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2021年11月2日火曜日

RFワールド No.56へ寄稿させていただきました

 10/29にCQ出版のRFワールド誌No.56が発刊されました。

 

RFワールド誌は『無線と高周波の技術解説マガジン』と銘打ち、無線通信はもちろんのこと産業や医療にかかわる高周波の利用の実際等詳細な解説を特徴とした季刊誌です。

今号と前号のNo.55で製作による無線・高周波の実践体験シリーズという特集の執筆を担当された7L4WVU原口OMのご紹介で、3出力プログラマブル・PLLクロックジェネレータIC Si5351A-B-GTの解説と使用例の記事を執筆させていただきました。

Si5351Aに関しては以前よりこのブログでも設定方法などの記事を投稿していましたが、今回は一旦総まとめという形で残すことができました。

RFワールドのサイトには各記事のpdfファイルやダウンロードサービス(私の記事でも制御プログラムのソースコードやバイナリを用意させていただきました)がありますので、興味がありましたらアクセスしてみてください。

なお残念なことに今回のNo.56をもってRFワールドは休刊となりますが、同出版社から刊行されているトランジスタ技術誌の常設コーナーとして記事を継続する予定だそうです。

2020年1月14日火曜日

ローバンド(160m, 80mバンド)用小型CWトランシーバVN-L5シリーズ人柱版モニター募集について ⇒ 1/17定員に達したので締め切ります

昨年末から試作を続けていました、ローバンド用新VNシリーズ”VN-L5シリーズ”の人柱版の基板が到着し、実際に組み立てて動作を確認しましたのでベータテスターを募集します。

組み立てた実機は来る2月9日(月)兵庫県尼崎市で開催されます関西ハムシンポジウム2020で参考展示し、人柱版のフィードバックを受けて7月に開催されると思われる関西アマチュア無線フェスティバルもしくは10月開催予定のハムフェアで正式頒布を考えています。

そういうわけでイベントに先行して人柱版を少数頒布しますが、以下の応募条件にすべて該当する方を募集します。応募方法は、jl1vnq(アットマーク)gmail.comあてに、「VN-L5シリーズ人柱版キット頒布希望」の件名で(お持ちであれば)コールサイン、お名前、住所(発送先)、連絡が取れるメールアドレスをお送りください。

申し込みはメールに限ります。
twitterやfacebookなどのSNSのDM、messengerでは送らないでください。

折り返しモニター依頼のメールをお送りします。募集人数に達した段階で締め切ります。

応募要項 ⇒ 1/17募集人数に達したので締め切りました

募集人数8名(締め切りました)

応募条件
1.無線機の自作もしくは無線機キット製作経験があり、かつ表面実装部品の装着に十分慣れていること。
2.必ず組み立てること。(積みキットにしない)
3.ある程度自身でトラブルシュートが可能であること。
4.20MHz以上のオシロスコープを所有し、かつ操作できること。
5.PICプログラマ(Pickit3)を所有し、MPLAB X IDE環境があること。
(装着してからでないとPICにファームウエアをプログラムできないため)
6.改善案などのフィードバックもしくは製作レポートの公開(SNSやブログで)が出来ること。
7.ファームウエアのソースコードは現時点で非公開なので、無断で公開したり第三者への配布をしないこと。

必須条件ではありませんが、免許をおろして実運用していただけると嬉しいです。

キット頒布価格7,000円前後を予定

頒布時期2月前後を予定

キット内容
VN-L5シリーズCTRL部、TX部、RX部各基板と装着パーツすべて
(160m、80m両方のバンド依存パーツ同梱、どちらか好きなバンドを選択可能)

上下アクリルパネル(スイッチの穴加工が必要です)とスペーサ、つまみ類

160m、80m用のファームウエアとプログラムコード、簡単な説明書(pdfファイル)
(いずれもオンラインで提供)

ちなみに組みあがるとこんな感じです。(画像右上)

黒い基板のやつです

※参考
VN-L5シリーズ現時点での主な仕様

 [受信部]
 受信周波数 VN-160L5 0.5~2MHz,VN-80L5 3.2~4MHz
 受信部構成 高1中2シングルスーパーヘテロダイン
 中間周波数 6MHz
 クリスタルフィルタ通過帯域 約500Hz
 受信感度 -130dBm前後(簡易SG測定)
 消費電流 110mA(無音時)

 [送信部]
 送信周波数 JAバンドプランに準拠(オフバンド送信禁止)
 終段形式 プッシュプルE級増幅
 送信出力 20W@14.5V,18W@13.8V,13W@12V,10W@10V,5W@7.4V
     (周波数による変動あり)
 不要輻射 2次高調波-50dBc以下 帯域外不要輻射-40dBc以下
 効率(システム全体で)約75~80%

 [制御部]
 VNシリーズと同等
 追加点 パワーメーター,電源電圧表示,バンドプラン内表示

 外形サイズ(突起物除く) W64mm x H84mm x D42mm
 電源電圧 6.5~15.5V

 というわけで、よろしくお願いいたします。

追記:1/17 8名申し込みありましたので募集を締め切ります。ありがとうございました。

2019年10月24日木曜日

Si5351A最後の罠にはまる!?

Silicon Labs社製のSi5351Aはすっかりアマチュア無線自作関連では定番となりました。

マイコンと組み合わせればVFOとして十分実用になるし安価に手に入るため、お手軽な発振器として従来のDDSにとって代わってしまったようです。

自分もVNシリーズの発振源として重宝していますが、そろそろ新しいプロジェクトということで高い周波数の発振テストを行いました。以前50MHz台のテストを行い問題なく設定周波数で発振したのを確認したので今度は144MHz帯を狙いテストしたところ、なぜか90MHz台と設定値と異なる出力周波数でした。

いろいろと設定周波数を変えながら検証していくと、どうやら80MHz以上を設定した場合ダメらしいことが分かりました。

そこで原因を探るべくまずはSi5351Aの設定パラメータの関係と、周波数設定の考え方について以前の記事をみながら再度おさらいすることにしました。

Si5351Aの周波数設定式

1.VCO周波数設定(PLLA, PLLB)
 fvco = fXTAL x (a + b / c)
    a...15~90, b...0~1048575, c...1~1048575, fXTAL = 25MHz or 27MHz
 fvco = 375MHz~900MHz

2.VCO分周設定(MultiSynth0,1,2,...)
 fout = fvco / (d + e / f)
    d...4~900, e...0~1048575, f...1~1048575

3.設定周波数とパラメータ値の関係


a(16~32(36)) c d R
80~180MHz 2F 500000 5 0
40~80MHz 4F 250000 10 0
36~40MHz 8F 125000 20 0
16~36MHz F 1000000 25 0
8~16MHz 2F 500000 50 0
4~8MHz 4F 250000 100 0
2~4MHz 8F 125000 200 0
1~2MHz 16F 62500 400 0
0.5~1MHz 16F 62500 400 2
0.25~0.5MHz 16F 62500 400 4
0.125~0.25MHz 16F 62500 400 8
62.5~125kHz 16F 62500 400 16
31.25~62.5kHz 16F 62500 400 32
15.625~31.25kHz 16F 62500 400 64
8~15.625kHz 16F 62500 400 128

さてこれらのパラメータの設定値、一見問題なさそうに見えますが、あらためてSi5351Aのレジスタマップ説明書AN619でおそらく最新版Rev.0.7の記述をたどってみると・・・


なんと2.でいうところの d + e / f 値は8以上でないとダメだということです。つまり分周比を整数にするため e / f を0にすると、d値は8以下を設定できないことになります。これは気が付きませんでした。つまりいままでの設定アルゴリズムでは80MHz以上の場合d値が5と設定できない値であったため、期待どおりの周波数が出力されなかったというわけですね。
では80MHz以上設定するにはどうしたらいいでしょうか?
解は下のほうの記述にありました。


 この設定でd値を4とすることによって200MHzまで設定が可能になるということです。
以上を踏まえ改定版設定表を作ってみました。
(追記(2019.11.1):80MHzから100MHzまでの設定を変更しました)


a(16~32(36)) c d R
100~200MHz※
80~100MHz
4/25 F
8/25 F
625000
312500
4
8
1
1
40~80MHz 4/10 F 250000 10 1
36~40MHz 8/10 F 125000 20 1
16~36MHz F 1000000 25 1
8~16MHz 2F 500000 50 1
4~8MHz 4F 250000 100 1
2~4MHz 8F 125000 200 1
1~2MHz 16F 62500 400 1
0.5~1MHz 16F 62500 400 2
0.25~0.5MHz 16F 62500 400 4
0.125~0.25MHz 16F 62500 400 8
62.5~125kHz 16F 62500 400 16
31.25~62.5kHz 16F 62500 400 32
15.625~31.25kHz 16F 62500 400 64
8~15.625kHz 16F 62500 400 128

注:36MHz以上は10Hzステップ
※・・・2.の条件に依らずP1=0, P2=0, P3=1, MSx_INT=1, MSx_DIV4=3に設定

この設定表を基にコードを書き直し実機でテストしてみました。(144.10000MHzに設定)

というわけで、設定どおりの周波数で出力できました。(右上の青い周波数値)

2018年5月19日土曜日

VNシリーズの受信部ミクサーと検波回路変更実験とデイトンでの新製品発表

小型QRP CWトランシーバのVNシリーズの受信部のミクサーと検波回路にはダイオード構成の小型DBMモジュール(ミニサーキット社のADE-1+)を使っていますが、信号ラインをDBMに合わせるためいったん50Ωに変換するトランスが必要になります。このトランシーバでは3つインピーダンス変換トランスを使いインピーダンスマッチさせています。

出来合いのインピーダンス変換トランスはあるにはあるのですが、結構高価(ミニサーキット社製のはDBMと同じくらいの値段するので3つも使うとコストが^^;)なので小さいメガネコアに細いUEWを巻いて自作しています。実装してみるとうまく動作しており、自作にしては実用的なレベルと自画自賛していますが、いかんせん巻かなければいけないコイルが多くてどうしたものかと考えておりました。

そこでバラモジ用のICを使えばインピーダンス変換トランスを省略でき変換ロスも少なくなると思い、人柱版のRF基板上のDBMと換装を試みました。

バラモジ用のICで現在入手可能なものはSA612、MC1496、NJM2594あたりになるでしょうか。このなかで、5V以下の動作が可能、外付け部品が少ない、コストが安い、という条件を満たすのはNJM2594ということになりました。

早速秋月でNJM2594とDIP変換基板を購入してRF基板の1stミクサーと検波用のDBMとトランスを除去しDIP化したNJM2594を配線し装着しました。


プリアンプと2段目IFアンプのドレインにチップインダクタを介して電源供給とし、0.01μF程度のカップリングコンデンサで各ポートと接続しています。

実際受信してみると換装後DBMのロス分感度が上がった印象ですが、オリジナルとSGを使って比較する限りS/N自体は変わらないようです。

また7MHz帯ではすぐ上に中国大陸からの放送局の強力な信号が夜間見られます。この放送の通り抜け現象が以前人柱版で報告されており、近くの強信号に対する各ステージの信号の状況をABP-3を使ってオリジナルとNJM2594換装モデルを比較してみました。
受信部ブロックダイアグラムと測定ポイント
ちゃんとしたプローブではないのであくまでも簡易的に・・・
 ABP-3はスペアナ、ネットアナ機能だけではなく独立したSGとしての機能を持っています。下の画像のようにいくつかの機能を起動させてPC上に結果を同時に表示させる事が出来ます。さすがに同時計測はできませんが、結果を比較するには便利です。


左上はSGの設定画面です。出力は0dB(-14.3dBm)から-70dBまで、発振周波数は50MHz1Hz単位まで、AM、FM変調など必要十分な機能を備えています。
他はスペアナ画面でそれぞれ独立して設定を変更する事が出来ます。ただし同時測定はできません。

SGの出力周波数を7.4MHzに設定し、出力レベルを変化させながらオリジナルDBMとNJM2594換装後のモデルとで各々測定ポイントで観察しました。

全部提示すると長くなるので、SG出力が-44dbmと-14dBmの場合の結果を。

まずダイオードDBM ADE-1+の場合。

ADE-1+入力レベル-44dBm
ADE-1+ 入力レベル-14dBm
-44dBmはSメーターでいうところのS9+30dBでまあ比較的強力な信号というところですが、検波入力まで周辺に余計な信号は見られません。
一方-14dBmの場合(S9+60dBと非常に強力な信号に相当) 、局発信号と入力信号との相互変調波が出現しています。AGCをはずしていないので正確ではありませんがおそらくミクサーには0dBm以上入力されていると見られます。
それでも周波数変換後クリスタルフィルター通過しIF増幅後の検波前では不要な周辺信号はカットされています。

次にNJM2594ミクサーの結果です。

NJM2594 入力レベル-44dBm
NJM2594 入力レベル-14dBm
ADE-1+よりもやや相互変調波による不要信号が目立ちますが、検波前ではカットされています。

配線の兼ね合いでちゃんと実装すればもう少し良い結果になると思いますが、トランスレス化したICミクサーでも問題はなさそうです。

次に強力な大陸からの放送の通り抜けレベルについて実験検証してみます。

スペアナの測定範囲を広げて(0-50MHzフルスパン)検波前に目的周波数周辺の強力な入力信号がどのレベルまで通過しているのか調べてみました。

ADE-1+ 入力-14dBm
NJM2594入力-14dBm
右上は検波手前を測定したスペアナ表示です。ADE-1+、NJM2594いずれも信号周波数7.4MHzで約-60dB(スペアナ入力に20dBのアッテネータを挿入して測定、実際は-40dBm程度と思われる)の柱が観測されています。(そのほかの柱は主にBFO信号とその高調波)

VNシリーズのIFアンプは非同調であるため、これだけのレベルの信号が通り抜けの原因とすると検波入力手前に何かフィルタ(トラップでもLPFでも)を置いて低減させるともしかしたら効果があるのかもしれません。これは今後の課題のひとつです。

あとはコイル巻きのわずらわしさの軽減を取るか、消費電流増加を抑えるのを取るか、というところですが・・・

NJM2594を2つ使うと消費電流は実測20mA以上増えてしまいます。Si5351Aの出力レベルを半分に落としたとしても15mA以上は増えています。

もともとQRP機として消費電流を抑えるとするならばどちらを取るかとても悩ましいです。消費電流だけを考えるなら素直にSA612を2つ使いIFアンプを削除すればよいのですが、入力飽和の問題やら、また回路構成が海外のQRP機と同じになってしまうのはなんというかやはり面白くありません(笑)

まぁしばらく悩んでおきましょうか。

閑話休題。

そういえば、米国のDayton HamventionでYaesuとKenwoodからHF/50MHz(+70MHz)の据え置き型無線機が発表されましたね。

FTDX101DとTS-890S・・・どちらが良いとかはおいておいて、なんかデザイン的に遠めで見ると同じように見えてしまうのは私だけでしょうか。メインダイヤルは右寄り、LCDディスプレイは左端に。しかも色が黒系統。

アナログ時代の全盛期にはメインダイヤルの上に周波数表示を置いていましたが、筐体が横長なので大きなLCDでは左に置かざるを得ないといったところなのでしょうか。

無線機だけでなく測定器系も、たとえばブラウン管のオシロスコープは表示が上になった縦長のデザインが多かったように思いましたが、今時のLCDタイプは表示がすべて左端に置かれた横長タイプですね。

それを考えると、mcHF V0.7のデザインは挑戦的ですね。一応横長ではありますが正方形に近い横長でLCDディスプレイは上に配置されています。

FBにmcHF V0.7に関する投稿をしたときに、どっかの外人が『このデザインは無線機らしくない。前バージョンの復活を待ってる』というようなコメントを残しておりましたが、既成の無線機のデザインに慣れると違和感があるのでしょうか。

無線機の外観デザインもネタとして面白そうです。一度勝手に検証でもしてみようかなと思ってしまいました。

2018年2月2日金曜日

CentSDRにバッテリーを内蔵させる

CentCDRキットのPCBには充電回路とUSBーバッテリー電源切り替え回路のパターンがありますが、デフォルトではバイパスするように組み立てます。

しかしせっかくなのでバッテリーを内蔵させようと、まず薄型のLiPoバッテリーを購入しました。


本体後ろにセットできる程度の大きさでなるべく大容量のものを選びましたが、充電用IC MCP73831の充電電流設定抵抗が15kΩで、この時の充電電流は80mAと小さめなので2000mAhではちょっと大きかったかな^^;

PchMOSFETとTRは手持ちのDMG3415と2SC3325を使い、MCP73831はaitendoから取り寄せ回路図を参照してパーツを実装しました。


バッテリー用のコネクタはPCBの裏に取り付けます。

この状態でバッテリーをつなぐとUSB接続なしで問題なく立ち上がります。

ただし組み立て説明書によると、電源切り替え回路に問題があってバッテリーを繋げた状態でUSBに接続してからUSBを切り離すとバッテリー側のPchMOSFETスイッチがONにならず、電圧降下が生じてしまうということでした。

実際テストすると、バッテリーのみの場合LDO前との電圧差は数十ミリV程度でしたが、USBを接続してから外した時には0.4~0.5V程度の電圧降下が見られました。

USB側のPchMOSFETをダイオードに置き換えるなどの対策法も記載されていました。自分もUSBの電源ラインにダイオードを挿入して、USB側のFETを駆動させるTRのベースからダイオード前に抵抗を挿入してみました。


というわけで、裏のアクリルパネルにLiPoバッテリーを張り付けてすっきりと収まりました。

あとはスピーカーや、バーアンテナ内蔵などまた少しずつ進めていきたいと思います。

2018年1月23日火曜日

CentSDRキット製作しました(その2)

CentSDR製作の続きです。

前回3.3V電源部とVCTCXO装着を行いました。VCTCXOはメーカーがわからずデータシートを探せませんでしたが、4つのランドの中心からなるべくずれないようにしてランドの縁から少しずつハンダを流し込み、裏のパッドにハンダ付けします。一気に流し込むとランドからハンダがあふれて上蓋にショートしてしまいます。

ルーペでよく観察して問題なければ電源を入れて右上の出力端子にオシロスコープのプローブをあてて波形を観察します。


 26MHz,1Vp-p前後の矩形波が観察されればOKです。

次にSi5351AとSTM32F303CBT、CodecチップのTLV320AIC3204を装着します。


 パッケージの外にピンが出ているSi5351AとSTM32F303CBTについては、ピンピッチは狭いですがヘッドルーペをうまく使うとそれほど苦も無く装着することができます。装着方法はネット上でもしばしば見かけますが、私のやり方はランドがハンダレベラー処理されていればフラックスを多めにランドとデバイスのピンに塗り付け、デバイスのピンとランドの位置を合わせデバイスの上から片方の手の指で押さえて固定し、コテ先をピンの上にあてレベラーのハンダで装着していきます。レベラーのハンダが不足気味の場合は一旦すべてのピンを装着してから、追加のハンダをピンの一列ごとに盛りハンダ吸い取り線で余分なハンダを除去すると確実にきれいに装着することができます。最後にフラックス洗浄剤で余分なフラックスを除去してきれいにします。

 次はTI製のオーディオCodecチップTLV320AIC3204の装着です。このチップはVQFNというパッケージで表面実装XTALなどと同じようにピンは外に出ておらず、すべてデバイス底面のパッドになっていて側面にわずかに顔を出しているというものです。

VQFNパッケージの装着は初めてなのでCentSDRの組み立て資料に記された手順で装着しました。下準備としてチップのパッドすべてにハンダ揚げを行い一旦ハンダ吸い取り線できれいに拭き取ります。フラックス除去剤できれいにしてからボードの装着部位とデバイスのパッドにフラックスを塗りデバイスを装着部位に正確に合わせます。この時シルク印刷の白丸とマーカーをわせるわけですが、パッケージのマーカーがフラックスや除去剤の影響でわかりにくくなります。そこでまずデバイスをひっくり返して下の画像のようにデバイス底面中央の大きな四角いパッドの1角が欠けているのを確認します。


データシートを見ると、これがマーカーと一致するので欠けた角をPCBの白丸マーカーに合わせます。

四辺ずれがないように確認してデバイスを上から指などで押さえて固定し、わずかに見えるランドにコテ先をあててパッドと対応するランドをハンダ付けします。

ここでもレベラーのハンダ量が少なめの場合、ルーペでパッドとランドのずれがないことを確認してから1辺ずつ追加ハンダを盛ってハンダ吸い取り線で拭き取るという作戦を行います。再度ルーペでショートなどないかどうか確認します。


 基板の裏の穴からもハンダを流し込み装着完了です。

ここで、いよいよファームウエアをインストールする作業に入ります。

ファームウエアのソースコードはGitHubで公開されています。ただ自分の環境ではまだうまくビルドできないため、追加公開されたバイナリをダウンロードしNucleoに付属するST-LINK V2機能を利用してインストールしました。


 インストールした後は、確認のためまずSi5351Aの出力をオシロスコープで確認します。


 上に局発出力、下にシステムクロック8MHzが見えます。

そのほかCentSDRに接続したUSBケーブルを稼働中のPCにつなげるとシリアル通信ポートとして認識されます。

これで山を越えたので、あとは残りのパーツを一気に装着し改めて電源を入れます。


 というわけで無事完成です。

ヘッドホン出力にスピーカをつないでも音量は十分で、SSBも手持ちのTECSUNのラジオよりずっと安定して受信できます。

ついでに、VNシリーズのように透明アクリル板を上下に挟んでみました。


 これでひとまず完成ですが、USBコネクタ部分の改修とLiPoバッテリー充電回路の実装も必要なパーツが揃い次第予定しています。

 ファームウエアのビルドができるようになったらソフトウエアもいじってみたいと思います。

 というわけでまだ続く。

2018年1月9日火曜日

2018年になりました(遅


みなさま、あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

昨年暮れに発症したA型インフルエンザも落ち着きようやく体調が戻ったところで、まず最初の工作を。


モノは昨年暮れクリスマス直後にインドから届いたμBitXというHFマルチバンドなSSB/CWトランシーバキットです。

同じマルチバンドでもmcHFとは違ってオーソドックスな構成のトランシーバです・・・
といいつつダブルスーパーで第一IF周波数が45MHzのアップコンバージョン、第二IF周波数が12MHz、従来のBitXと同様双方向増幅回路を持つちょっと変わった構成です。

キットの内容はこんな感じです。


約15センチ四方のメイン基板と右はArduinoNanoを乗せたコントロール、発振部(Si5351A)、LCD表示器、配線材やボリウム、エンコーダ等々小物部品が詰まった小袋とシンプルです。基板はすでにコイル含めてすべて実装済みでケーシングと配線のみユーザが行うというスタイルです。

ハンダ付け大好き人間にとってはちょっと物足りない感じもしますが、コントロールのソフトウエアのコードがオープンなので組み立て後のソフトエア開発など十分楽しめそうです。

 といわけでまずはケース探しから。メイン基板が比較的大きめなので、ケースもやや大きいものが必要です。手持ちのケースを物色してみたら、ぴったり行きそうなケースを見つけました。


 プラスチックケースですがメイン基板がすっぽり入って丁度よさそうです。確かaitendoで売っていた計測器っぽいスタイルのケースで何とはなしに買ってそのままにしていました。

プラスチックなので、シールド用に内側を導電スプレーで塗装したほうがよさそうですがまだ実戦で使うわけではないのでとりあえずケーシングを施すことにしました。


 フロントパネルはこんな感じに。電源スイッチとマイクコネクタを新たに取り付けてより無線機らしくなった感じです(自画自賛)。

マイクも手持ちのTAKACHI製の小型プラケースを使って、マイクとPTTスイッチだけでなく、スピーカーとコントロール用ボタン2つ付けてみました。


スピーカーとマイクは高粘度の瞬間接着剤で固定しています。
このケースはふたを閉めるときにねじが不要なので使い勝手がとても良いです。

さらにステンレスメッシュをマイク前面に張り付けていかにもそれっぽさを演出してみました。


 最終的にこんな感じでまとまりました(まだちょっと配線が残っていますが)。


 7MHzのアンテナにつないで早速ワッチしてみました。バンド外でおそらく内部発振のスプリアスが所々で聞かれますが感度は十分でしょう。AGCがついていないので強力な信号が入ると音割れしますが、復調音など特に問題なさそうです。後ほど定量的にチェックしてみようと思います。

送信はダミーロードをつなげて市販のリグで聞いてみても変調は素直で、変な回り込みは見られず無調整でも結構よさそうです(ファイナルのアイドリング調整は改めて確認したほうが良いと思います)。 送信のほうもスプリアスなどのチェックを後日実施しようと思います。

ソフトウエア的にはよくできていますが、周波数ステップの可変部分が今一つ、EEPROMへの周波数データストックが未実装(スイッチを入れなおすとデフォルトの周波数に戻ってしまう)などなど気になる箇所がいくつか見られます。GitHubにコードが公開されているのでmodifyしてみようと考えています。

それにしても109USDという破格でこの内容は凄いです。しばらくいろいろと楽しめそうです。

というわけで、重ねて本年もよろしくお願いいたします~

2017年12月10日日曜日

QRP LabsのQCX(40m版)を組み立ててみました

WSPR QRP Transmitter "Ultimate 3S" でお世話になったQRP Labs から49USDという非常に安価なHFモノバンドQRP CW トランシーバ "QCX" の40m版を入手して組み立てました。

発売開始からオーダーが殺到したようで、支払いから1ヶ月近く待ちましたが発送の連絡が届いてからほどなくキットが到着しました。


予想よりもパッケージは非常に小さく、発送元を見ると東京からでした。Ultimateのときもそうでしたが、一旦キットをまとめて国内に輸送して頒布しているのでしょうか。とにかくこの小さなパッケージに詰められているのが驚きです。自分のVNシリーズも見習わなくては(笑)




箱を開けるとぷちぷち袋に入った部品がきっちり詰められており、全バンド共通の袋とバンド依存のパーツ(LPF)の袋が出てきます。この辺も合理的ですね。色々なキットを見ると勉強になります。


共通部分の袋を開けて部品を確認します。抵抗類は同じ値で数の多いものはテープでまとめてありますが、 そのほかは無造作に入っています。ICは導電スポンジやアルミ箔に丁寧に刺さっています。LCDの保護もされており概ね丁寧な梱包で安心です。


PCBのチェックです。表面実装のSi5351AとロジックICがすでに装着済みで、部品の半田付けはリードパーツのみになっています。ここまでしてよく49UDSで収まっているなーって感心しています。


 まず、抵抗のカラーコードを読んで値の確認作業と、コンデンサの仕分けです。すでに日本語マニュアルがサイトにアップロードされており、部品リストだけ印刷して値をチェックし、対応するパーツをセロハンテープでリストに貼り付けておきます。(一部間違いがあるので注意:マニュアルpart1 8ページ目上のC11,43-46の値が『470uF "483"』となっていますが、『470nF "474"』が正しいです)数がまとまっているものはテープに細いマーカーで値を書きます。この作業は面倒であまり面白くないのですが実は一番重要で時間もそれなりにかかります。これを怠ると間違ったパーツを知らない間に取り付けて最悪原因が分からない動作不良やパーツも壊しかねないわけです。

確認仕分け作業が済んだら、一息入れていよいよお楽しみの組み立てです。


マニュアルは英語原文のpdfファイルを開いてPC画面を見ながら進めていきます。印刷してもよいのですが、膨大なページ数になるので紙が勿体ないし画面見ながらの作業で充分です。

組み立ては同じ値のパーツ毎に1ページずつPCBの画像に該当するパーツが赤色で強調されているためシルク印刷の文字を探す手間なく効率よく半田付けできます。この辺のところとても分かりやすくて良いマニュアルだと思います。

端子やポテンショメータなどを取り付ける前にコイル巻きとPCBへの取り付けが順番になっていましたが、コイル巻きが億劫なので先に取り付けました^^;

 でもって次はいよいよコイルを巻きです。5個のコイルを巻くわけですが各巻き数に対して必要な線材の長さがわからないので、toroids.infoサイトにあるパラメータ自動計算表で必要な長さを割り出して下の画像のようにメモ用紙に各コイルの巻き数と線材の長さを書いておきます。そうするとUEWも足りなくなったりせずスムーズです。


 このコイル巻きでちょっと大変なのがT1です。1つのコアに4個のコイルを巻くのですが、上の画像のように1本の線で連続して巻きます。各巻き数に到達する毎にタップをつけるような感じに伸ばしておくと良いでしょう。



 巻き終わったらタップの中央を切断して独立させコアに近いところで各線をハンダ揚げしておきます。マニュアルの方法とは違いますが、各線を1cm程度に短く揃えてPCBの穴の位置にあわせるように加工しておきます。その上でPCBの穴にピンセットなどで誘導しながら慎重にすべての線を入れます。間違いがなければ線を半田付けします。

 あと注意点はLCDのピンヘッダ部分とLCDの取り付けようスペーサについてです。



ピンヘッダ自体はそのまま取り付けて問題ありません。ちょうど中央の2ピンを切り取ってテストポイントにするように説明されていますが、手持ちのピンがあるのでLCDのピンヘッダはそのままつけました。それで、LCDを固定するための4隅の穴にスペーサをネジ止めします。マニュアルには左の470μFケミコンを横倒しで取り付けるよう指示されています。 気がつかずそのまま立てて取り付けるとスペーサーの高さが足りなくてLCDの裏側が干渉してしまいます。
 そのため、スペーサの根元にスプリングワッシャを挿み高さを少し上げることによってギリギリ取り付けできました。ただし、LCDのパターンにケミコンの頭が接触するのでLCDの裏にセロハンテープを貼って一応絶縁としました。

というわけで完成です。



 電源を入れると、最初バックライトが点灯しますが表示が見えない場合が多いです。焦らず表示が出るところまで左上の半固定抵抗をゆっくり回します。そうするとLCDにはバンド選択表示が出てくるので、エンコーダを回して40mにあわせます。

 アンテナをつなげる前にマニュアルの調整方法を見て調整を行いますが、調整は別途測定器などを必要とせず、LCDのバーメータを見ながら進められるということろもよく考えられれているなぁと感心しました。

まず同調回路の調整で、メニュー項目を8.7 Peak BPFに合わせて左ボタンを押し、BNC-J下のトリマコンデンサを回してLCDの右上数字とバーメーターが最大になるように回します。

ここでトリマコンデンサのローターの位置によってT1のSecondary3の巻き数を増減するように書かれています。自分のセットではローターが抜けた状態で最大だったので、巻き数を減らしました。一度半田付けしたので半田吸い取り線で半田除去をおこない巻き数を3回減らし(マニュアルでは5回と記されていましたが今度足りなくなるのを心配して少なくしました)、再調整してピークが得られたのでこれで良しとしました。

そのあとは受信部のPSN調整です。これはオペアンプのAF PSNの振幅バランスと、中心周波数前後(これもソフトで調整可能)の位相バランスを調整します。今度はLCDの数字とバーメータが最小になるように各々のポテンショメータを回して調整します。この調整は何回か繰り返して突き詰めたほうが良さそうです。また、中心周波数を変更するとI/Q調整も取り直しが必要です。




あとは周波数誤差修正などもありますが、基本的にはこれだけで調整終了です。

アンテナをつけてみると、


ノイズも少なめですが、信号がよく入ってきます。簡易SGで測定すると-120dBm程度まではよく聞こえており感度も申し分ありません。逆サイドバンドも信号が強すぎなければほとんど耳では聞こえず、良く抑制されていると思います。

送信はE級増幅ということで、調整なく出力が確認できます。


 13.8Vで約4W前後といったところでしょうか。別の無線機でモニタしても、キーイングは適度にソフトでキークリックは皆無でした。

 そして気になるスプリアスをおなじみのAPB-3スペアナで測定しました。


 アッテネータで60dB減衰させてAPB-3のINPUTに入力しました。


 高調波スプリアスを観察すると、2次高調波は-49dBとケース無しでも充分減衰しています。適切な金属ケースに組み込めば追加フィルター無しでも-50dBc達成できるかもしれません。


これは、許容占有帯域近傍の不要輻射を観察しています。細かい小さな山は電源由来のノイズが重畳したものと考えられます。基本波の±700Hz、±2100Hzの山はサイドトーン信号が重畳したものですが、いずれも基本波よりずっと小さいので問題なさそうです。

基本はダイレクトコンバージョン受信機でありながら実用的な感度と逆サイドバンド抑制、送信では効率の良い終段回路、少ない不要輻射とソフトキーイングなど基本をしっかり押さえながら多機能な内容でこの値段というのはすごいなとまた感心しています。

ただ個人的にはAGCをつけて欲しかったかなーと思います。それと、Sメーターの感度がAFゲイン調整と連動しているのがちょっと不思議でした。

あと、綺麗にケースに収めようと考えている場合には、AFゲインのボリウムとロータリーエンコーダ、タクトスイッチ、ジャック類はPCBに直接取り付けずパネル取り付けでリード線を使ってPCBに半田付けしたほうが良いです。そのためのランドがPCBに用意されています。

低価格ながら至れり尽くせりなキット、みなさんもいかがですか?