日換装することにしました(1ユニット12USDと比較的安価です)。

もうひとつの問題はPA部のMOSFETと電源部の2本のレギュレータICの取り付け穴も上のほうにあり、リードを残した状態ですとデバイスがケースに取り付けられないばかりか蓋も閉まりません。そのためデバイスが基板にくっつくほどにリードの余りを極力減らしようやくケースにネジ止めすることができました。

このときPAのRD16HHF1を2本とも根元からリードを折り切ってしまいました(まだ使えるのに・・・)。部品箱には同じものが見つからなかったので代わりのデバイスを探したところ同じ三菱の高周波MOSFETシリーズのRD15HVF1があったので2本装着してみました。

RD15HVF1はV/UHF帯パワーアンプ用MOSFETでRD16HHF1よりもゲインが高そうですが、パワーメータで確認すると案の定出力が上がっていました。怪我の功名ってやつでしょうか(笑)
まだ詳しくスペアナで送信波を観察していませんが、新しいLCDユニットが到着して換装してから改めて測定してみようと思います。

LCDダメージは運用上それほど支障ないレベルですが、あとで新品と交換する予定にしました
 周辺の記事を見てみるとV0.4や0.5では組み込みには問題ないようですが、新しいV0.6ではいろいろと工夫しないと収まらないことが分かりました。これらの中華なケースに収めることを前提に考える場合は、PAのMOSFETとレギュレータは極力リードを短くして本体が基板にくっつくくらいにすること、LCDユニットはソケットを使わずに直に基板に装着してなるべく高さを低くすること、タクトスイッチはより背の低い(2mm高くらい?)モノに換装することが最低限必要でしょう。

今回の作業でLCD損傷はちょっと痛かったですが、ケースに収めると受信音も良くなるしレギュレータの放熱も良くなるようで、ケーシングするメリットは十二分にありますね。

ところでYahoo group内で高調波スプリアスの実測データとLPF modificationのレポートが上がっていました。自分のものと同様に40m,20mなどいくつかのバンド以外で高調波スプリアスが高いとのことでした。やはりLPFの改造は必要です。自分なりにフィルターを再デザインして取り入れようと思いますが、近接スプリアスの対策も目処がついてきたのでそろそろ変更申請をしても良い頃合でしょう。

2017年5月10日水曜日

mcHF送信ミクサキャリアバランス調整

mcHFの近接スプリアスについて、mcHF Yahoo Groupにスペアナ画像を添えて投稿してみました。

さっそく開発者のM0NKA Chris氏とDF8OE Andreas氏から返信いただきましたが要約すると、基本波から50dBは抑制されているし、もともとmcHFは安価なQRP機で高出力のパワーアンプやV/Uのトランスバーター繋げることを想定して設計しているわけではないのでこれ以上改善させることは考えていない、そうです。

mcHFはまだまだVer.0.6ですしこれだけの規模のものを個人レベルで開発するのは大変です。ただ、これだけ注目されていて入手する人も増えてくると当然使い方も開発者が想定されていない使い方をされることも稀ではないでしょう。

ともあれすばらしいトランシーバであることには間違いないので、自分なりに何処まで出来るかやってみて、うまくいったらまたフォーラムに還元できれば良いなとは考えています。

というわけでフォーラムでのほかのメンバーとのやり取りした中で、 ドイツのフォーラムではいろいろと不要輻射について検証と改修を試しているようです。私が提示した送信ミクサーの局発漏れレベル(キャリアリーク)の抑制方法についていくつか紹介いただいたので、ひとつ実験してみました。

mcHFでは、DACから出力されたベースバンドIQ信号(低周波レベルの信号)をSi570とDフリップフロップ74AC74で発生させた局発IQ信号をSN74CBT3253Cマルチプレクサで混合合成してRF信号を得ています。

スペアナで解析するとSSB信号は12kHz、CW信号波は750Hzの搬送波を用いマイコンで生成したデジタル信号をDACでアナログ変換しているようです。局発は搬送波との差の周波数を発生させ最終的にミクサで混合合成されています。

60dBの減衰器を装着してUSBモードで送信 マイク入力はバックグラウンド音のみ
左の青い矢印で指したピークが局発信号リークで赤い矢印で示している幅の広い信号は、生成されたバックグラウンドノイズのSSB信号です。3kHz以下の幅にきっかりシャープにフィルタリングされています。

LSBモードで送信 赤矢印を中心にUSBモードの波形と鏡面像を呈しています
デジタルで計算され生成されたSSBは残キャリアレベルもまったくありません。したがってこの赤矢印から12kHz下のこのピークは送信ミクサからの局発信号漏れを示していると想像されます。

そこで、送信ミクサのキャリアバランスを調整するために、下の写真のようにQSB Bias部の分圧抵抗R69,R70をはずして5kΩのポテンショメータを装着しました。


 ほんとうは多回転をつけたかったのですが、手持ちが見当たらなかったのでドライバで微妙に回して調整を試みました。



 まずは20dBほど抑えることが出来ましたが、他のバンドではやはり微妙に最良点が違うみたいです。ここがマルチバンド対応の難しさなのかもしれません。

普通に5W程度の出力のときの近傍スキャンを見てみると・・・


 一応基本波から50dBは抑えられるようになりました。

さすがにこれ以上は難しそうなので、現状妥協するしかないかなと考えています。

中華製の金属ケースはすでにないと思っていましたが、eBayでいくつか出品されていましたので1セット注文しました。金属ケースでキチンと本体をシールドした状態で高調波スプリアスを含めて再測定したいと思います。

2017年5月2日火曜日

FUSION PCBの基板作成オーダーを(追記あり)

以前にも投稿しましたが、ここのところ幾度となく香港Seeed社のFUSION PCBで基板作成を依頼していますが、私は定番のEagleやKiCADではなく、PCBEというフリーな基板CADで作成したガーバーデータで発注しています。

ガーバーデータ作成前にデザインルールチェック(DRC)を行い(Fusion用のdrcファイルがどこかでDL出来るのですが、入手先を失念しました^^;)通ったあとに出力したガーバーデータファイルをこれまたフリーのガーバービューアgerbvで各レイヤーを目で確認して問題なければファイル群をひとつのZIPファイルに圧縮してまとめたものを、FUSION PCBページにある「ガーバーファイルを追加」ボタンを押してZIPファイルを指定してアップロードします。

私のブラウザではたまたま英語表記ですが、通常は日本語表記になります

デフォルト設定(2層基板で1.6mm厚、有鉛ハンダレベラーなど)で10センチ四方、10枚以内であれば送料別で4.9USDというかなり安い値段で作成することが出来ます(2017年5月現在)。レジスト色も6色用意されていて、デフォルトの緑以外でも追加料金はかかりませんでした。送料はDHLで30USD弱、Fedexで20USD程度ですので他の買い物とあわせれば充分リーズナブルではないでしょうか。

ただ、同じパターンの基板を10枚超えて注文すると通常料金で計算されるので注意が必要です。ですから、何種類か異なるパターンで一度に10枚ずつオーダーするのが良いかもしれません。

アップロードがが完了すると下にweb上のガーバービューアへのリンクが出てくるので、クリックするとアップロードしたファイルのデータをwebビューワで確認することが出来ます。

これが結構リアルで、実際出来上がった基板に近い感覚でプレビューすることが出来ます。



細かいところまでキチンと表現され、レジスト色やランド処理を指定することが出来るので最終確認するうえで非常に便利な機能だと思います。

オーダーに間違いなければ支払いに移ります。PayPalに対応しているので海外通販での支払いにはいつも利用しています。国内ではまだまだPayPalに対応しているところが少ないですが、PayPalアカウントをもっていればいちいちクレジットカード情報を入力せずに済むので海外通販などの利用には結構便利です。

注文はすべてオンラインで完結できるのでデータさえあればほんの数分で注文完了です。あとはデータに問題なければオーダー完了から約7日から10日で現物が手元まで到着します。

出来上がった基板の一部です。

撮影の関係で画像の色がちょっと変ですが基板のレジスト色は明るい青色です
U2(0.5mm pitch MSOP10)はランドにフラックスを塗布し追加ハンダなしで手ハンダで装着します
 無線関係の工作物を対象にしているので本来あまり細かいパターンは使わないのですが、世の中表面実装部品が主流となって、どうしても小さい表面実装パッケージでないと手に入らないものも多くなりました。2枚目の中央のU2は0.5mmピッチのMSOP10pinパッケージのパーツが装着されます。パターン切れもなく綺麗で安心して手ハンダで装着できます(笑)

というわけでこの程度のパターンの基板であれば品質的には申し分ないです。

ここのところにわかに安価で基板作成請け負う業者が増え、基板作成だけでなく実装サービスなども出てきていて(FUSIONもPCBAサービスがあります)そろそろこの界隈も過当競争の様相を呈してきている印象です。オーダー次第で安く基板を作れるので、FUSION PCBは基板作成依頼の選択肢の一つとして良いんじゃないかと思います。

PCBA(実装サービス)も試してみたいけどBOMにないパーツもあるので、自分で調達したパーツを送るタイプのサービスがあると助かるんだけれど、それはそれで海外に直接送るのはまだリスキーなので国内に送って確実に届くシステムが出来ないかなと期待しています。

追記:
先月4日に日本語のサイトが出来た模様です。ページはこちらから。
10cm四方の2層で10枚だとかなり安いので試作基板の製造依頼に重宝しそうです。

2017年5月1日月曜日

mcHFの帯域外不要輻射について その2

前回スペアナを使ってmcHFの帯域外不要輻射について検証してみましたが、mcHF yahoo groupにその結果を投稿してみました。

すぐに開発者から規制値以下なので良しとしました、と返信いただきました。

帯域外スプリアスは50dB以下と勝手に思い込んでいたのでこれは改善しなくてはと思っていましたが、改めて調べなおしたら40dBだったので、局発リークと目的信号との相互変調波を含めた帯域外不要輻射については規制値をクリアしていると見てよさそうです。

ただPAドライブを大きくしすぎるとPINダイオードのとろこで酷いスプリアスが出てしまうため、PINダイオードを除去してリレーにするか、PAドライブを下げるなどの対策はやはり必須です。また高調波をもう少し抑制したほうが良さそうなバンドもある(40m, 20m, 15m以外)ので、こちらのほうはLPFの定数を調整するようにして基準をクリアするようにしたいと思います。

とりあえず最初にスペアナで観察したときに見た一見良くわからない帯域外不要輻射の原因が自分なりにつかめたのでそれで良しとします。

同じような構成のKX3やKX2も同様な不要輻射を含んでいると思われますが、どなたか検証していただけると良いなと思います。