2014年2月25日火曜日

TX-136側のファームウエア改造について

2/18の投稿でTX-136のFSK改造について触れましたが、TX-136本体のファームウエア改造手順について少し詳しく。ただしソフトウエア自体は再配布できないので、要点だけですが参考の一つになればこれ幸い。


最初にまずファームウエアのソース入手します。JUMAメインページからJUMA TX136ページに入り、"Technical kit info"リンク先から"Software info for developers"より各ソースコードとMPLAB IDE用プロジェクト関連ファイルを纏めたアーカイブをDL。ファイル名がTX-500となっていますが、TX-136とTX-500、100WHFリニアアンプPA-100のコントローラは共通で、あるポートにかかる電圧によってファームウエアがそれぞれのモデルを認識して機能しているようなのでファームウエア自体はTX-136用としてそのまま使えます。

 ソースファイルの中でDDSの周波数調整に関わる関数が記述されているのがjuma-tx500.cとtimers_pwm.cファイルです。ここではDDSに送り込む周波数情報がtwordというunsigened long型のグローバル変数として定義されおりこの変数を修飾するための別のグローバル変数を定義(たとえばunsigned long mod_t;)して、DDS周波数セット関数内(tx_on(), spot_on(), set_dds()関数)のtwordに加算もしくは減算するコードを追加しておきます。

次にPCもしくはPICとのシリアル通信ですが、このプロトコールも公開されています。

TX-136側に送るコマンドは

 "=","(コマンドのアルファベット1文字)","(数字などのパラメータ)","(CR)"

です。serial_tx500.cファイルにシリアルコマンドのソースがあります。

そこで周波数シフトコマンド用のアルファベット一文字を決め(例:”D” ...すでに使われているアルファベットは避ける)パラメータに応じてtword修飾変数(例:mod_t)にシフト量に相当する値を代入する周波数シフト用関数を新たに追加、serial_tx500.cファイルのシリアルコマンド処理関数から呼び出すようにします。MPLAB IDEのC30コンパイラでコンパイル(最新のMPLAB X IDEのXC16コンパイラでもコンパイルできました)した後、出来上がったhexファイルをPCからRS232シリアル経由でTX-136に流し込む、というのが流れです。ファームウエア更新の手順はJUMAサイトで書かれている通りですが、ingenia dsPIC bootloader GUI V1.1という更新ツールがWin7用に上手く対応されていないようなので、Win7ならばソフトのプロパティ内にある互換性タブの互換モードをWinXPSP3に設定する必要があります。

ファームウエア更新が無事終了したら、確認のためTX-136にダミーロードを接続して連続キャリア送信しながら適当なターミナル通信ソフトで追加した周波数シフトコマンドを送りArgoなどでチェック。上手く周波数シフトが確認できたら成功です。あとはコントロールする側の製作になります。

本当はTX-136単体でFSKモードのビーコンが出せるようになるとなお良さそうですが、プログラム改造が大掛かりになるので今後の課題にしたいと思います。 

※なお改造にあたっては、実施する各個人の責任でお願いします。

2014年2月23日日曜日

APB-3ぽちった!

いまDDSを使った小型のCWトランシーバーを製作する個人プロジェクトをちまちまと進めていますが、 新スプリアス規定を逸脱しないようにするためにはやはりそれなりの測定機が必要だと前々からいろいろと検討していました。スペアナのような強力なツールがあればなぁと。

ジャン測といわれる中古スペアナもオークションやらジャンク即売会でよく見かけますが、とにかくデカイ重いで自宅にはとても置けず、中古ゆえの故障リスク上昇もそれなりに覚悟しないと無理かなと。

昨今はディジタル処理がものすごく進歩して、サイトを巡回しているとPCに接続して測定できる小型のスペアナを発見。SoundHound社のUSB接続の小型スペアナで、スペックも申し分ないとみて早速購入を~...と手続きを進めようとしたら発送先に"JAPAN"の文字がなぜか無い^^;よくよく調べていると、すでに日本での販売者がいて直接オーダーが出来ないようでした。日本での購入も考えましたが、サポートポリシーなど見るとメリットも無いので輸入代行にしようかなとあれこれ考えている間に円安になってしまって、購入資金が足りなくなり一時諦めていました。

そんな中おじさん工房というサイトにたどり着き、FPGAを使ったAPB-3に目がとまりました。上限こそ40MHzあたりと低いですが扱いやすさとネットワークアナライザ他機能も多く、何より手のひらサイズと小型、価格もジャン測買うよりも安いので販売元のCQ出版サイトで購入に踏み切りました。販売当初は品薄だったようですが、欲しい方々にあらかた行き渡ったのでしょうか注文したら2日後に配送されました。


表面実装基板はすでに取り付け済みです。ケースはTAKACHIのアルミケースで前後のパネルは穴あけラベル済みヘアライン加工でVYFBです。おじさん工房の最新マニュアルをダウンロードしてコネクターやスイッチ類などを取り付けソフトウエアのインストールを含めるとゆっくり進めて2時間くらいで完成しました。


仕上がりはオーディオ機器のような雰囲気でFBですが、底面にネジ頭が出ています。ゴム足の取り付けが必要ですがキットには含まれていないので別途ホームセンターで購入しなくてはいけません。そのほかFPGAとADコンバーターのチップが発熱するので秋月で販売しているクールスタッフという放熱シートの装着が推奨されています(上真ん中はクールスタッフを貼り付けたところ)。

ドライバソフトや測定アプリケーションはおじさん工房サイトの最新版(20140219版)を使用しました。(最初CD-ROM内のコンフィグファイル、アプリケーションでは認識されませんでした。サイトによるとFTDIの最新ドライバの対応で問題回避されたようです)



でもって、今プログラミング中のDDS-VFOの出力(7.000MHz, 約-14dBm)を表示させてみました。なかなか綺麗に表示されています。あとは、ステップアッテネータなど少しずつ揃えていこうと思います。

2014年2月19日水曜日

136kHz帯での JD1との初2way CW交信

タイトルは当局のことではありません(汗)

136kHz掲示板によると、2月11日0003UCT 136.6kHzにて、小笠原父島のJD1AHC齊藤OMと、千葉県四街道市のJA1CNM金子OMの間で初2way CW QSOを達成されたようです。直線距離は約970kmとのこと。

すごいですねぇ。JSTで朝の9時過ぎのことですが、それ以降は信号を受信できなかったようです。朝しか信号が聞こえなかったということは、地表波というよりも電離層反射による伝播だったのかな?いずれにせよ、相互にEIRP1W弱で1000kmに手が届く距離で交信できたというのはすばらしいことです。

考えてみると、長波における通信はQRP同士の通信に似ている印象です。如何にしてアンテナの効率を上げたり、耳を良くするか。またこのバンドで特に障害になるのはアンテナ設備と受信時のノイズだなーとまだまだ駆け出しの新参者が思うわけです。

えーと実は自分も11日の早朝、JD1からの信号を受信するべく雪が残る千葉の南房総市に出かけてました。

出発時は雪は降っていませんでしたが、アクアラインを過ぎた辺りからなんだか雪が強くなっていく...



現着後もまだ雪が降る上に、漸く止んでからは強風が吹き始めまともにアンテナを保つことが困難になってしまって、残念ながら小笠原からの信号は受信できず。辛うじて1局交信して退散となりました。いずれアンテナシステムを改良して再チャレンジしようと思います!

2014年2月18日火曜日

TX-136のFSKモード改造

いまのところ来訪者もほとんどいないようなので、好き勝手に書き綴ろう。

TX-136を国内で使用している局はどのくらいいるのだろうか。
136kHzではサムウエイのTX-2200Aを送信機に使用している局が大多数なのではないか?そのほかは自作送信機、とTX-136のようなキットくらいだが、ネットを見る限りではTX-136で運用している局は10局もいないような気がするが実際はどんなものでしょう。

TX-136はコンパクトながら高い効率で50Wの出力を得られる送信機で、ビーコン機能や受信コンバータ、プリアンプ内蔵等など機能も充実しており完成度が非常に高いキットであるが、惜しむらくはCW専用の設計という。 現在長波帯のアマチュア界隈はCWよりもQRSSやOPERAなどのほかDFCWやWSPRなどのFSKモードがよく運用されている中、デフォルトのTX-136ではQRSS12が精一杯で何かしら工夫をしないとこれらの極狭帯域通信ができないのです。これはひじょ~~にもったいない。

JH1GVY局は精力的にTX-136のFSK対応改造をなさっています。基準発振器の部分にFSK変調をかけるコンパクトなハードウエアを付加し、PCソフトから変調がかけられるものですが、TX-136がマルチモード送信ができるという記事に非常に刺激を受け、参考にしつつも自分なりに何かできないかと考えていました。とりあえず、周波数安定は必須なのでJH1GVY局に倣って三田電波にTCXOを特注しました。詳しくはJH1GVY局のサイトをごらんいただきたいのですが、基準発振20MHzで温度特性±1ppmの4pin缶タイプMTH50-0510というモデルにしました。あらかじめオリジナルの発振器の部分は直接基板にハンダ付けせずICソケットを介して取り外しが容易にできるようにしました。


 左中央にあるオリジナルの20MHzクリスタルオシ
レータ










TCXO換装後。 単にソケットからはずして付け替えただけ。基板に密着しない分温度特性に良い影響を与えるのかそうでないのか分かりませんが。









ハード的には連続送信に耐えられるようにファイナルのヒートシンクを大型化するなどの対策も必要そうですが、30W程度(HIポジション:MIN(3W), LOW(15W), HI(33W), MAX(54W)と4段階の出力切替ができる)ならば、QRSS30でも問題なさそうです(西宮市移動で実証済み)。

その次は、どうやって1Hz以下の周波数シフトをさせるかということ。TX-136にはRS232CでPCとの連携が可能で、本体では10Hzステップ可変しかできないところを(CW専用機なだけに)PCソフトで1Hzステップまで可変できるようになるのですが、それ以下にはどうしてもできない。DFCWも30以上になるとシフト量が0.5Hz以下、WSPR15モードでも0.1Hzオーダーの小シフトが要求されるのでそのままでは無理なのです。

幸いJUMAのサイトには開発者向けと称しファームウエアのソースコードが公開されています。このソースを改造して対応させようというのがポイントです。

方法としてはファームウエアにDDS(AD9833)への周波数レジスタに目的シフト量に応じた値を加算もしくは減算させる周波数シフト命令を加えて、RS232C経由でその周波数シフト命令を出す外部コマンドを新たに加えるというものです。TX-136の場合、周波数レジスタ1ビットは周波数にすると約0.03725290Hzに相当します(20,000,000 / 2 * 2^28) これで目的シフト周波数を割ったものを加減算すればよいわけです。

外部コントロールはPCからソフトで行えますが、今回はPICで外部コントローラを製作してみました。


パネル右下のキャラは艦これの蒼龍さんなんだけど、だれも気づいてくれなかった(泣)

PICは16F648Aを使用しソフトはアセンブリ言語で記述しました。このコントローラーを使うことによって、ロータリーエンコーダで1Hzステップでの送信周波数の調整、QRSS(3~60), DFCW(3~60), OPERA(8,32), WSPR(2,15)モードでの送信がTX-136で可能となります。

TX-136とつなげてQRSS30ビーコン送信中。


送信機をダミーロードにつなぎDFCW送信中。


同じくダミーロードをつなぎWSPR送信中。


追記(2/25):TX-136のファームウエア改造について別途少し詳しく書いてみました。ご参考まで。

2014年2月17日月曜日

現行136kHz帯の設備について

まず、送受信機。
これは初交信時(佐倉市移動 オール千葉コンテストにて)と南房総市移動時の様子。
送信機はフィンランドのJUMA製TX-136で、DDSの基準発振器を1ppmの三田電波製TCXOに差し替え済み。TX-136はもともとCW専用機ですが、FSKモード(DFCW, WSPR)も送信できるように、サイトで公開されているファームウエアを少々いじって入れ替えています。秋月で購入した12Vシールドバッテリーで最大45Wくらいまで出ているようです。
受信機はYAESUのFT-857DMで、直接135kHz帯を受信しています。TX-136内蔵のコンバーターでも受信可能ですが、FT-857では135kHz周辺の感度が保たれているようなのでコンバーターは最近OFFにしています。TX-136には受信プリアンプも内蔵されているので至極便利(現在out of stockなのが惜しいところ)

つぎはアンテナシステムの要のひとつ、ローディングコイル。
MMANAのシミュレーションでの必要インダクタンスが6~8mHと計算され、そこからコイルの大まかな設計を行いました。で、実際作ったのがこれ。Variometer1号くん(笑)
ホームセンターで径約23cmほどの円筒形のプラスチック製ゴミ箱を見つけ、そこに径1mmのエナメル線(UEW)の1kg巻きを巻ききり約6mHのインダクタンスが得られました。別途塩ビパイプの接続パーツ(径約9cm) に径0.8mmのUEWを巻いて約0.5mHの可変インダクタンス用のコイルをメインコイルの中央に内蔵させ、最大7.8mH、最小5.8mHの可変ローディングコイルとしました。秋月LCRメーターで測定した無負荷Q(@100kHz)は約200~250程度でした。

設置状況によってアンテナ入力抵抗が変化するのと絶縁目的でフェライトトロイダルコアFT-240-43にUEWを巻いた絶縁インピーダンス変換トランスを作成しました。
大まか12.5~125Ωに対応するようにしましたがVNAで特性を取るとリアクタンス分がどうしても乗っかってしまいロスになっているよう(アンテナ入力が低めの場合電流が増えるため発熱する)なので改良を加える必要があります。

最後にアンテナを展開した様子を。(西宮市移動時)
 車のタイヤで押さえるアンテナベース(まっつぐ大将)に12m長のグラスファイバーポール(Spiderbeam製)を取り付け、先端に2mm径の園芸用アルミ線を垂直エレメント用、傘2ないし3条張ってローディングコイルと接続、写真では分かりづらいですが、車の下に90x60cmの0.3tガルバリウム鋼板(ネットで切り売りしていたのを見つけて購入)を10枚アスファルト面に直に敷き詰めてワニ口クリップで鋼板同士をつなげアースとしています。アースとローディングコイルのコールド端間をアンテナアナライザで測定しアンテナ入力抵抗を測定、ローディングコイル内臓のバリオメーターを調節して目的周波数に共振させ、そのときの純抵抗に応じて絶縁インピーダンス変換トランスで50Ωに変換させ調整終了です。
トランスボックスに高周波電流計を内蔵させているので、アンテナアナライザなしでも調整は可能です。

こんな設備でも100km超えのCW交信は可能で、QRSSやDFCWなどの狭帯域通信法ではそれ以上の信号到達が望めます。

今後はローディングコイルの改良(Hi-Q化、小型化など)、アース改良、車なしでの移動運用を可能にするなど手を加えたいと思います。

2014年2月3日月曜日

136kHz事始め

136kHzはじめたい!とは思っても、何をどうすれば良いんだか...

CQ誌は136kHz帯開放初期には特集も多かったけれどここのところあまり関心ないみたいだし。となるとまずネットで探すしかなさそうです。

このバンドを始めるにあたって参考になるサイトは(海外のサイトは除く)、136kHz掲示板とJH1GVY局のまとめサイトの二つでしょう。

もちろん、海外のサイトは情報としてより充実しているし文献もRSGB発行のLF Todayもあるのでそちらもあわせて読むのがいいかもしれないけれども、国内事情など相違点もあるので上記のサイトをブックマークして眺めておくのが良いです。

そうしていくうちにこのバンドをどのように運用するかがおぼろげながら見えてくるのでどんなスタイルで出るかあらかじめ具体的に決めておきましょう。なぜかというと、実際QSOできる体勢になるまでの準備がちょっと大変だからです。何が大変かというと...

1.市販のリグのなかで136kHz帯がまともに運用できるものがない。
2.市販のアンテナというものがまったくない。
3.1エリアの除いて交信相手がほとんどいない。
4.CW以外の通信モード(QRSS,DFCW,OPERA,WSPRなどの狭帯域デジタル通信モード)に馴染みがない。
5.市街地はとくにノイズが酷い

開放5年目にしてもこの現状のように思われます。1に関しては受信機をゼネカバ受信可能なHF帯トランシーバを受信機にして、送信機をサムウェイ社のTX-2200Aでまかなうのが手っ取り早いでしょう。当局はオーストラリアのGenesisRadio G11というSDRトランシーバかフィンランドのJUMA社製のTX-136という送信機キット(現在out of stock...)にFT-857DMを受信機にして運用しています。
2についてはどうしても自分で作らなくてはいけません。受信だけならばアクティブホイップでも良いですが、QSOが目標ならば送信にも使えるアンテナを作りましょう。当局はいろいろと考えた末に傘型の短縮バーチカルが一番現実的と考え、それに向けて準備するようにしました。具体的な製作過程は後々ここで披露します。
3は幸い1エリアに住んでいるので、相手はすぐに見つかりました。数局すばらしいアンテナ設備をお持ちの局がいて、1エリア内だったらどこでも繋がるくらい信号が強いのでちゃんとしたアンテナが設置できれば交信は問題なさそうです。
4について、最初はCWでも100km程度の交信は難しくないですが狭帯域通信はCW可聴レベルを20dB以上も大きく下回る信号でも判別可能で、その結果到達距離も大幅に伸びます。(実際先月3エリアに移動したときにQRSS30(短点30秒のCW信号)モードで400km以上離れたところで受信されていました)なので好んで使われているようです。
 5はHFローバンドもそうですが非常にノイズが強く弱い信号は埋もれてしまって受信できないことがしばしば。ノイズ対策もなかなか難しいのでQSOどころではなくなってしまいそう。

こんな現状を考えるとノイズが少なくてかつ大きなアンテナを展開することが可能な場所に移動して運用する、というスタイルが浮かんできます。JH1GVY局も仰っていましたが、まず移動してQSOするということが一番大事ではないでしょうか。実際そのようにしてQSOが出来ると次のステップに進むことが出来てこのバンドも面白くなってくると思うんです。

自分もまだ駆け出しですが、いろいろ工夫してこのバンド楽しみたいと考えています。

次は、設備(送受信機、アンテナ)に関してちょっと具体的に。