mcHFの送信部はファイナルからLPF、アンテナ端子まで常時繋がっており、受信部は送信部のファイナルとLPFの間から引っ張ってきて、下のアンテナスイッチ回路を介してフロントエンドに繋がります。
受信時はPINダイオードのD3がオンになりLPFに繋がり、送信時はD3がオフになってLPFへの経路が遮断され、入力もD4がオンになることでショートし送信波とのアイソレーションを確保しているようです。
PINダイオードはVHF帯などの高い周波数領域で使われることが多いです。周波数が低くなると信号の歪が大きくなり、扱う電力が大きいととくに歪むようです。
この話を聞いたときmcHFの高調波はPINダイオードで強調されているのかもしれないということは思いつきましたが、近接した不要輻射も低減したというのは予想していませんでした。
というわけでいきなりリレーに置き換える前に、まずはPINダイオード着脱前後で送信波をアッテネータを介してAPB-3スペアナで測定しました。
最初にダイオードをつけた状態で7MHz帯にて測定。
高調波はいずれも50dBc以上抑制されていましたが、基本波の根元が異様に拡がっています。
拡大してスキャンすると約700Hz毎に不要輻射が発生していました。これらはほとんどが60dBc以上抑えられておらず非常にdirtyな信号です。ただ出力レベルを絞ると拡がりは少なくなります。これは下のダイオードを外した状態、それから前に一度測定してブログ記事で公開したものと同様の結果でした。
低い周波数帯でこのような傾向が強く、これはPINダイオードによる影響で信号が歪んでいるのではなかろうかと考えさせられます。
さていよいよ2つのダイオードを外し同条件で測定してみます。
PINダイオードを外しても送信部は繋がったままです |
高調波領域では大きな変化は見られません。基本波の根元の拡がりはかなりおさまりましたがまだまだ拡がったままでした。
拡大してみるとダイオード装着時よりはマシになったものの、同様に約700Hz間隔で不要輻射が残っています。
設定メニューでは送信時のIQ信号の位相と振幅レベル調整項目があり、スペアナを連続スキャンしながら送信し調整してみたところ、不要輻射の柱の一部分だけ抑制されました(いわゆるイメージ波)が上の画像のように不要な波が依然として残っています。
自分の個体の問題なのかどうかは分かりませんが、 まだまだ電波の質としては充分良いとは言えない状況でした。
やはり各パート(PA、ミクサ、DAC等々・・・)に切り分けながら原因特定して改善する必要があります。
GW過ぎまでお預けにします^^;
追記:他のバンドでも一番下のスペアナ画像に似た結果になっており、どうもPA部以前の問題なのかもしれません。PA部を切り離して波形観察して追い込んで行きたいと思いますがやっぱりGW過ぎてからで(笑)
スペアナで近傍を確認し直しました。少しは改善したもののまだまだでした。
返信削除私の個体の7MHzもっと酷いです。他の方のmcHFも借りて波形を確認しましたが酷い物、軽い物がありましたまたバンドによっても状況が異なります。がスプリアス基準はどれも満たしていませんでした。これに関係する記述は
http://www.m0nka.co.uk/?p=5545
だと考えられますが如何でしょうかね?
DIWさん、こんにちは。
削除他の個体も検証されたとのこと、お疲れさまです&情報ありがとうございます。
なかなか一筋縄ではいかなさそうですね。リンク先の記述を拝見しましたが対象がVer0.6以前のもので(ver0.5?)、おそらく私の所有するVer.0.6ではそれを基に改修されていると思います。
ベースバンド出力から信号を少しずつ追って原因を調べ改善したいと考えています。
亀レスですが…
返信削除“約700Hz間隔で不要輻射”のスペクトル
うちのSDR-TRXでも同様なスペクトルが見えます。
モノは、Aerial-51 SKY-SDR という5WのQRPトランシーバです。
CWのトーン設定を500Hzにすると、500Hz間隔で8ピークほど出ます。Loが-47dB、500Hz間隔の一番高いピークは-53dBくらいです。
ミクサーまわりの問題なのでしょうか。
ダイレクトコンバージョンのベースバンドSDRだから?
不要輻射が-40dB以下であっても、ちょっと気持ち悪いですね…
SoftRock RXTX EnsembleというSDR-TRXもあるのですが、I/Qバランス適当だし、もっとひどいかも!?
yadosanさん、コメントありがとうございます。
削除仰るようにベースバンドからRF帯へ持ち上げるアナログミクサの問題でしょう。IQミクサとはいえアナログミクサなのでどうしてもキャリア漏れや逆サイド漏れがある程度は出てきてしまいます。さらに周りの700Hzごとのピークは、ミクサ後のドライバー段もしくはファイナルのひずみから生じたものか、もしくは測定系で生じたものと思われます。
mcHFフォーラムにこの測定結果を投稿したときに、ドイツのグループではミクサのキャリアバランス調整などいくつか試みられたことを教えていただきました。そのうちのひとつ、ミクサのキャリアバランス調整を追加してみたところキャリア漏れはいくらか低減することができました。それでも完全にゼロにすることは難しいです。ましてやマルチバンドで同じ効果を保つことはさらに困難なので、どこかで妥協するしかなさそうです。
またソフトウエアによるIQバランス調整がバンド毎にできないことも少々不満でしたが、新スプリアス基準的には帯域外近傍スプリアスの基準を辛うじてクリアしているし、実際他の受信機で信号をモニターしても近傍のスプリアス信号はほとんど聞こえないので実運用上問題ないのかもしれません。この問題はおそらく他のSDRトランシーバ(KX3やKX2など)も同様なのでしょう。
他にもSoftRock RXTXキット(未組立て)やGenesisRadioG11など所有しているので、これらも一度検証してみようかなと思っています。