片側MOSFETのランダム破壊問題はプログラムの修正で解決、ゲート駆動電圧をもとの5Vに戻し13.8V電源でも問題なく動作するようになりました。しかしまだ不安要素が残っていました。
それは送信中に、信号入力が何らかの理由で途絶えた場合片方のゲートがONのままになってMOSFETをこわしてしまう、ということです。回路では片方にインバータを通すので、信号入力がLOレベルの場合ドライブ出力はHIになります。そこで、間にNANDをはさみキーイング信号で制御することにより常時ドライブレベルがHIになるのを防いでいるのですが、キーイング中に送信信号入力が途絶える(たとえば、発信元のSi5351aが何かの拍子で突然壊れるとか)とインバータを通した側のドライブ出力はHIのままとなってその側のMOSFETを道連れにしてしまいます。
対応策としては、Si5351a出力を常時監視して必要なときに信号が途絶えた場合キーイング信号をカットする、とか電流監視によるMOSFETへの電源供給カットなどが考えられますが、いかんせん複雑になる割には確実とはいえません。
いろいろ考えた結果たどり着いたのはトランスを使う方法でした。
MOSFETのスイッチングドライブとして絶縁トランスによるゲートドライブ法はとくに珍しいものではありませんが、利点はドライブ側とMOSFET側の絶縁のほかにプッシュプル構成でもドライブ信号入力が停止した場合、両方のゲートがオフになるということです。これなら余計な制御信号に頼る必要がなく信頼性も上がります。
で、そのトランスをどこに置くかということですが、既存の回路に組み込むとするなら、1.ロジック回路の前、Si5351a出力直後、2.MOSFETのゲート直前、3.ロジック回路の途中、これら3パターンが考えられます。
実験した結果、1.はSi5351aの出力電流が小さいためトランスを通した後電圧が思うように上がらないためロジック回路をうまく駆動できず、駆動できてもデューティー比の変化が大きくE級動作が出来なくなります。2.の場合はトランスの1次2次巻き数比でゲート駆動電圧を5V以上に持ち上げることが出来る利点もありますが、やはりデューティー比が変化してしまうことが懸念されます。といことで3.のロジック回路の間に挟むような回路にしてみました。
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既存のロジック回路にトランスを組み込み |
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ドライブ回路をブレッドボードで仮組み実験 |
トランスは43材の小型メガネコア、1次2次巻き数比1:4としました。1N60はゲルマではなくショットキータイプで、データシートを読むと汎用の1N4148よりも高速スイッチングが可能なようです。最初電圧クリップ目的で4.7Vのツエナーダイオードを並列に繋げましたが、ツエナーダイオードの速度が思ったよりも遅くてデューティー比が変わってしまったためはずしましたが、ピーク電圧は6V程度におさまっていたのでこのままとしました。
ドライブ出力波形を観察してみると、
まず負荷なし状態でSi5351aからの信号が停止した瞬間のドライブ出力を見てみると、思惑通り両方のドライブ出力はLOになっています。
1000pF容量負荷でを繋げたときの波形も大きな乱れはなさそうです。
いよいよ実際にMOSFET(FKI10531)のゲートにこのドライブ出力を繋げて動作テストを敢行しました。
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元のドライブ段の出力をはずしてブレッドボード上のドライブ出力を繋げます |
まずは電源電圧を13.8Vとしたゲート電圧とドレイン電圧の同時観測波形です。
多少リンギングが見られますがE級動作として見て良さそうです。ピークのドレイン電圧は52.8Vに達しています。(VDDの約3.83倍)
次に、両方のFETのドレイン電圧の同時観察波形です。
電圧の差もほとんどなくタイミングも問題なさそうです。
出力は20Wほど(LPF通過後)、電流は1.7A程度で効率は84%前後になりました。
最後に電源電圧を変化させ、出力と電流、効率の変化をプロットしてみました。
効率は電圧が上がるとやや低下しますが、ほぼ84%前後を確保しています。7.4V付近では出力が5W程度となり、リチウムイオン電池2つ直列、もしくはニッケル水素充電池6本直列でちょうど5WのQRP出力が得られそうです。
これで一応E級プッシュプルアンプのドライブ回路が固まりましたが、このロジック回路からインバータを廃することで安全性がさらに増すと考えられるので、3ステートバッファICひとつだけで新たに構成させようかと目論んでいます。
週末秋月にでかけてIC調達しなければ^^;