自作界隈ではいろいろとありました。まぁそれは後ほど年末の総括で振り返ることにして、モノバンドCWトランシーバキットVNシリーズにたくさんの方が興味を持っていただいたことに感謝するとともにそろそろ新しい展開をということで、次の展開として下のバンド160mと80m用のトランシーバーを進めることにしました。
2年ほど前に160mと2200m用のE級パワーアンプの実験を行ってきましたが、その後いったんストップしていました。今年になって今までの回路、基板CAD関係をKiCADver.5に移行しまず手習いとしてデジタルVSWRメーターの回路基板設計をおこない、次に11月ごろからローバンド用のトランシーバーの回路基板設計と試作を再開しました。
KiCADは部品やフットプリントライブラリをそろえることがやや大変ですが、リストにないものはデータシートを見て最初作ってしまえば流用がいくらでもできるので、あとあと楽になります。しかも回路図と基板レイアウトがネットリストで連携していることと、ベタ塗りの更新が非常に楽なところで今までの環境(PCBE)より圧倒的に作業効率が高くなります。
で、今回のローバンド用のトランシーバーですが基本的には従来のVNシリーズの構成を継承しています。ただしローバンド用として送信部を強化(パワーUP)し、安定して20Wクラスの出力が出せるようなものにしてみました。それでも基板サイズは60x80mmというコンパクトサイズにこだわりました。
というわけで、この記事では強化した送信部を中心にプチ解説します。
回路自体は2年ほど前に公開したものを流用しています。
CTRL部からの送信用3.3Vロジック信号をロジックICのバッファで受け、5V信号にレベル変換したのちC1でDCカットしT1のトランスで180°位相差信号とします。各々の信号をD1、D2でマイナス成分をカットし再び3つパラレルにしたバッファに入力して2対のパワーMOSFET FKI10531を駆動します。そのあとC5,6,L1,2で構成するE級ネットワークを経てインピーダンス変換トランスT2でインピーダンス変換したのち定K2段のLPFを通して出力としています。
今回の回路のミソはドライブ回路のバッファとして使用したロジックICの3ステートバッファ 74541です。このICは8個のバッファが入っていて、最初の2つのバッファで5Vレベル変換、残りの6つでゲートドライバとしています。パワーMOSFETのFKI10531は入力容量が1530pFとかなり高いのですが、total gate chargeが9.0nC(VGS 4.5V)で駆動電流もさほど大きくなく、かつturn off delay 13.7ns、Fall timeが6.0nsと高速なため短波帯までの10W級スイッチングPAには十分適応できるデバイスだと思われます。秋月で1個40円くらいで安いですし使わない手はないのではと。(ただ"D"マークがついちゃっているのが残念)
LPFは定K型2段構成ですが、プッシュプルで偶数次の高調波が抑えられており2次高調波の周波数で-20dB台でも送信波の測定では-60dBc近くまで2次高調波を抑える事が出来ています。
あとキーイングはVDDとSi5351A制御で行っていますが、VDDのコントロールにはDMG3415Uという小さな表面実装型Pch MOSFETを2つパラレルにして実装しています。この小さなパッケージでもID -4.0Aと結構大きいので数A程度の電源制御に好んで使っています。
そういうわけでKiCADで回路図を書いてから同じソフトのPCB CADに転送してパターンづくり、ガーバーデータ生成、PCB業者にアップロードして1週間程度で基板が送られてきます(なんという便利な世の中なのかと実感する瞬間(笑)。
実装した送信部です。
パワーMOSFETの一つは裏側に装着していますがいずれもヒートシンクレスです。出力は13.8Vで20W前後、リチウムイオン電池2個直列の7.4Vでは約5WのQRPとなりました。
効率は全体のシステムで75%程度とまずまずでした。
そのあと受信部を実装し、CTRL部、送信部、受信部の3枚重ねとして試作機が完成しました。
こちらは80m版の試作機 E級ネットワークとLPFの定数変更で対応可能です |
まだ修正や追加実装などを経て基板を再発注し、最終的な試作機が完成したら年明けのどこかのイベントで展示できるかもしれません。キットとしての頒布はまだその後ですね。
80m版のキット頒布を期待しています。
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