20日の日曜日に都内葛飾区(JCC100122)の水元公園という江戸川、中川、大場川に囲まれた小合溜(こあいだめ)に沿って造られた公園内の集会場で、
全日本長中波倶楽部主催のアクティブ・アンテナコンテストというイベントが行われ、先日急造したPA0RDT Mini-Whipもどきを持参して参加してみました。
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常磐線金町駅 |
朝9時前に金町駅に着きましたが、朝食を摂らずに出てきたので駅前の立ち食い蕎麦屋さんで蕎麦をかき込んでから徒歩で水元公園に向かいました。約20分ほどで公園に到着。雨は降っていませんでしたが、この時期なのになぜか寒くて薄手の上着では体が動いていないと震えてしまうほどでした。
水元公園
水元公園は初めて訪れましたが、小合溜は川のような流れもほとんどなく穏やかで高い木もなく気持ちのよいところです。家族連れなど寒い中結構にぎわっておりました。
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甘酒が沁みる(笑) |
それにしても寒すぎるので、集会場近くの売店で暖かい手作りの甘酒を一杯いただきました♪こんな時期に甘酒飲むとは思いませんでしたが温かくて美味しかったですよ。
集会場に入り10時定刻イベント開始。総勢20名ほどでしょうか会場内ほぼいっぱいの状態で各参加者の自己紹介から集合写真撮影を経て、次は各アクティブアンテナのプレゼンテーションという流れに。自分のはPA0RDTほぼそのまんまで素子を2SK125と2SC1815GRに換えただけのものなので詳細は置いといて(汗)、ほかの皆さんは大変工夫を凝らしておりました。同調型はプローブ直下にインダクタもしくは455kHz IFTにキャパシタを抱かせたものを付加させたり、フェライトバーコイルを使用したもの、また大きなハニカム巻き空芯コイルにパディングコンデンサをつなげMini-Whipの外側を覆うように被せたものなどなど。同調型ではなくLPFを各段に設けたもの(プローブ直下もきちんとインピーダンスを合わせて設計されたようです)、面白いのはプローブと初段のFET回路部分をツインにしてソースフォロワからフェライトコアトランスで信号合成して2段目のバッファアンプに流すもの、あるいはインピーダンス変換としてオペアンプを使ったもの、また小型多巻きループをトランスでインピーダンス変換するものなどで、非常にユニークなものばかりでした。
どこかで見たことがあるような人がちらほら…
ひととおりプレゼンテーションが終わり、集会場外の水辺の低い柵に2mほどのポールをくくりつけて各アンテナを設置して測定に入りました。
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測定風景 | | | | |
PFU(電源供給ユニット)のあとに分配器を介してスペアナ
(アンリツ製MS8911B)とWSPR受信システムへ
そそりたつアクティブアンテナ群(すべてではありません)
測定はスペアナを使用。1MHzセンターの2MHzスパンで長波帯から中波放送帯を観察しました。各アンテナのスペアナ波形を出し、アクティブアンテナオフ状態のノイズレベルを基準に非同調型は500kHz前後のノイズレベルと放送波(今回は1422kHzラジオ日本)信号レベル値を、同調型は136kHz台のノイズレベルを測定。他にアース有無の比較やWSPRビーコン波(JG1JZL局)受信トライを行いました。
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自分のMini-Whipの測定結果(MS8911B, RBW=3kHz) |
いただいた自分のMini-Whipの測定結果のハードコピーを出してみましたが、非同調なので放送波の柱が非常に高いです。1134kHz文化放送にいたっては-10dBmすら超えてきています。一方ノイズレベルは約-80dBm程度で、アンテナオフ時の-93dBmとの差13dBが利得になっているのでしょう。まだ自宅のAPB-3では測定していませんが、アッテネータを作って自分でも後日測定しようと思います。
測定結果を基に自分なりにまとめてみました。
1.非同調型と同調型とでは、同調回路の構成如何に関わらず同調型で受けた
中波放送信号レベルは30dB程度抑制されていた。
2.一方136kHz付近では不変もしくは数dBほど上昇を示した。
3.LPF型(プローブ直後、段間、出力側すべてに挿入)は500kHzあたり以
降でほとんど放送波の柱が見えなくなるほど高い減衰レベルだった。
4.ツインプローブ型(非同調)はノイズレベルが数dB下がり、シングルと
比較し放送波信号レベルが3dBほど上昇した。
5.ハニカム巻きの大型同調コイルを付加したアンテナは、出力にプリセレ
クタ(回路詳細不明)をはさむ構成で136kHz以外はほぼ素のノイズレベ
ル(-90dB近く)まできれいに抑制されていた。
6.アースのあるなしでは、アース接続でノイズ、信号レベルともに上昇。
7.GPのようなラジアル(傘の骨状)付きは信号レベルが弱くなる。
8.小型多巻アクティブループは、他の同調型と同じようなスペアナでの測
定結果であったが一点異なるのは136kHzでのノイズレベルが低く、また
唯一最初の環境においてWSPR波のデコードができた(-25dB)
ループアンテナ以外ではWSPR波を受信できなかったので、場所を数十メートルほど移動し再測定しました。
アースは設けず、非同調型(自分のMini-Whip)、LPF型、同調型、ループ型で各々受信トライしました。いずれもデコードは成功しましたが、各々のレベルは非同調型でおよそ-13~-17dB、LPF型で-12dB、同調型-10dB、小型多巻ループ型は信号源へ向けて-4dB、サイドでは-10dBという結果でした。
測定終了し集会場に戻って結果発表と討議が行われ16時前に無事閉会となりました。
まとめから今後の方向性が少し見えてきました。136kHzグラバー用のアンテナとしてはまず同調型にして、中波放送帯のレベルをある程度下げて能動素子の飽和をなるべく抑えておこうということです。というのは自宅で使用していてもTBSの放送波が周波数954kHzの2倍1.908kHzで聞こえてしまうことより、放送波が強力すぎて信号がMini-Whip内で歪んでいると考えられたからです。さらにフロントの同調回路を複同調回路にすると実用帯域も広げることが出来そうです。あとは出力側もしくは受信機の直前にLPFを置くことです。以前製作したGenesisRadio G11のLF用LPFをとりあえず製作し使ってみようかなと考えています。
(LPFの仕様と特性表)
結果についての感想ですが、まずツインプローブ型がちょっと地味ながらおもしろいと思いました。利得が3dB上がるのはなんとなく想像つきますが、ノイズレベルは逆に若干下がっているというところが不思議でした。プローブ同士の間隔等いろいろなパラメータを変化させるとまた違った結果になるのでしょうか。それから、ハニカム空芯コイル同調器を装着したMini-Whipは受信機手前のプリセレクタの効果も手伝ってか、136kHz帯以外はスッパリ信号がカットされていました。外に受信機(FT-817)とプリセレクタ、鉛シールドバッテリ、PFUが一体になったセットとともに持ち出したところ、桶川市のCWビーコン波を耳RST539と明瞭に受信されました。他のアンテナでは受信できず、このアンテナの優秀さを物語っておりました。もうひとつは、小型の多巻ループアンテナでした。スペアナ測定では他の同調型アンテナに比べて136kHzでのノイズレベルが低く、唯一最初の環境でWSPR信号がデコードできており、その後移動した場所でも-4dBと高く指向性も認められました。やはり、アース不要で周りの環境からの影響が少なくS/Nが良いというループアンテナの特徴が良く分かる結果だなと思いました。
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CWビーコン(135.8kHz)波を受信 |
アースの有無については、無しで信号とノイズレベルが両方上がったという結果でしたが、テスト環境では簡単な土中への打ち込みアースから数メートルの細い電線で引き込んであり、ちゃんとしたアースとして動作していたかどうかがちょっとアヤシイと思われました。もしかすると、エレメントと同様な動作になっていたのでは?という疑問も残っています。実際アース側を手で触れたりするとS/Nが上がったりする報告もあり 、この辺は改めて検討が必要に思いました。しかし、アクティブアンテナ本体と受信機を光ケーブルで接続して電気的に遮断してもちゃんとアンテナとして動作するという文献も紹介されており、本当のところMini-Whipをはじめとしたアクティブアンテナの動作ってどうなの?っていうことでまた謎が深まった印象となりました。
今回のイベントは自分にとってとても有意義な時間でした。また機会があったら参加してみたいです。主催である全日本長中波倶楽部の 幹事の皆様ならびに参加各局の皆様有り難うございました。
イベントが終わったその足で秋葉原に向かい夕食をとりました(左)。右の写真は参加賞(?)として参加各局に配られたシールド可変コイルです。LCメーターで測定すると1次側が220μH程度で2次側がなんと5.7mHという高インダクタンス。240pFを抱かせるとちょうど136kHz近辺に共振します。2個使って複同調回路にしようかな。しかし、このコイルって一体何につかわれたのでしょうか。