2016年11月29日火曜日

中波放送帯帯域阻止フィルタの試作

KiwiSDRはdirect sampling SDRという性格上、ADCが飽和しないように気をつけないといけません。いきなりPA0RDT mini-whipアンテナを接続すると、中波放送帯の強力な放送波で簡単に飽和してバンド中相互変調の嵐になり、必要とする肝心な信号が埋もれてしまいます。

手っ取り早く20dB程度のアッテネータをmini-whipとSDRの間に挿入することで回避することは出来ますが、すべての信号を減衰してしまうので弱い信号などはノイズレベル以下になってしまいます。

アッテネータなしで0-30MHzスキャン もう何がなんだか(汗
そこで、中波放送帯だけを減衰するための帯域阻止フィルタ(BEF;Band Elimination Filter)を設計・試作してみました。

設計と言っても、フィルタ設計用のソフトFilter Designをつかって必要な条件を入力して各パラメータを計算しました。中波放送帯の下限は531kHzであり475kHz帯に非常に近いことから急峻な特性が必要なため、7次チェビシェフタイプの帯域阻止フィルタとしました。


実に7個のコイルが必要で、T50-2コア7つコイル巻きしました。FCZ基板を小さく切り出して実装しました。コンデンサは何も考えずにマイラコンデンサにしましたが、フィルムコンデンサなどが良いかもしれません。

まずはおじさん工房APB-3ネットワークアナライザで特性をチェックします。


475kHz付近で約3dB弱のロスになっていますが、阻止領域は設計条件に近い結果となりました。(NHKラジオ第1(594kHz)は30dB程度ですがまぁ十分でしょう)

でもって、今度はKiwiSDRとmini-whipの間にいれて同じWFゲインでスキャンしてみました。

中波放送帯だけすっぽり抜けた感じになりました
 594kHzのNHK第1がやや強いですが、測定どおりに30dB以上、またあれだけ強かった810kHzのAFNもやっとS8,9程度に減衰しています。

 ただし、どうもフィルタ前で相互変調波が通過しているようでLF帯では中波放送局同士の差の周波数にならって変調波が聞こえてきます。mini-whipの内部の問題、もしくはフィルタの入り口付近で相互変調波が生成されているのか、原因はまだ今のところはっきりしませんが、ためしにフィルタの前に3dBパッドを挿入すると相互変調波はかなり抑えられた(極わずかに聞こえるか聞こえないかという程度)ので当座はこれで良しということにしました。

LF,VLF帯では20dBアッテネータ装着時よりも体感的にS/Nが上がり、信号強度自体も上がっています。

あとはシールドケースにいれて仕上げて行こうと思います。

2 件のコメント:

  1. すばらしいです.また実に面白い結果ですね.
    受動素子でも非線形があれば相互変調しますが,そういうことなのでしょうか.
    また,そうだとして,3dBパッドで押さえられる微妙なレベルなんですね.

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    1. JE1SGHさんこんにちは。お返事遅くなりました、すみません^^;

      ご推察通りと思います。 >受動素子でも非線形部分で相互変調

      パッド挿入するとほんのわずか相互変調波は残りますが、3dB以上減衰しているのでフィルタ自体で相互変調波を作り出している可能性があると考えました。ということはフィルタの前半部分で相互変調波が生成されるとそのまま通過してしまうので、パッドはフィルタ前に挿入が妥当なのかなと。

      フィルタのみでは長波帯で中波放送波同士の差の周波数にあわせると、きっちり相互変調波が聞こえてくる(たとえば810kHz(AFN) - 594kHz(NHK-1) = 216kHz)ので、とくにゲインのあるアクティブアンテナに接続するときにはフィルタ前にアッテネーターを挿入するなどが必要になりますね。

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