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2018年5月19日土曜日

VNシリーズの受信部ミクサーと検波回路変更実験とデイトンでの新製品発表

小型QRP CWトランシーバのVNシリーズの受信部のミクサーと検波回路にはダイオード構成の小型DBMモジュール(ミニサーキット社のADE-1+)を使っていますが、信号ラインをDBMに合わせるためいったん50Ωに変換するトランスが必要になります。このトランシーバでは3つインピーダンス変換トランスを使いインピーダンスマッチさせています。

出来合いのインピーダンス変換トランスはあるにはあるのですが、結構高価(ミニサーキット社製のはDBMと同じくらいの値段するので3つも使うとコストが^^;)なので小さいメガネコアに細いUEWを巻いて自作しています。実装してみるとうまく動作しており、自作にしては実用的なレベルと自画自賛していますが、いかんせん巻かなければいけないコイルが多くてどうしたものかと考えておりました。

そこでバラモジ用のICを使えばインピーダンス変換トランスを省略でき変換ロスも少なくなると思い、人柱版のRF基板上のDBMと換装を試みました。

バラモジ用のICで現在入手可能なものはSA612、MC1496、NJM2594あたりになるでしょうか。このなかで、5V以下の動作が可能、外付け部品が少ない、コストが安い、という条件を満たすのはNJM2594ということになりました。

早速秋月でNJM2594とDIP変換基板を購入してRF基板の1stミクサーと検波用のDBMとトランスを除去しDIP化したNJM2594を配線し装着しました。


プリアンプと2段目IFアンプのドレインにチップインダクタを介して電源供給とし、0.01μF程度のカップリングコンデンサで各ポートと接続しています。

実際受信してみると換装後DBMのロス分感度が上がった印象ですが、オリジナルとSGを使って比較する限りS/N自体は変わらないようです。

また7MHz帯ではすぐ上に中国大陸からの放送局の強力な信号が夜間見られます。この放送の通り抜け現象が以前人柱版で報告されており、近くの強信号に対する各ステージの信号の状況をABP-3を使ってオリジナルとNJM2594換装モデルを比較してみました。
受信部ブロックダイアグラムと測定ポイント
ちゃんとしたプローブではないのであくまでも簡易的に・・・
 ABP-3はスペアナ、ネットアナ機能だけではなく独立したSGとしての機能を持っています。下の画像のようにいくつかの機能を起動させてPC上に結果を同時に表示させる事が出来ます。さすがに同時計測はできませんが、結果を比較するには便利です。


左上はSGの設定画面です。出力は0dB(-14.3dBm)から-70dBまで、発振周波数は50MHz1Hz単位まで、AM、FM変調など必要十分な機能を備えています。
他はスペアナ画面でそれぞれ独立して設定を変更する事が出来ます。ただし同時測定はできません。

SGの出力周波数を7.4MHzに設定し、出力レベルを変化させながらオリジナルDBMとNJM2594換装後のモデルとで各々測定ポイントで観察しました。

全部提示すると長くなるので、SG出力が-44dbmと-14dBmの場合の結果を。

まずダイオードDBM ADE-1+の場合。

ADE-1+入力レベル-44dBm
ADE-1+ 入力レベル-14dBm
-44dBmはSメーターでいうところのS9+30dBでまあ比較的強力な信号というところですが、検波入力まで周辺に余計な信号は見られません。
一方-14dBmの場合(S9+60dBと非常に強力な信号に相当) 、局発信号と入力信号との相互変調波が出現しています。AGCをはずしていないので正確ではありませんがおそらくミクサーには0dBm以上入力されていると見られます。
それでも周波数変換後クリスタルフィルター通過しIF増幅後の検波前では不要な周辺信号はカットされています。

次にNJM2594ミクサーの結果です。

NJM2594 入力レベル-44dBm
NJM2594 入力レベル-14dBm
ADE-1+よりもやや相互変調波による不要信号が目立ちますが、検波前ではカットされています。

配線の兼ね合いでちゃんと実装すればもう少し良い結果になると思いますが、トランスレス化したICミクサーでも問題はなさそうです。

次に強力な大陸からの放送の通り抜けレベルについて実験検証してみます。

スペアナの測定範囲を広げて(0-50MHzフルスパン)検波前に目的周波数周辺の強力な入力信号がどのレベルまで通過しているのか調べてみました。

ADE-1+ 入力-14dBm
NJM2594入力-14dBm
右上は検波手前を測定したスペアナ表示です。ADE-1+、NJM2594いずれも信号周波数7.4MHzで約-60dB(スペアナ入力に20dBのアッテネータを挿入して測定、実際は-40dBm程度と思われる)の柱が観測されています。(そのほかの柱は主にBFO信号とその高調波)

VNシリーズのIFアンプは非同調であるため、これだけのレベルの信号が通り抜けの原因とすると検波入力手前に何かフィルタ(トラップでもLPFでも)を置いて低減させるともしかしたら効果があるのかもしれません。これは今後の課題のひとつです。

あとはコイル巻きのわずらわしさの軽減を取るか、消費電流増加を抑えるのを取るか、というところですが・・・

NJM2594を2つ使うと消費電流は実測20mA以上増えてしまいます。Si5351Aの出力レベルを半分に落としたとしても15mA以上は増えています。

もともとQRP機として消費電流を抑えるとするならばどちらを取るかとても悩ましいです。消費電流だけを考えるなら素直にSA612を2つ使いIFアンプを削除すればよいのですが、入力飽和の問題やら、また回路構成が海外のQRP機と同じになってしまうのはなんというかやはり面白くありません(笑)

まぁしばらく悩んでおきましょうか。

閑話休題。

そういえば、米国のDayton HamventionでYaesuとKenwoodからHF/50MHz(+70MHz)の据え置き型無線機が発表されましたね。

FTDX101DとTS-890S・・・どちらが良いとかはおいておいて、なんかデザイン的に遠めで見ると同じように見えてしまうのは私だけでしょうか。メインダイヤルは右寄り、LCDディスプレイは左端に。しかも色が黒系統。

アナログ時代の全盛期にはメインダイヤルの上に周波数表示を置いていましたが、筐体が横長なので大きなLCDでは左に置かざるを得ないといったところなのでしょうか。

無線機だけでなく測定器系も、たとえばブラウン管のオシロスコープは表示が上になった縦長のデザインが多かったように思いましたが、今時のLCDタイプは表示がすべて左端に置かれた横長タイプですね。

それを考えると、mcHF V0.7のデザインは挑戦的ですね。一応横長ではありますが正方形に近い横長でLCDディスプレイは上に配置されています。

FBにmcHF V0.7に関する投稿をしたときに、どっかの外人が『このデザインは無線機らしくない。前バージョンの復活を待ってる』というようなコメントを残しておりましたが、既成の無線機のデザインに慣れると違和感があるのでしょうか。

無線機の外観デザインもネタとして面白そうです。一度勝手に検証でもしてみようかなと思ってしまいました。

2018年4月30日月曜日

VNシリーズでALL JAちょっぴり参加

4/28-29に第60回ALL JAコンテストが開催されました。

コンテストにはあまり参加しないほうなのですが、今回VNシリーズのコンテスト実践テストということでVN-4002(7MHz)と、VN-2002(14MHz)でちょっとだけ出てみました。

※注 あくまでもイメージ画像です
自宅から運用しましたが、13.8V電源で出力3W強、アンテナは7MHzはセンターローディングのモービルホイップ、14MHzはRadix社製の短縮V型DPを給電部地上高約10mで28日夜と29日午前中に7MHz、夕方14MHz各々1、2時間程度呼びまわっていました。

夜の7MHzは、国内遠距離が開けていて5,6(47県含めて),8エリアとQSOできました。翌日午前中は中距離の局とQSOできましたが、近距離は呼べど応答なくなかなか難しかったです。夕方は14MHzに出没し西方面が主に開けていて数局QSOし、結局トータル29局QSOできました。当日は3.5MHzのコンディションが良かったようで、自作機が投入できずちょっと残念でした。しかし短時間でしたがQRPでも結構拾っていただけたので満足です。弱い信号取っていただいた各局ありがとうございました。

閑話休題。

QRPですから通常のコンテストでは相手の信号が強力であっても、呼んで必ずしも取ってもらえるとは限りません。またたいていは呼び負けること、AGN? NR?も多いので根気よく丁寧に送信することと心得ておかないとすぐにQRPってつまんないや、になってしまいます。

QRPの最大の利点とはなにより省電力であること、それに伴う必要装備の簡易軽量化に尽きると思います。移動運用することを想定すると、運用モードをCWに絞ればリグもMountain Topper Radioなど省電力な無線機(もちろんVNシリーズも)で。電源は大型のバッテリーや発電機は要らず、リチウムイオンバッテリーなら予備を持っていけば安心して長時間運用も可能。アンテナは移動用のマルチバンドDPやギボシDP、ローバンド用のバーチカルアンテナ用にたたむと70センチ弱のグラスファイバーポールを使えばシステムすべてをリュックサックなどにまとめることが可能です。

そんなわけで、折角暖かくなってきたのでどこかにQRPで移動運用に出かけてみたいと思う今日この頃です。

2018年1月9日火曜日

2018年になりました(遅


みなさま、あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

昨年暮れに発症したA型インフルエンザも落ち着きようやく体調が戻ったところで、まず最初の工作を。


モノは昨年暮れクリスマス直後にインドから届いたμBitXというHFマルチバンドなSSB/CWトランシーバキットです。

同じマルチバンドでもmcHFとは違ってオーソドックスな構成のトランシーバです・・・
といいつつダブルスーパーで第一IF周波数が45MHzのアップコンバージョン、第二IF周波数が12MHz、従来のBitXと同様双方向増幅回路を持つちょっと変わった構成です。

キットの内容はこんな感じです。


約15センチ四方のメイン基板と右はArduinoNanoを乗せたコントロール、発振部(Si5351A)、LCD表示器、配線材やボリウム、エンコーダ等々小物部品が詰まった小袋とシンプルです。基板はすでにコイル含めてすべて実装済みでケーシングと配線のみユーザが行うというスタイルです。

ハンダ付け大好き人間にとってはちょっと物足りない感じもしますが、コントロールのソフトウエアのコードがオープンなので組み立て後のソフトエア開発など十分楽しめそうです。

 といわけでまずはケース探しから。メイン基板が比較的大きめなので、ケースもやや大きいものが必要です。手持ちのケースを物色してみたら、ぴったり行きそうなケースを見つけました。


 プラスチックケースですがメイン基板がすっぽり入って丁度よさそうです。確かaitendoで売っていた計測器っぽいスタイルのケースで何とはなしに買ってそのままにしていました。

プラスチックなので、シールド用に内側を導電スプレーで塗装したほうがよさそうですがまだ実戦で使うわけではないのでとりあえずケーシングを施すことにしました。


 フロントパネルはこんな感じに。電源スイッチとマイクコネクタを新たに取り付けてより無線機らしくなった感じです(自画自賛)。

マイクも手持ちのTAKACHI製の小型プラケースを使って、マイクとPTTスイッチだけでなく、スピーカーとコントロール用ボタン2つ付けてみました。


スピーカーとマイクは高粘度の瞬間接着剤で固定しています。
このケースはふたを閉めるときにねじが不要なので使い勝手がとても良いです。

さらにステンレスメッシュをマイク前面に張り付けていかにもそれっぽさを演出してみました。


 最終的にこんな感じでまとまりました(まだちょっと配線が残っていますが)。


 7MHzのアンテナにつないで早速ワッチしてみました。バンド外でおそらく内部発振のスプリアスが所々で聞かれますが感度は十分でしょう。AGCがついていないので強力な信号が入ると音割れしますが、復調音など特に問題なさそうです。後ほど定量的にチェックしてみようと思います。

送信はダミーロードをつなげて市販のリグで聞いてみても変調は素直で、変な回り込みは見られず無調整でも結構よさそうです(ファイナルのアイドリング調整は改めて確認したほうが良いと思います)。 送信のほうもスプリアスなどのチェックを後日実施しようと思います。

ソフトウエア的にはよくできていますが、周波数ステップの可変部分が今一つ、EEPROMへの周波数データストックが未実装(スイッチを入れなおすとデフォルトの周波数に戻ってしまう)などなど気になる箇所がいくつか見られます。GitHubにコードが公開されているのでmodifyしてみようと考えています。

それにしても109USDという破格でこの内容は凄いです。しばらくいろいろと楽しめそうです。

というわけで、重ねて本年もよろしくお願いいたします~

2017年12月30日土曜日

今年の締めくくり前に

今年2017年ももうあと1日とわずか。例年のごとく大晦日などいろいろと予定を控えていたのにも関わらず、事もあろうにA型インフルエンザに罹患してしまいました。

11月中旬に予防接種は受けていましたが、今回は予防できなかったようです。吸入タイプの抗ウイルス薬を吸入して何とか翌日には解熱傾向になりましたが、やはり普通の風邪とは違ってかなり身体に堪えますね・・・

それはともかく、大晦日までは自宅療養なので年末の支度しつつなにか工作納めでもしようかと考えていました。

病み上がりなのであまりキツイ(たとえばmcHFのComponent kitとか)のはやめておいて、VN-4002用のアルミケースへの組み込みをやってみました。

アルミケースといっても、既成のものでピッタリ来るケースはありません。

過去にも・・・


こんなケース試作してはみましたが、手間かかる割にはいまいちでした^^;

そんな中、JK1QJS 竹本OMのブログにVN-4002用の自作ケースの記事を見つけました。

記事によるとアルミ曲げ機などでアルミ生板を加工して、その後業者でアルマイト処理してもらったケースパーツで綺麗に組まれていました。アクリル板でシースルーの本機が綺麗に赤くアルマイト加工されたケースに包まれるとまるで別の無線機だと感心しました。しばらくしてOMからご連絡いただき、なんと余剰分のパーツを譲っていただけるということで喜んで譲っていただくことにしました。

注:通常頒布されているわけではないので、竹本OMへ直接問い合わせなどの行為は謹んでお控えください。よろしくお願いいたします

 ちょうどVNシリーズの2ndBatch頒布や不具合調査改善など諸々あって手をつけておりませんでしたが、先日の流感でちょっと時間も空いたので今回譲っていただいたケースを装着してみました。


ひとつひとつ丁寧に袋分けされています。おかげでアルマイト加工面には傷ひとつありません


 パネルは4つ、両サイドと上下で構成され、サイドはBNCコネクタ、VRのネジで固定されます。上のパネルは四隅の既存の取り付け穴に合いますが、スペーサーを1mmほど長いものへの交換が必要になります。このスペーサも同梱されています。下のパネルはサイドパネルから伸びる部分でタッピングビスで固定されます。上のも同様です。

取り替え対象は初回頒布版第1号機としました。


 まず、パネルにはICSPピンヘッダ用の穴がないので本体基板からピンヘッダを除去します。ピンヘッダなど多足のスルーホールパーツを外すのはいささか厄介な部類に入ります。ここで全ピンのハンダを同時に溶かそうと余計な熱を加えてしまうとパターン剥がれなど悲しいことが起きてしまうので、ピンヘッダのプラスチック部分をラジオペンチなどで外し1本1本基板から抜いていけば基板へのダメージも少なく済みます。あとはハンダ拭き取り線などで余分なハンダを除去してフラックス除去剤で拭き取れば綺麗に復帰します。


 次に細かいことですが、VRの本体が基板に接するところに回転止めの爪がちょこっと飛び出しています。一見大したことなさそうに見えますがパネルを当ててVRに付属するネジで締めていくと爪の部分で盛り上がってしまいます。パネルに回転止め用の穴を新たに開ければいいかもしれませんが、せっかくアルマイト加工されているので新たに穴を開けるのはいささか無粋です。なので爪の部分を小さいニッパや鑢で平らにしておきます。

下準備ができたところでいよいよ取り付けに入ります。最初はフロント部の四隅のスペーサーを長いものに換装、それからフロントパネルをネジ止めしてから両サイドのパネルを装着、 底面パネルをあわせてタッピングビスで留めるのですが、ここでひとつ問題が。

フロントパネルのタクトスイッチの穴の位置が本機のタクトスイッチの位置と一部ずれていたようで、パネルを装着するとタクトスイッチが動きません。ここもやはりパネルの穴を拡げたりせず、本機のタクトスイッチの装着位置をハンダゴテを使って若干ずらすことによってうまく位置合わせすることができました。他LCDやサイドパネルの穴の位置はピッタリでした。


 というわけで小型スピーカーも内蔵しめでたく装着完成です。


 このパネルセットにはテプラで印字されたステッカーまで同梱されていました。ステッカーを貼ると引き締まってかなりFBですね。底面にはキットにも付属している透明のプラスチック製の足を貼り付けて擦り傷を避けるようにしてみました。

電源入れてワッチしながら投稿原稿打ち込んでいますが、いいものですね。ここまでのパネルをキットとして用意できるかどうか難しいところですが(加工からアルマイト処理、シルク印刷となるとコストがかなりかかってしまうかもしれません)、いままでのアクリル板サンドイッチ法+α的な実用ケースを考えてみるのもありなのかなと思いました。

最後に内蔵小型スピーカーについて、私も過去ケースを試作したときに小型の薄型スピーカーを内蔵させ鳴らした印象と同様に音が出にくいというか音圧不足です。構造上ケースの隙間やパネルの逆振動による打消し現象が見られます。ケースの振動を抑さえかつ隙間を小さくするようにスピーカーの両サイドのケースの縁を指で圧迫することで素直に音が出るようになります。

これはひとつの課題ですが、スマホ用のスピーカーシステムを導入できないだろうかと考えています。あれだけ小型で薄いのに結構いい音出るんですよね。

どなたか良い知恵がありましたらぜひ教えてください!

というわけで改めてJK1QJS 竹本OMありがとうございました。

再注:このケースは頒布されているわけではないので、竹本OMへの頒布に関する直接問い合わせなどの行為は謹んでお控えください。よろしくお願いいたします

2017年12月10日日曜日

QRP LabsのQCX(40m版)を組み立ててみました

WSPR QRP Transmitter "Ultimate 3S" でお世話になったQRP Labs から49USDという非常に安価なHFモノバンドQRP CW トランシーバ "QCX" の40m版を入手して組み立てました。

発売開始からオーダーが殺到したようで、支払いから1ヶ月近く待ちましたが発送の連絡が届いてからほどなくキットが到着しました。


予想よりもパッケージは非常に小さく、発送元を見ると東京からでした。Ultimateのときもそうでしたが、一旦キットをまとめて国内に輸送して頒布しているのでしょうか。とにかくこの小さなパッケージに詰められているのが驚きです。自分のVNシリーズも見習わなくては(笑)




箱を開けるとぷちぷち袋に入った部品がきっちり詰められており、全バンド共通の袋とバンド依存のパーツ(LPF)の袋が出てきます。この辺も合理的ですね。色々なキットを見ると勉強になります。


共通部分の袋を開けて部品を確認します。抵抗類は同じ値で数の多いものはテープでまとめてありますが、 そのほかは無造作に入っています。ICは導電スポンジやアルミ箔に丁寧に刺さっています。LCDの保護もされており概ね丁寧な梱包で安心です。


PCBのチェックです。表面実装のSi5351AとロジックICがすでに装着済みで、部品の半田付けはリードパーツのみになっています。ここまでしてよく49UDSで収まっているなーって感心しています。


 まず、抵抗のカラーコードを読んで値の確認作業と、コンデンサの仕分けです。すでに日本語マニュアルがサイトにアップロードされており、部品リストだけ印刷して値をチェックし、対応するパーツをセロハンテープでリストに貼り付けておきます。(一部間違いがあるので注意:マニュアルpart1 8ページ目上のC11,43-46の値が『470uF "483"』となっていますが、『470nF "474"』が正しいです)数がまとまっているものはテープに細いマーカーで値を書きます。この作業は面倒であまり面白くないのですが実は一番重要で時間もそれなりにかかります。これを怠ると間違ったパーツを知らない間に取り付けて最悪原因が分からない動作不良やパーツも壊しかねないわけです。

確認仕分け作業が済んだら、一息入れていよいよお楽しみの組み立てです。


マニュアルは英語原文のpdfファイルを開いてPC画面を見ながら進めていきます。印刷してもよいのですが、膨大なページ数になるので紙が勿体ないし画面見ながらの作業で充分です。

組み立ては同じ値のパーツ毎に1ページずつPCBの画像に該当するパーツが赤色で強調されているためシルク印刷の文字を探す手間なく効率よく半田付けできます。この辺のところとても分かりやすくて良いマニュアルだと思います。

端子やポテンショメータなどを取り付ける前にコイル巻きとPCBへの取り付けが順番になっていましたが、コイル巻きが億劫なので先に取り付けました^^;

 でもって次はいよいよコイルを巻きです。5個のコイルを巻くわけですが各巻き数に対して必要な線材の長さがわからないので、toroids.infoサイトにあるパラメータ自動計算表で必要な長さを割り出して下の画像のようにメモ用紙に各コイルの巻き数と線材の長さを書いておきます。そうするとUEWも足りなくなったりせずスムーズです。


 このコイル巻きでちょっと大変なのがT1です。1つのコアに4個のコイルを巻くのですが、上の画像のように1本の線で連続して巻きます。各巻き数に到達する毎にタップをつけるような感じに伸ばしておくと良いでしょう。



 巻き終わったらタップの中央を切断して独立させコアに近いところで各線をハンダ揚げしておきます。マニュアルの方法とは違いますが、各線を1cm程度に短く揃えてPCBの穴の位置にあわせるように加工しておきます。その上でPCBの穴にピンセットなどで誘導しながら慎重にすべての線を入れます。間違いがなければ線を半田付けします。

 あと注意点はLCDのピンヘッダ部分とLCDの取り付けようスペーサについてです。



ピンヘッダ自体はそのまま取り付けて問題ありません。ちょうど中央の2ピンを切り取ってテストポイントにするように説明されていますが、手持ちのピンがあるのでLCDのピンヘッダはそのままつけました。それで、LCDを固定するための4隅の穴にスペーサをネジ止めします。マニュアルには左の470μFケミコンを横倒しで取り付けるよう指示されています。 気がつかずそのまま立てて取り付けるとスペーサーの高さが足りなくてLCDの裏側が干渉してしまいます。
 そのため、スペーサの根元にスプリングワッシャを挿み高さを少し上げることによってギリギリ取り付けできました。ただし、LCDのパターンにケミコンの頭が接触するのでLCDの裏にセロハンテープを貼って一応絶縁としました。

というわけで完成です。



 電源を入れると、最初バックライトが点灯しますが表示が見えない場合が多いです。焦らず表示が出るところまで左上の半固定抵抗をゆっくり回します。そうするとLCDにはバンド選択表示が出てくるので、エンコーダを回して40mにあわせます。

 アンテナをつなげる前にマニュアルの調整方法を見て調整を行いますが、調整は別途測定器などを必要とせず、LCDのバーメータを見ながら進められるということろもよく考えられれているなぁと感心しました。

まず同調回路の調整で、メニュー項目を8.7 Peak BPFに合わせて左ボタンを押し、BNC-J下のトリマコンデンサを回してLCDの右上数字とバーメーターが最大になるように回します。

ここでトリマコンデンサのローターの位置によってT1のSecondary3の巻き数を増減するように書かれています。自分のセットではローターが抜けた状態で最大だったので、巻き数を減らしました。一度半田付けしたので半田吸い取り線で半田除去をおこない巻き数を3回減らし(マニュアルでは5回と記されていましたが今度足りなくなるのを心配して少なくしました)、再調整してピークが得られたのでこれで良しとしました。

そのあとは受信部のPSN調整です。これはオペアンプのAF PSNの振幅バランスと、中心周波数前後(これもソフトで調整可能)の位相バランスを調整します。今度はLCDの数字とバーメータが最小になるように各々のポテンショメータを回して調整します。この調整は何回か繰り返して突き詰めたほうが良さそうです。また、中心周波数を変更するとI/Q調整も取り直しが必要です。




あとは周波数誤差修正などもありますが、基本的にはこれだけで調整終了です。

アンテナをつけてみると、


ノイズも少なめですが、信号がよく入ってきます。簡易SGで測定すると-120dBm程度まではよく聞こえており感度も申し分ありません。逆サイドバンドも信号が強すぎなければほとんど耳では聞こえず、良く抑制されていると思います。

送信はE級増幅ということで、調整なく出力が確認できます。


 13.8Vで約4W前後といったところでしょうか。別の無線機でモニタしても、キーイングは適度にソフトでキークリックは皆無でした。

 そして気になるスプリアスをおなじみのAPB-3スペアナで測定しました。


 アッテネータで60dB減衰させてAPB-3のINPUTに入力しました。


 高調波スプリアスを観察すると、2次高調波は-49dBとケース無しでも充分減衰しています。適切な金属ケースに組み込めば追加フィルター無しでも-50dBc達成できるかもしれません。


これは、許容占有帯域近傍の不要輻射を観察しています。細かい小さな山は電源由来のノイズが重畳したものと考えられます。基本波の±700Hz、±2100Hzの山はサイドトーン信号が重畳したものですが、いずれも基本波よりずっと小さいので問題なさそうです。

基本はダイレクトコンバージョン受信機でありながら実用的な感度と逆サイドバンド抑制、送信では効率の良い終段回路、少ない不要輻射とソフトキーイングなど基本をしっかり押さえながら多機能な内容でこの値段というのはすごいなとまた感心しています。

ただ個人的にはAGCをつけて欲しかったかなーと思います。それと、Sメーターの感度がAFゲイン調整と連動しているのがちょっと不思議でした。

あと、綺麗にケースに収めようと考えている場合には、AFゲインのボリウムとロータリーエンコーダ、タクトスイッチ、ジャック類はPCBに直接取り付けずパネル取り付けでリード線を使ってPCBに半田付けしたほうが良いです。そのためのランドがPCBに用意されています。

低価格ながら至れり尽くせりなキット、みなさんもいかがですか?