2017年4月21日金曜日

ポケットサイズモノバンドCWトランシーバ派生版など

試作を重ねてきたポケットサイズモノバンドCWトランシーバは、7MHz版(VN-4002)のパーツを調達中で、あとデバイス1つの再入荷を待っているところです。これが調達完了すれば必要なパーツが揃うのでいよいよ頒布可能になります。

そんなわけで、次に派生版を少しずつ試作を進めることにしました。

まずは30m版VN3002です。

基板レイアウトはVN4002と同一です。他ハードウエアの変更点は、受信部フロントエンドの副同調回路の定数、アンテナ端子直下のLPFの定数、局発出力のLPF定数、それからE級ネットワークの定数です。

バンドが異なるので基板を色違いにしています
試作機を組み立てて、メインのE級ネットワークの調整です。

ドレイン電圧のセロボルト点が早すぎでスイッチング損失が明らかに増加しています
オシロスコープで観察したファイナル部のゲート電圧曲線(黄色)とドレイン電圧曲線(赤色)です。

ドレイン電圧曲線はFETオフ時正弦波上半分様の子を描きますが、計算した定数では共振周波数が高くてZVS動作になっていません。この状態で送信を続けるとFETがかなり熱を持ってしまい、かつ出力も少なくなります。当然出力波は歪みも強く高調波レベルも高くなります。

この場合はLか直列共振用か並列共振用の2つのCいずれかもしくは2つ以上を増やします。負荷インピーダンスは下がる傾向ですが、直列共振用のCを調整するのが経験上一番やりやすいです。

オシロスコープで波形観察しつつ直列共振Cを調整、結局計算値より100pF程度上乗せした値でほぼちょうどよいスイッチポイントとなりました。

ドレイン電圧のピークも上昇します(BS170のVDSSは60Vでちょっとギリギリっぽいですが^^;)
この調整により、出力はVN4002と同等程度を確保しています。連続送信でもFETはほんのり暖かくなる程度で放熱器は不要です。

次にスペアナで高調波のチェックを行いました。

出力波形のひずみは少なく7次チェビシェフLPFを通すことで高調波はかなり抑えられています
2次高調波が60dBc以上と良好な結果でした。
というわけで30m版もほぼ完成としました。

30m版の次は160m版です。160m版はLの値が大きく、また実用には5Wは確保する必要があるためRF部はVN4002やVN3002とは別に設計することにしました。かねてからE級プッシュプルを実験していましたが、この派生版に採用することにしました。

禁無断転載で
使用したPowerMOS FETはVDSS100V ID18Aのサンケン製FKI10531という電源用の石で、秋月で1個40円です。Cissが1530pFと非常に高いですがtd(off)13.7ns, tf6.0nsと高速であり、1.9MHzであれば充分使えると判断しました。オン抵抗も50mΩと低く、低インピーダンス負荷でもドレイン電流の上昇も抑えられそうです。

ゲートドライブはロジックICのインバータ3パラと高Cissを駆動するには少々心もとないですが、1.9MHzという低い周波数では何とか大丈夫そうでした。

秋月ユニバーサル基板タイプBに実装しました 余ったところに受信部を・・・入るかな?^^;
オフ時のリンギング多少気になります 対策検討中
LPFは他のVNシリーズと同様に7次のチェビシェフ型です。設計に近く急峻な特性で、2次高調波に相当する周波数(3.8MHz付近)では50dB程度の減衰量になっています。


最終的にLPF出力から減衰器を通してスペアナで送信波を観察しました。


出力は9V電源で約8W、入力電流1.1Aで効率は約80%、2次高調波は80dBc以上と充分すぎるくらいに減衰されています。プッシュプルなのでもともと偶数次高調波は低いため、LPFはもう少し次数下げても良いかもしれません。

電源電圧を12Vに上げると出力は10Wを軽く超えますが、今度は出力トランスやLPFコイルが暖かくなってきます。コイル損が主と考えるのであれば線材を太くするかコアを大きくするか検討が必要です。

ともかくユニバーサル基板に組んでみて比較的安定して出力を得られているのでこれをベースにして受信部などの構築へ進めます。

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