2020年8月5日水曜日

VN-L5シリーズ正式リリース版ほぼ完成

VN-L5シリーズ(VN-160L5, VN-80L5)は人柱版頒布から約半年かけて正式リリース版がほぼ完成しました。


サイズ的には従来のVN-xx02シリーズと比較して5mmほど厚くなる程度に抑えました。

ハードウエア的には基本構成こそVN-xx02シリーズを基にしていますが、いろいろと手を加えています。

まず送信部ですが、終段をE級プッシュプル増幅回路とし電源用の大きなMOSFETに変更するなど強化した結果、電源電圧14.5V前後で20W出力可能になりました。QRPで運用する場合は7.4V(リチウムイオン電池2セル直列)に下げるとちょうど5Wとなり余裕をもって運用できます。また高効率のおかげでヒートシンクなしでも通常CW運用に耐えられます。一方出力が20Wクラスと比較的高出力のため保安機能(フューズやSWRが著しく上昇(アンテナトラブルなど)した場合の保護機能(高SWR検出し終段への電源を遮断)を付加しました。さらにプッシュプル増幅のおかげで偶数次の高調波レベルが比較的低く、LPFは定K型2段の最低限の構成でも新スプリアス基準を十分クリアしています。

アンテナ側の送受切り替えは小型リレーを使っています
右下の端子はバッテリー電源用のT型コネクタです
Si5351Aからの送信用信号の矩形波からトランスで180°位相差信号を作り、3ステートバッファロジックICの各々3つのバッファを並列接続したものに接続して、バッファ出力から終段の各NchMOSFETのゲートを駆動
受信部はVN-xx02の構成(高1中2)を継承していますが、ミクサーにはNJM2594というバランスドモジュレータICを、検波にはショットキーダイオードを使ったオーソドックスなリング検波に変更しAFアンプとAGCアンプの定数を見直して部品点数も幾らか減らしました。

複同調回路で使用するLをトロイダルコイルからチップインダクタに変更 中間周波数への周波数変換回路にはDBMモジュールからNJM2594Vに、ショットキーダイオードなどディスクリートで構成した検波回路に変更
送信部の基板に重ねたときに送信部のパーツと干渉してしまうため、検波回路のトランスは裏に装着
AFとAGC増幅には4回路入りの単電源オペアンプICを使い、回路も少し簡略化しました
コントロール部はVN-xx02シリーズと同じPIC24FV32KA302を使っていますが(パッケージはSOICからSSOPに変更しています)、表示部を従来の8x2から16x2タイプに変更し表示を充実させています。また電源スイッチについては比較的大きな電流が流れることからVRのスイッチでは余裕がないため、TX部の基板に装着したPch-MOSFET(μPA2815T1S)をVRのスイッチで制御して電源をオンオフするというスタイルにしました。

VRのスイッチはTX基板上のPchMOSFETのゲートに接続して電源オンオフの制御をしています
PICはSSOPパッケージに変更 基板上の部品密集度はそれほど高くありません
送信時のAFミュート回路やSi5351AのVDDとVDDO間にデカップリングなど追加しました。
裏側のTコネクタは同じコネクタを持つラジコンなどでよく使われているリチウムイオンやニッケル水素2次電池が接続できるように増設しました
というわけでハード的には思い描いていた機能などはすべて実装できました。

ソフト的にもいろいろと機能追加など行いました、LCDは16x2に変更したことから表示領域が広くなったため Sメーター表示の変更、XIT機能、VFO B、電源電圧表示、送信パワー、SWR表示、高SWR(10以上の極端な高SWR)時終段への電源供給をストップしてMOSFETへの長時間のドレイン電圧上昇による焼損を回避する機能を追加しました。

SWR表示

送信パワー表示
高SWR表示(SWR>10)


3Dプリンタでサイドパネルを作成してスピーカーも内蔵できるようにしました。
また本体に装着する小型のパドルも後ほど追加できるようにしたいところです。

80m版 VN-80L5(左後ろ側)160m版 VN-160L5(右下の前)
これでほぼ正式頒布版は完成しましたが、部品調達やマニュアル作成など作業はまだ残っています。

引き続き進めていきます。