2017年2月24日金曜日

Si5351A周波数設定関数の改良

ポケットサイズ7MHzQRP CWトランシーバ VN-4002のベータ版(人柱版)は7名の方が現在製作中です。小さいサイズなのでやはりいろいろと難しいらしく悪戦苦闘しておられます。改良要する点などいくつか出てきており大変助かります。

JF1DIRさんがVN-4002人柱版の組み立て過程をライブ配信と動画で公開されています。ご興味ある方はぜひご覧になってください。JF1DIRさんのYouTubeチャンネルはこちらです。

部品装着が問題なければ再現性は高いと思うので、皆さんがんばって完成させてください。

ところでこのトランシーバですが、派生版の構想があります。他のバンド(30m, 20m,17mや6mに160m,2200mも)版やSSB版など、いろいろと拡がりそうでとても面白いと思っています。30mから17mあたりは受信フロントエンドの同調回路とLPF、フライホイール定数の変更で対応できそうですが、6mや2200mは発振周波数の拡張が必要であることと、160m,2200mはコイルのインダクタンスが高いため小型化が難しく別途基板を起こす必要がありそうです。

まずは広いバンドに対応させるべくSi5351Aの設定周波数を拡げるためにプログラムの改良を行いました。

おさらいとして過去のブログ記事から改良前の周波数設定アルゴリズムを。

I.Si5351Aの周波数設定式

1.VCO周波数設定(PLLA, PLLB)

 fvco = fXTAL x (a + b / c)
    a...15~90, b...0~1048575, c...1~1048575, fXTAL = 25MHz or 27MHz

 fvco = 375MHz~900MHz

2.VCO分周設定(MultiSynth0,1,2,...)

 fout = fvco / (d + e / f)
    d...4~900, e...0~1048575, f...1~1048575

II.出力周波数と各パラメータの関係表 


a(16~32(36))cd
16~36MHzF100000025
8~16MHz2F50000050
4~8MHz4F250000100
2~4MHz8F125000200
1~2MHz16F62500400
(FはMHzオーダーの値)

この関係表の周波数を上と下方向に拡張すればよいのですが、各パラメータの制限にかかるのでひと工夫が必要になります。

 まず上方向から。

36MHz以上の場合、パラメータaは0.5F, cは2000000, dが12.5となりますが、cは最大値を超えるのとdが整数でなくなるためそのまま適用できません。(eとfを使えば12.5分周可能ですが、fractional分周になるため出力信号にジッタが増える恐れが出てきます)

最小10Hzステップになることに目を瞑れば、dの整数が保てる範囲内でdを10分の1にすることで160(180)MHzまで出力周波数を伸ばすことが可能になります。

今度は下方向。

0.5MHzから1MHzの場合、aが32F, cが31250, dは800となりますが、1MHz以下のためa値が条件を満たさなくなってしまいます。

そこで、もうひとつ出力直前に設けてある後分周設定を適用します。
Rxにおいて信号が全体的に分周されるので、プログラムでは入力された周波数値を分周分だけ最初に乗算してから計算するようにすればOKです。

最終的に改良後の出力周波数と各パラメータ関係表は次のとおりになります。


a(16~32(36)) c d R
80~180MHz 2F 500000 5 0
40~80MHz 4F 250000 10 0
36~40MHz 8F 125000 20 0
16~36MHz F 1000000 25 0
8~16MHz 2F 500000 50 0
4~8MHz 4F 250000 100 0
2~4MHz 8F 125000 200 0
1~2MHz 16F 62500 400 0
0.5~1MHz 16F 62500 400 2
0.25~0.5MHz 16F 62500 400 4
0.125~0.25MHz 16F 62500 400 8
62.5~125kHz 16F 62500 400 16
31.25~62.5kHz 16F 62500 400 32
15.625~31.25kHz 16F 62500 400 64
8~15.625kHz 16F 62500 400 128

色付き部分の関係を満たすようにプログラム追加修正分を書き込んでテストしました。

まずは136kHz帯。 


オシロスコープ画面の左下の周波数表示を確認してください。このくらいの低い周波数では矩形波がピシッとしていて綺麗ですね。

つぎにプログラムを入れ替え50MHz帯を。


測定しているオシロスコープの帯域は100MHzなので、矩形波は波形がなまって表示されています。しかし設定した周波数で出力されています。

というわけで、派生版への第一歩がひとまず完了です。

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