ところで、ぼちぼちVNシリーズキットの頒布ご希望をいただいており大変ありがたく思うとともに、表面実装部品を扱うのが初めてという方も多くなかなか苦戦されておられる方も多いと聞きます。
組み立てる自信がない場合のために製作代行も合わせて行うようにはしましたが、本来はやはりご自身の手で組み上げ、完成のよろこびと実際に運用して楽しんでいただきたいと思っています。
そんなわけで、最難関の一つ表面実装部品の装着方法(ハンダごてを使う方法でリフローではありません)について、VNシリーズのマニュアルにも簡単に書いてありますが、自分の経験とほかの資料を合わせ備忘録として少しばかり具体的にまとめてみます。
1.まずは道具
何はなくともハンダごて・・・
とはいえハンダごてなら何でもいいというわけではないです。よく表面実装用のハンダごてと称したものもよく見かけますが、30W以下の低W数のハンダごてではたいていうまくいきません。
もし部品のランドにつながるパターンがいずれも細ければ低Wのハンダごてでも装着はできますが、やや大きな部品や高周波回路を扱うような広いグラウンドパターンにつながる場合はハンダごての熱が拡散し温度が下がってしまってうまくハンダ付けする事が出来ません 。
ですので大は小を兼ねるといった感じで最初からW数の大きなハンダごてを用意するべきだと考えています。そのほうが作業がスムーズになりより楽になります。
例として私のハンダごてはgoot製のPX-201という70Wの温度調整付きのものです。
http://www.goot.jp/handakote/px-201/
このモデルは比較的安価で(4,5千円くらい)こて先のバリエーションも豊富です。私の場合は標準のものよりやや細めので先端が斜めにカットされたPX-2RT-2BCというこて先に替えて使用しています。この先端斜めカットが自分にとってはやりやすくほかのこて先も試しましたがこれが一番使いやすかったです。
あとは、拭き取り用のスポンジ付きのこて台はあると良いですね。水を含ませたスポンジでこて先に付着した余計なハンダや酸化膜を拭きとってくれます。
ハンダ
最初から扱いの難しい鉛フリーハンダを無理して使わなくても、従来の共晶ハンダで問題ありません。0.5mm径以下の極細のフラックス入り糸ハンダがベストです。小さい範囲のハンダ付けですから使用するハンダの量も少ないので、ハンダの送り速度が大きくても、細ければハンダの送り量は少なくなるので調整もしやすくなります。
しっかりしたピンセット
前の2つと同じくらい表面実装で使う道具として重要なのがピンセットです。ピンセットはいろいろな種類がありどれを選んでよいものか迷ってしまいますが、正確に確実にチップ部品をつまめてなおかつしならないものが理想です。ただつまめても保持が不安定でまたしなってしまうと容易にチップ部品を飛ばしてしまいます。
現在私が好んで使っているピンセットは、HOZANのP-894という肉厚で先端が極細のものです。投げたら当たったものに容易に刺さります。手裏剣としても使えそうです(笑)
https://www.hozan.co.jp/catalog/Tweezers/P-894.html
なぜ細いのが良いかというと、チップ部品の包装フィルムをはがすのにちょうどよいからです。ピンセットは先端がチップの形状に合わせて角ばったものなども使っていますが、このP-894は応用範囲が広いので便利です。肉厚でしっかりしているのでピンセットの先端の感覚が指に伝わりやすくそれだけでも使い心地は全然違います。
拡大鏡
普通の手持ちルーペや電子拡大スコープなどは手軽な反面作業にはあまり向かずどちらかというと装着後のチェックとして使うのに向いています。
というわけで装着作業には頭部に装着するタイプのヘッドルーペが最適でしょう(ハ○キルーペっていうのもありますが)。拡大率は2倍前後で十分です。作業エリアはできるだけ明るくすると見やすくなるのでLEDライト付きのでもデスクライトを近くに持ってくるなどでも良いでしょう。
ハンダ吸い取り線(ハンダ吸い取り器)
狭ピッチのICピン同士のハンダショートをリカバーするために必要です。幅の種類がいくつかありますが、比較的太めのもの1種類あればよいです。先端を斜めにカットすれば狭い部分にも対応できるので何種類も用意する必要はありません。
フラックス・フラックス除去剤
ICのピンや表面実装の薄く平べったい水晶発振子のハンダ付けにはあらかじめ基板のランドとパーツの足にフラックスを塗っておくとすっときれいにハンダがのってくれます。慣れてくると糸ハンダに含まれているフラックスだけで十分ハンダがのりますが、部品の裏に端子が出ているものはフラックスがないと裏の端子までハンダが行きわたらないので、そういう場合にはフラックスを使います。
装着後はハンダ付けによって周りに焦げたフラックスなどが残ってしまうため、フラックス除去剤で余分なフラックスを装着後に塗って拭き取ってしまいます。
そのほか
カッティングマットや滑り止めシートなど。基板がずれないように固定するには100均ショップで売っている滑り止めシートが便利です。あとは小さなチップ部品をなくさないように一時的にためておくバットなどもあると便利です。
2.表面実装部品の装着方法について
でもっていよいよ実際のハンダ付けの方法ですが・・・
私の場合こちらのサイトの手順に近いです。
https://noseseiki.com/kisokouza/15.html
(右利きの場合ですが)コンデンサや抵抗のような2つの端子の場合、まず向かって右側のランドに薄く予備ハンダを盛ります。次に左手にピンセットを持ち装着したいパーツの長辺をピンセットの先でつまみます。このときパーツが浮かないように底面を基板に接しながらスライドして予備ハンダしたランドに近づけます。そして右手にハンダゴテを持ち予備半だのランドにこて先を当てて予備ハンダを溶かしながらピンセットでつまんだパーツの右端子を溶けている予備ハンダのランドまでスライドさせ装着位置にセットしコテ先をランドから離して右側を仮装着します。それから反対側のランドにコテ先を当てハンダを少量送り反対側をハンダ付けしたら仮装着した右側のランドに再度こて先をあてて本装着します。
上のサイトのページでは微量フラックスを塗布するように書かれていますが、糸ハンダ内のフラックスで十分きれいに装着することが出来ます。
同じような要領でトランジスタやICのピンを装着していきます。要はどこかのピンを先に仮装着して位置決めをしてから他の端子からじっくりハンダ付けすればOKです。
言ってしまえばそれほど難しいものではありません。実際に手を動かして数をこなせば失敗は少なくなります。
あと、ランドにつながっているパターンの大きさを見てこてを当てる時間やランドに当てるこて先の面積などを自分なりに調整できるようになれればより確実に装着できるようになるでしょう。
また実際に組む前に練習したいならば、amazonあたりで検索すると練習キットなども購入できるようなので、取り寄せて練習するのも良いでしょう。
装着例(VN-4002 RF部) |