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2020年12月18日金曜日

簡易SG購入してみた

 ひさびさのブログ更新です.

 QPM-01と新VNシリーズのVN-L5キットの頒布を開始,現在QPM-01は完売しVN-L5も30セット用意して残り13セット(12/18現在)になりました.ご購入いただきました皆様ありがとうございます.

年明けにはもう少しQPM-01キットを用意しようと思っています.

ところでnanoVNAに始まる小型で安価な測定器がブームになっているようで,最近ではtinySAというハンドヘルドなスペクトラムアナライザまで登場し,SNS上で話題になっています.

私も先日遅まきながらtinySAとアナログ帯域120MHzをうたっている小型携帯オシロスコープをAliexpressで購入して到着を待つばかりです.

それらとは別に今回紹介するのは,V/Uハンディ機の受信調整用という名目でAliexpressやeBayで出品されている小型のSG(信号発生器)です.

大きさはFT817の奥行きを3分の2くらいにした小さなもので異様に軽いです(100gくらい?).電源ケーブルはもちろん説明書すら入っていません.モデル名もなくて一見自作物のようです.

商品説明に簡単な操作法やスペックが示してあります.

出力周波数は0.5MHz~470MHzで出力レベルは-70dBmから132dBmまで1dBステップで調整できて,内蔵の低周波発振器によるアナログFM変調やディジタルFM変調をかけられますが,AM変調や変調レベル調整はできないようです.この辺はあくまでもV/UのFMハンディ機用と銘打っているところからこういった仕様なのでしょう. しかし0.5MHzから出力が可能であることからHF帯の受信機などの調整に重宝しそうです.

電源端子はセンタープラスの2.1mmのごく標準的なDCジャックなのでいくらでも流用ができます.

とりあえず電源を入れてVN-160L5試作機のアンテナに接続して感度をチェックしてみます.

 出力レベルを下げていくと表示で-110dBm以下の信号が聞こえなくなります.

こんな感度悪かったかなー?と思い近くにあるIC-9100というメーカー製のトランシーバーにつないでみるとやはり同様にレベルを下げて-120dBm表示になるまでには信号が聞こえなくなります.

そこで手持ちのスペアナでこのSGの信号レベルをチェックしました.RIGOLのDSA815-TGにはプリアンプが付いていてRBWを30Hz以下にすることによってノイズフロアを-130dBm程度に下げることができますが,ノイズすれすれの-130dBmでは測定ごとにレベル値が変動してしまうためおじさん工房のAPB-3で測定することにしました.APB-3はRBWを10Hzに落とすことによってノイズレベルは-140dBm程度まで抑えられるため-130dBmの信号も捉えることができます.

下は0.5MHzから45MHzまでいくつかのスポットで-70dBm表示出力レベルを測定した結果を合成した図です.

 この結果を見てみると0.5MHzでは-100dBm程度,2MHzでは-90dBmと-70dBmの表示からかけ離れたレベルでした.5MHzあたりからようやく表示に近いレベルになりほぼ一定になります(測定誤差もありますが,表示より1dB程度大きいです).

この個体だけということかはわかりませんが,少なくとも5MHz以上でないと表示通りの出力レベルは得られないようです.

ではレベル調整のほうはどうでしょうか。

 これは10MHz出力信号レベルを-70dBmから10dBずつ下げていった時の出力レベル測定結果を合成した図です.

レベルを下げていくと表示より徐々に表示出力レベルより大きくなる傾向で,-130dBm表示では約3dB程度の誤差が見られました.

このSGを出品しているところも出力レベルが低いところで表示よりやや強いレベル,と書いてあるそうです.(未確認ですが)

 もう一つ気になるところがあります.

 上図はDSA817TGのフルスパン(0~1.5GHz)でSGの出力を観察すると497.5MHz付近で-50dBm程度の比較的レベルの高い信号が見られました.出力周波数を変化させると290MHzあたりまでこの波は変化しません.ところが190MHzあたり以上になると,497.5MHzの柱は消えて今度は260MHzあたりに-50dBm程度の同じ信号強度をもつシグナルが観察されました. 

内部のVCOの漏れ信号なのかは定かではありませんが,-50dBmはどの出力レベルよりも大きく,出力信号との混合波まで観察されます.

出力に適切なLPFを挿入すると実用域は5MHzあたりから290MHzくらいでしょうか.5MHz以下ではレベル補正を加えれば使えないことはなさそうです.

あまりにも軽いので中を開けてみるとやはり中はかなりスカスカな状態でした.右側にはSG本体部と思われる基板が見られますが裏返しで取り付けてあって,なおかつホットボンドで固定されているため本体基板を外せずどのようなデバイスが使用されているかはわかりませんでした.いずれホットボンドを外して本体基板の実装されているデバイスを確認してみたいところです.

SGといえばかなり大型で重いものがほとんどで,最近は比較的小型のものも見かけますが中古市場では見かけず新品はかなり高価でアマチュアが手を出せるものではありません.しかしこのような簡易的なものでもその特性を把握すれば受信機の感度測定や調整など結構重宝しそうです.

2018年7月12日木曜日

Radioberry2製作記 その4(送信チェック編)

Radioberry2の受信動作は特に問題なく、VLFからHF帯までカバーしているようです。

またRaspberryPi3に渡す信号のサンプリング周波数は一番下の48kHzを選択していますが、このサンプリング周波数ではほぼ途切れることなく受信することが出来ます。しかし96kHz以上は処理が追い付かないのか途切れが頻出するのであまり実用的とは言えません。

一方送信機としてはどんな按配なのか、今回Radioberry2の送信波についておなじみAPB-3スペアナで簡単に検証してみました。

Radioberry2の送信出力からスペアナの間に30dBのアッテネータ挿入して、まず7MHz帯でキャリアを出してみました。のですが・・・


一見なんじゃこりゃ、みたいな結果です。基本波の高調波でないスプリアスが乱立していて1MHz以下にも高いレベルの信号が観察されました。これをただ眺めていても埒が明かないので、送信周波数をいろいろと変えて観察していると低い周波数で気がついたことがありました。

まず、160mバンド。


基本波の高調波はきわめて低いレベルに抑えられています。が、高調波に関係の無い柱が2本見えています。12bitDACから出力される信号波形はもともとはきれいなはずですが、この高調波に関係の無い不要信号は一体何なのでしょう。

次は136kHzで送信した信号のスペクトルです。


1MHzスパンでは、高調波レベルが2次高調波が最大で-52.23dBcとても優秀です。

ではもう少しスパンを拡げてみるとどうでしょう・・・


APB-3最大の50MHzフルスパンで観察すると、7.5MHzと15MHz付近に各々2本の不要信号が見えます。

では475kHzではどうかというと・・・


まず3MHzスパンでは3次高調波が最大で-52.57dBcとこれまた良い結果でした。

で、フルスパンはどうでしょう。


と、136kHzでの結果に良く似ています。ただし、2本の不要信号の間隔は136kHzの結果よりやや広いです。

これを見てもしやと思い、今度は160mバンドと500kHzで出力を測定して各々のスペクトラムを重ねてみました。


やや見えにくいと思いますが、それぞれ10MHzスパンでスキャンしたものを重ねています。すると右のオレンジ色の縦線を中心に出力周波数分だけ上下に不要信号が見えています。

AD/DA変換を司るAD9866のデータシートやソフトウエアのコードをまだ良く見ていませんが、どうやらこの不要信号はオレンジ色の縦線の周波数7.68MHz付近をサンプリング周波数としたときのaliasing signalではなかろうかと勝手に想像しています(違っていましたらぜひご教示くださいっ!)。そうすると最初7MHzのときに見た1MHz以下の不要信号に説明つけられそうです。

もしそうならこのADC出力がまともに扱える対象の周波数は3MHz以下ということになります。

逆に現状のファームウエア、ソフトウエアでは160m(1.8/1.9MHz)バンド以下が実用に耐えうるのではかいかと考えられました。

このRadioberry2のファームウエアの開発が進めばもっと高い周波数でも使えるようになるかもしれませんが、現状は136kHz、475kHz、1.8/1.9MHzが限界かもしれません。 これらのバンドであれば出力に簡単なLPFを挿入すればOKでしょう。

送信波スプリアスについてはある条件下で使える可能性がでてきましたが、それとは別の問題としてRaspberryPi3の処理が追いつかないのか信号が断続してしまい、結局そのままではまだまだ実用レベルとはいえません。

Radioberry2は今後も開発は随時進んでいるようなので、どこかでまた追試でもしようかと思います。

2018年5月19日土曜日

VNシリーズの受信部ミクサーと検波回路変更実験とデイトンでの新製品発表

小型QRP CWトランシーバのVNシリーズの受信部のミクサーと検波回路にはダイオード構成の小型DBMモジュール(ミニサーキット社のADE-1+)を使っていますが、信号ラインをDBMに合わせるためいったん50Ωに変換するトランスが必要になります。このトランシーバでは3つインピーダンス変換トランスを使いインピーダンスマッチさせています。

出来合いのインピーダンス変換トランスはあるにはあるのですが、結構高価(ミニサーキット社製のはDBMと同じくらいの値段するので3つも使うとコストが^^;)なので小さいメガネコアに細いUEWを巻いて自作しています。実装してみるとうまく動作しており、自作にしては実用的なレベルと自画自賛していますが、いかんせん巻かなければいけないコイルが多くてどうしたものかと考えておりました。

そこでバラモジ用のICを使えばインピーダンス変換トランスを省略でき変換ロスも少なくなると思い、人柱版のRF基板上のDBMと換装を試みました。

バラモジ用のICで現在入手可能なものはSA612、MC1496、NJM2594あたりになるでしょうか。このなかで、5V以下の動作が可能、外付け部品が少ない、コストが安い、という条件を満たすのはNJM2594ということになりました。

早速秋月でNJM2594とDIP変換基板を購入してRF基板の1stミクサーと検波用のDBMとトランスを除去しDIP化したNJM2594を配線し装着しました。


プリアンプと2段目IFアンプのドレインにチップインダクタを介して電源供給とし、0.01μF程度のカップリングコンデンサで各ポートと接続しています。

実際受信してみると換装後DBMのロス分感度が上がった印象ですが、オリジナルとSGを使って比較する限りS/N自体は変わらないようです。

また7MHz帯ではすぐ上に中国大陸からの放送局の強力な信号が夜間見られます。この放送の通り抜け現象が以前人柱版で報告されており、近くの強信号に対する各ステージの信号の状況をABP-3を使ってオリジナルとNJM2594換装モデルを比較してみました。
受信部ブロックダイアグラムと測定ポイント
ちゃんとしたプローブではないのであくまでも簡易的に・・・
 ABP-3はスペアナ、ネットアナ機能だけではなく独立したSGとしての機能を持っています。下の画像のようにいくつかの機能を起動させてPC上に結果を同時に表示させる事が出来ます。さすがに同時計測はできませんが、結果を比較するには便利です。


左上はSGの設定画面です。出力は0dB(-14.3dBm)から-70dBまで、発振周波数は50MHz1Hz単位まで、AM、FM変調など必要十分な機能を備えています。
他はスペアナ画面でそれぞれ独立して設定を変更する事が出来ます。ただし同時測定はできません。

SGの出力周波数を7.4MHzに設定し、出力レベルを変化させながらオリジナルDBMとNJM2594換装後のモデルとで各々測定ポイントで観察しました。

全部提示すると長くなるので、SG出力が-44dbmと-14dBmの場合の結果を。

まずダイオードDBM ADE-1+の場合。

ADE-1+入力レベル-44dBm
ADE-1+ 入力レベル-14dBm
-44dBmはSメーターでいうところのS9+30dBでまあ比較的強力な信号というところですが、検波入力まで周辺に余計な信号は見られません。
一方-14dBmの場合(S9+60dBと非常に強力な信号に相当) 、局発信号と入力信号との相互変調波が出現しています。AGCをはずしていないので正確ではありませんがおそらくミクサーには0dBm以上入力されていると見られます。
それでも周波数変換後クリスタルフィルター通過しIF増幅後の検波前では不要な周辺信号はカットされています。

次にNJM2594ミクサーの結果です。

NJM2594 入力レベル-44dBm
NJM2594 入力レベル-14dBm
ADE-1+よりもやや相互変調波による不要信号が目立ちますが、検波前ではカットされています。

配線の兼ね合いでちゃんと実装すればもう少し良い結果になると思いますが、トランスレス化したICミクサーでも問題はなさそうです。

次に強力な大陸からの放送の通り抜けレベルについて実験検証してみます。

スペアナの測定範囲を広げて(0-50MHzフルスパン)検波前に目的周波数周辺の強力な入力信号がどのレベルまで通過しているのか調べてみました。

ADE-1+ 入力-14dBm
NJM2594入力-14dBm
右上は検波手前を測定したスペアナ表示です。ADE-1+、NJM2594いずれも信号周波数7.4MHzで約-60dB(スペアナ入力に20dBのアッテネータを挿入して測定、実際は-40dBm程度と思われる)の柱が観測されています。(そのほかの柱は主にBFO信号とその高調波)

VNシリーズのIFアンプは非同調であるため、これだけのレベルの信号が通り抜けの原因とすると検波入力手前に何かフィルタ(トラップでもLPFでも)を置いて低減させるともしかしたら効果があるのかもしれません。これは今後の課題のひとつです。

あとはコイル巻きのわずらわしさの軽減を取るか、消費電流増加を抑えるのを取るか、というところですが・・・

NJM2594を2つ使うと消費電流は実測20mA以上増えてしまいます。Si5351Aの出力レベルを半分に落としたとしても15mA以上は増えています。

もともとQRP機として消費電流を抑えるとするならばどちらを取るかとても悩ましいです。消費電流だけを考えるなら素直にSA612を2つ使いIFアンプを削除すればよいのですが、入力飽和の問題やら、また回路構成が海外のQRP機と同じになってしまうのはなんというかやはり面白くありません(笑)

まぁしばらく悩んでおきましょうか。

閑話休題。

そういえば、米国のDayton HamventionでYaesuとKenwoodからHF/50MHz(+70MHz)の据え置き型無線機が発表されましたね。

FTDX101DとTS-890S・・・どちらが良いとかはおいておいて、なんかデザイン的に遠めで見ると同じように見えてしまうのは私だけでしょうか。メインダイヤルは右寄り、LCDディスプレイは左端に。しかも色が黒系統。

アナログ時代の全盛期にはメインダイヤルの上に周波数表示を置いていましたが、筐体が横長なので大きなLCDでは左に置かざるを得ないといったところなのでしょうか。

無線機だけでなく測定器系も、たとえばブラウン管のオシロスコープは表示が上になった縦長のデザインが多かったように思いましたが、今時のLCDタイプは表示がすべて左端に置かれた横長タイプですね。

それを考えると、mcHF V0.7のデザインは挑戦的ですね。一応横長ではありますが正方形に近い横長でLCDディスプレイは上に配置されています。

FBにmcHF V0.7に関する投稿をしたときに、どっかの外人が『このデザインは無線機らしくない。前バージョンの復活を待ってる』というようなコメントを残しておりましたが、既成の無線機のデザインに慣れると違和感があるのでしょうか。

無線機の外観デザインもネタとして面白そうです。一度勝手に検証でもしてみようかなと思ってしまいました。

2018年4月17日火曜日

懐かし(といっても中国製ですが)ラジオキットを組み立てる

昔の(と言っても数十年前)電子工作の原点、出発点といえばたいていはラジオではないでしょうか。

自分は幼少のころ不意に父親からもらったゲルマラジオセット(μ同調タイプ)で、電池もないのにAMラジオ放送がクリスタルイヤホンから聞こえるのがとても不思議で、中を拝みたく分解したところから電子工作の道に転んでしまいました。

以降ラジオキットを中心に組み立ててはこわしていました。次第にBCLにはまり、友達がアマチュア無線を始めたことをきっかけに中学生になってからアマチュア無線の従事者免許(当時は電話級)を取得しました。

そんなわけで今だに同じようなことを続けていますが、先日秋葉原のaitendoを訪れた折にこんなキットを見つけました。


トランジスタではなくIC1個を使った中波短波の2バンドラジオキットです。

日本にもかつては様々なラジオキットがありましたが、2バンドのもの特に短波が受信できるキットは見たことがありません。懐かしさと珍しさからつい騒動買いしてしまいました(笑)


 キットの内容はこの通りで、小袋に分けられていて思ったよりまともそうに見えましたが・・・


 一番気になったのは同調用のポリバリコンの足の錆です。ほかにもICの足がひん曲がっていたりスペーサの足のプラスチック部分がバリだらけ、IFTやOSCコイルのコアの色が判別しにくいほど褪せているとか・・・

湿気の多い日本では保存法を考えないといろいろと問題ありそうです。少なくともポリバリコンは乾燥剤とともに袋に、もちろんほかの小袋にも乾燥剤は入れないと、と余計な心配をしております。自分のキットも乾燥剤同梱を省略しているので、ジャック類などの錆発生に気をつけねばと思いました。


 組み立て中です。PCBはまともで、レジストはやや弱いですが位置や大きさも妥当です。パーツの足の間隔もほぼ正確でパーツを加工することなくはんだ付けできました。完成後OSCコイルとIFTの付け間違いやバリコンの足の付け間違いが見つかり各々一旦外して正しく装着できましたが、はんだごての熱によるパターン剥がれもありませんでした。


 これがLEDを除く唯一の半導体、ラジオICのTA7613です。といってもオリジナルのものなのかセカンドソースものなのかよくわかりません。AM/FMラジオ用の古いICだそうですが、ネットでデータシートが拾えます。


 いくつか装着やり直しが入りましたが、約2時間ほどで完成。

電源はaitendoサイトの説明では単3電池2本ということでしたが、電池ケースの実物見ると大きすぎるので調べてみると単1乾電池2本が正しいようでした。早速コンビニで単1電池2本購入、ラジオにセットして鳴らしてみました。

まず中波帯でAPB-3のSGとOSCの周波数を観察してトラッキング調整を行いました。

家の中ではノイズを拾ってしまうので、ベランダに出てワッチしてみると当然のことながらAM放送は十分入感します。短波に関しては実際どの周波数帯を受信しているのか分かりませんでしたがダイヤルを回すと数局放送が聞こえてきます。

かすかに聞こえる短波放送の音を聞くといまでもわくわくしますね。

あとでSGで確かめてみると12MHz台を受信していました。受信周波数の幅も500kHz程度と狭くサイトの表記にあるような5~17MHzといった広帯域に受信できるわけではないようです。回路図とポリバリコンの可変容量域をみると当然なのですけどね。

いまのところ広帯域受信などの改造は考えていないので近い25mバンドに合わせるようにしました。

 最後に、


 あともうちょいといった感じで、ある意味なかなか味のあるラジオに仕上がっております。

総評として、基板やケースの精度は思ったよりも悪くない印象です。組み立てにはサイトのBOMと基板のシルク印刷を頼りにすればほぼ問題ないのですが、LEDの取り付け方や、ポリバリコンの取り付け方向を明確に、あとは保存を考えた包装、これらが改善されれば良いなと思いました。

2017年4月29日土曜日

mcHFの帯域外不要輻射についてちょびっと考察

mcHFの帯域外スプリアスの件、連休後に調査しようと思いましたがちょっとモヤモヤするので(笑)アタリはつけておこうと少し突っ込んで調べてみました。

mcHFのブロックダイヤグラムを読んでみると、送信の流れとしてはまずDACで生成されたベースバンドIQ信号と、この手の定番であるプログラマブルクロックジェネレータSi570にフリップフロップ7474で生成した局発IQ信号をミクサで混合してBPFを通して電力増幅ステージで5Wに増幅されます。


 回路図では送信ミクサからBPFへ都合よく0Ωチップシャントで繋がっており、いったん除去してピンを立ててAPB-3スペアナで信号の周波数スペクトルを観察しました。

BPFの入り口のシャントを外してミクサ出力を取り出します
 CWモードでTUNEボタンを押して連続送信とし、スキャンします。


 センターの目的信号より750Hzほど高く、40dBほど低い柱とさらに同じく750Hz高いところに小さい柱が見えます。次にドライブレベルを最大にしてみます。


 目的信号のレベルは高くなりますが右隣の柱のレベルには変化がなく、さらに右の柱のレベルは高くなっています。まわりもなにやらざわついています。

ドライブレベルを戻して、今度は設定メニューにあるIQバランス調整をいじってみます。


 スパンを拡げると新たに3kHz毎に柱が見えます。IQバランスを崩してみると・・・


 目的信号の柱の2つ右の小さな柱のレベルが高くなっています。しかし1つ右の柱のレベルには変化がほとんどありません。

 DAC出力と局発出力は直接観察していませんが、目的信号のひとつ右の柱は局発漏れ成分でもう一つ右の柱は逆サイドバンドであろうと想像しています。おそらくCWモードでは750HzのIQ信号と局発を混合して目的信号を発生させているのだろうと思われ、3kHz毎の柱と、IQバランスを崩したときの間に見える小さな柱も、相互変調による不要信号ではなかろうかと考えています。

そして、BPFへのシャントを付け直してアンテナ出力からの波形を観察すると・・・


ミクサ出力にスペクトルが似てますね。原因はミクサ周辺が主のようです。

他のモードについても観察してみました。

逆サイドバンドが分かるようにIQバランス崩してます
SSBモードのツートーン入力によるスペクトルです。CWモードとは異なり約10kHz下に局発リークが観察されます。


 AMモード(ツートーン入力)です。まぁこれはこんなものでしょう。


 最後にナローFMモード(ツートーン)ですが、SSBとほぼ同じく約10kHz下に局発リークが見られます。

【現時点での結論と対策について】
帯域外不要輻射については送信ミクサの局発リークが主な原因と思われます。このSDR送信部はPSNタイプのSSBジェネレータと同様な構成であり、クリスタルフィルタによるキャリアや周囲の不要信号のカットがまったく期待できないため、その分ミクサの性能が厳しく要求されます。このミクサも局発リーク抑制は40dB以上確保できているので決して悪くはないですが、そのまま増幅されかつ複雑な相互変調によって帯域外不要輻射が目立ってしまったようです。
 対策としては、ミクサのDCオフセットを調整して局発リークレベルを極限まで落とすことと、CWモードではもう少し高い周波数で出力して目的信号からリーク成分などを離すことが必要に思われました。

対策の実践は連休後に行います。

追記:職業病なのか左右失認か右左間違えていたのでそれぞれ訂正しました。

2017年4月27日木曜日

mcHFのアンテナスイッチ

先日ブログにアンテナスイッチのPINダイオードを取り払って普通のリレーにするという改造を施すとスプリアスが抑えられた、というコメントをいただいたきました。

mcHFの送信部はファイナルからLPF、アンテナ端子まで常時繋がっており、受信部は送信部のファイナルとLPFの間から引っ張ってきて、下のアンテナスイッチ回路を介してフロントエンドに繋がります。


受信時はPINダイオードのD3がオンになりLPFに繋がり、送信時はD3がオフになってLPFへの経路が遮断され、入力もD4がオンになることでショートし送信波とのアイソレーションを確保しているようです。

PINダイオードはVHF帯などの高い周波数領域で使われることが多いです。周波数が低くなると信号の歪が大きくなり、扱う電力が大きいととくに歪むようです。

この話を聞いたときmcHFの高調波はPINダイオードで強調されているのかもしれないということは思いつきましたが、近接した不要輻射も低減したというのは予想していませんでした。

というわけでいきなりリレーに置き換える前に、まずはPINダイオード着脱前後で送信波をアッテネータを介してAPB-3スペアナで測定しました。

最初にダイオードをつけた状態で7MHz帯にて測定。


 高調波はいずれも50dBc以上抑制されていましたが、基本波の根元が異様に拡がっています。


拡大してスキャンすると約700Hz毎に不要輻射が発生していました。これらはほとんどが60dBc以上抑えられておらず非常にdirtyな信号です。ただ出力レベルを絞ると拡がりは少なくなります。これは下のダイオードを外した状態、それから前に一度測定してブログ記事で公開したものと同様の結果でした。

低い周波数帯でこのような傾向が強く、これはPINダイオードによる影響で信号が歪んでいるのではなかろうかと考えさせられます。

さていよいよ2つのダイオードを外し同条件で測定してみます。

PINダイオードを外しても送信部は繋がったままです

高調波領域では大きな変化は見られません。基本波の根元の拡がりはかなりおさまりましたがまだまだ拡がったままでした。


拡大してみるとダイオード装着時よりはマシになったものの、同様に約700Hz間隔で不要輻射が残っています。

設定メニューでは送信時のIQ信号の位相と振幅レベル調整項目があり、スペアナを連続スキャンしながら送信し調整してみたところ、不要輻射の柱の一部分だけ抑制されました(いわゆるイメージ波)が上の画像のように不要な波が依然として残っています。

自分の個体の問題なのかどうかは分かりませんが、 まだまだ電波の質としては充分良いとは言えない状況でした。

やはり各パート(PA、ミクサ、DAC等々・・・)に切り分けながら原因特定して改善する必要があります。

GW過ぎまでお預けにします^^;


2017年1月21日土曜日

7MHz ポケットサイズ QRP CW トランシーバ人柱版の完成

改修を重ねてきたQRPトランシーバですが、人柱版として頒布可能な条件が整いました。

最後にネックになっていたのは、送信波のスプリアスでした。帯域外近接スプリアスはとくに大きな問題はなかったものの2次高調波が基本波の-40dB強といまひとつ抑えきれていませんでした。新スプリアス基準では空中線電力1Wを超え5W以下の場合、スプリアス領域における不要発射の強度の許容値が50μW(-13.0dBm)と定められており、出力3W(+34.8dBm)とすると-47.8dBの減衰量が必要になり、このままでは3W(電源電圧13.8V時)出力の場合アウトです。

 もともと設計上終段はE級の要素を取り入れていましたが、部品省略のためフライホイールの共振回路のQを低くせざるを得ず、その結果LPF手前の波形がかなり歪んでいました。こんな感じです。

黄色がLPF通過前 赤がアンテナ出力波形

フライホイールネットワークはFETがOFFの状態で共振させているので、ONになるとドレインーソース間の容量が消えて共振周波数が高くなり出力波形のマイナスの振れの部分のピークが早くなった結果上のように大きく波形が歪みます。

そこで基本に立ち返り、標準のQ=5としてフライホイールの出力側のキャパシタと電源供給用のRFCを追加しごく普通のE級増幅回路にしました(最初からそうすべきだった(汗))


 フライホイールのコイルは巻き数を増やし実装しなおし、インピーダンス変換トランスの接続ポイントを変更。裏面にはフライホイール用コンデンサ(電圧が高いので(←パラにしても耐圧は変わらないので間違いです)50V耐圧の積層セラミックコンデンサをパラに)、RFCを装着。

 でもって早速測定を。

60dBのアッテネータを介しておじさん工房APB-3に接続
 スペアナで観察する前に、まずオシロで波形をみてみましょう。

黄色がゲート電圧、赤がドレイン電圧曲線 スイッチポイントはOK
出力曲線 まだわずかに歪んでますがかなりましな波形に
 波形を観察する限り改修の効果はあったようで、出力も上昇しています。

次にAPB-3で送信波を観察しました。


 普通に観察すると2次高調波は基本波に対して54dB程度抑えられています。


 もう少し詳しく見るために、200トレース平均をかけて基本波レベルをリファレンスとして表示させてみました。こうするとノイズフロアの変動が抑えられて小さな信号が判別できるようになります。3次以降はほぼ-70dB前後で抑制されていました。

 次に、基本波帯域外不要輻射を観察してみます。

サイドトーンOFF時
サイドトーンON時(ボリウム最小)
サイドトーンON時(ボリウムほぼ最大)
 と、まぁこんな感じでPWM出力とAFパワーアンプ出力で変調がかかっているような波形になってしまいます。いずれも60dB以上は抑えられていますが、ちょっとすっきりしませんね。電源系から入り込んでいるのか今のところ経路は不明ですが、今後何とか対策したいところです。

 課題はまだまだ残っていますが、一通り実運用に支障ない程度のものが出来たようです。

最新のRFパートの回路図を載せちゃいます(禁無断転載)


 人柱版お待ちの方はもうしばらくお待ちください。

 今度の関西ハムシンポが終わってから用意進めます。