2016年5月31日火曜日

7MHzQRP(p)CWトランシーバの構成とIFシフトもどき

トランシーバの構成が固まってきたので、とりあえずのブロックダイヤグラムを。

ハード構成では、受信部はシングルコンバージョンでプリアンプつきのIF3段でミクサと検波はいずれもパッシブDBMとし、AGCはIF2,3段目にかけています。局発とBFOはSi5351Aから各々供給されます。AF段は2SC1815の1段からAGCとSメーター用整流回路、オーディオアンプのPAM8012にそれぞれ接続しています。

オーディオアンプのPAM8012は、秋月で販売しているPAM8012超小型D級アンプモジュールを使っています。従来よく使われていたLM386Nよりもゲインは10dB程度と低いものの、ヒスノイズが少ないことと電源ON時のポップノイズも皆無でとても気に入っています。今後の製作モノにも使っていこうと思っています。安価ですし(笑)
人差し指でも隠れるくらいの小ささ PAM8012 PAモジュール
 Sメーターは整流出力をPICにつなぎAD変換してLCDのバーグラフメーター表示させています。パワーメータや電源電圧表示も追加する予定です。

送信部は、Si5351Aの残りの出力から直接ロジックICの74AC(HC)04のインバーター1回路に接続し、その出力を残りの5回路を並列接続したバッファに接続して出力をMOSFETのBS170のゲートにつなぎ、ドレイン出力に5段のπ型LPFとつなげ送信出力としました。

送信電力はドレイン電圧を変化させることによって1WからQRPpの500mW以下に調整できるようにする予定です。

 ソフト的には、PIC24FV32KA302でI2C経由でSi5351AとLCDを制御、メッセージメモリつきキーヤー内蔵させています。

Si5351Aの各出力周波数の関係は下の図のとおりです。
 訂正:思いっきり図が間違っていました(汗)訂正します。

 送信時はCLK1(TX_freq)のみ出力し、受信時はCLK0(BFO_freq)とCLK2(LO_freq)が出力されます。BFOとLoは独立しているので、供給されるPLLは別々(BFOはPLL Bから、LoはPLL Aから)にしています(同じPLLにすることは可能ですが、レジスタの計算がかなり面倒(分周側で計算しなくてはならないので複雑な上誤差も出る)になると思います)

 さてお気づきかと思いますが、上の図赤文字のIF_freqをシフトさせるとどうなるでしょうか?

そう、いわゆる昔流行った(?)”IFシフト”機能と同等の効果が実現するわけです。

シングルコンバージョンで実現するにはBFO周波数と局発周波数の完全な同期が必要です。普通のVFOやVXOではプリミックスをかけたり複雑になりますが、2つのDDSでお互いソフト的に同期をかけることで直接発振可能ですし、Si5351Aであればデバイス1つで済んでしまうということで制御ソフトに組み込んでみました。


 実際のQSOにどれだけの効果があるのかは分かりませんが。

 最後に失敗の備忘録。

Si5351Aは、出力停止時はデフォルトでHレベルになるのでそのまま送信部へ接続するとファイナルが常時ONになってしまいデバイスが壊れます。気がつくまで数個BS170飛ばしました…

 Si5351Aはパッケージが非常に小さいからなのか、通電中に出力端子を無造作に切り替えたりして負荷が急激に変動したりちょっとした電圧を加えてしまったりするとすぐ故障します。しかもショートモードで故障することがあってシステム全体がダウンしてパニックになります。これでSi5351Aを2個ほど昇天させてしまいました…

 あとは送受切り替え回路と変更申請を~

2016年5月28日土曜日

7MHzQRP(p)CWトランシーバ送信部の基礎実験その2

というわけで、送信部をユニバーサル基板に組んでみました。
雑然とした作業台兼机上(汗
 構成は、Si5351AのCLKOUTから50Ω抵抗を介して74AC04の最初のインバーター入力に接続し、5パラ接続した残りのインバーター回路出力をBS170のゲートに直接接続。ドレイン側はFT-50-61にUEW10ターン巻いたRFCをつないで電源ラインに接続、0.01μF2パラから5段チェビシェフπ型LFPにつなぎ出力としました。

まずオシロスコープで74AC04入力波形とBS170ゲート部の波形を観察。
入力電圧3.3VはロジックICを通し6Vまで昇圧 立ち上がりがやや遅い
 追従性は問題なさそうですが、ロジックIC出力とBS170入力インピーダンスがあわないためかオーバーシュートとリンギングが激しい波形になってしまいました。また、5351Aの出力インピーダンスが83Ωと低いためかロジックIC入力波形もやや暴れていました。

そこで、 スイッチング回路でいう所のCRスナバ回路をロジックIC出力段とBS170のドレイン-ソース間に挿入しました。ロジックIC入力段に挿入すると信号レベルが下がってしまいロジックICを駆動できなくなるためそのままとしました。
カットアンドトライでここまで改善しました
やはり立ち上がりの反応がやや遅いのが気になりますが、次に入力のプローブをBS170ドレインに繋ぎ替えてみます。
オフ時のBS170ドレイン電位の立ち上がりが正弦波っぽくなっています
出力波形の振幅は大きくなり、ドレイン電位のピークは20Vまで上昇しています。
LPF出力を50Ωダミーロードに接続 「ほぼ」綺麗な正弦波
50Ω負荷で約6Vrmsあり、出力は約720mW(電源電圧9V)でした。
手持ちに1Ω以下の低抵抗が見当たらずドレイン電流未測定なので、効率はわかりませんがいずれ計測しなくてはいけませんね。

 1石で700mWも出ればQRPpとしては充分なのですが、それ以上の出力となるとBS170は2パラ以上としてインピーダンス変換トランスもしくはLPFの再設計が必要になります。

 で、次に40dB減衰のブランチを使ってスペアナに入力して出力のスプリアス分析を行いました。
高調波以外に基本波周囲とそれ以下の領域にも柱が見えています

高調波は第3次で-50dB以下とまずまずでした

基本波近傍には目立った柱は見られませんでした
ユニバーサル基板むき出しの状態でもLPFを5段にしたためでしょうか、新スプリアス基準も大丈夫(??)という結果でした。

高効率で高調波の少ないE級のようなソフトスイッチングも試してみたいところですが、とりあえずこの構成でまずは進めていこうと思います。

2016年5月24日火曜日

7MHzQRP(p)CWトランシーバ送信部の基礎実験その1

受信部がうまくいったところで、この次は送信部の設計試作に入ります。

Si5351Aは矩形波出力であるため、そのままバッファを通してファイナルのデバイスを飽和領域でドライブしようと考えています。出力はQRP(p)用に1W前後を目標にします。

思いついたのは、スイッチング速度でバイポーラより優位なMOSFETをファイナルとして、ゲート駆動に電圧変換回路(Si5351Aが3.3V出力のため)と低インピーダンス駆動のためのバッファ回路というよく見かける構成でブレッドボード上に試作してみました。

C1815で電圧変換しC1815とA1015バッファ出力を観察
PIC12F629で生成した1μsec幅の連続パルス波と、そのパルス波を2SC1815の電圧変換と2SA1015とのコンプリメンタルで構成したバッファに通した出力を同時観察してあれやこれやしてみました。

赤がPICからの出力 黄色が駆動回路を通した出力

 まず、なにも付加回路つけない状態。

予想以上にTrのオフ時間が長いこと・・・これでは7MHz帯では到底役に立ちません。
そこで、 ベースに100pFほどのスピードアップコンデンサをを挿入し、ベース-コレクタ間にショットキークランプ(適当なショットキーダイオードがなかったので、汎用の1N4148で代用)を組み込んで観測すると・・・

スピードアップコンデンサとショットキークランプ挿入後のレスポンス
見た目かなり効果があってオン時間もオフ時間も短縮されましたが、それでも高周波に使えるまでには改善されませんでした。

というわけでバイポーラTrの電圧変換は諦めることにしましたが、海外のQRP機キットや自作例に良く使われているロジックICによるドライブをテストしました。

ロジックICは6回路インバータの74AC04を選択しました(後で実験したところHCシリーズでも問題なかったです)。無信号時スイッチング素子はオフにしておかないと壊れてしまうので、1回路分で一旦反転して残りの5回路分をパラ接続して元に戻しつつ低インピーダンスでスイッチング素子を駆動するようにしました。

ロジックIC(74AC04)の出力にRD06HVF1をつなげてテストの様子
こんな感じで、Si5351AのCLKOUT(7MHz 3.3V矩形波)から50Ωの抵抗を経由して74AC04につなぎ、各スイッチング素子(MOSFET)に接続。100Ωの抵抗負荷で波形観測を行いました。VGSをなるべく高くするため74AC04のVccには最大の6Vかけています。

選択したスイッチング素子は、BS170, IRF510(made in China), RD06HVF1, 2SK2796L(秋月で一個60円 Ciss180pF)です。

 まずトップバッターはBS170。TO-92パッケージでありながらPD830mW, max ID 1.2A(pulse)でCissも2桁と小さい上に、オンオフ時間も10ns程度と速いです。

BS170シングル よく追従しています
BS170の2パラ Tfがやや延長して角が丸くなっています
つぎは三菱のRD06HVF1に差し替えて観察。

言うことないです さすが高周波用(笑)
つぎに、海外で10W級リニアアンプ製作例でしばしば使われているIRF510(以前RSから取り寄せた中華製)に差し替え。

VCCが9Vと低いためか、立ち上がり立下り勾配が緩やかになってしまう
IRF510ではロジックIC出力6Vでは足りずさらにVGSを充分に上げないと飽和領域まで持ち上げられないようです。

最後に136/475kHz帯用送信機の終段に使おうと考えている2SK2796Lでテスト。

t-offが長く実用になりませんでした
 t-offが長い結果FETオンが長くなって発熱し、やがて1個昇天させてしまいました。

 というわけで、今回のファイナル素子としてはBS170かRD06HVF1が適当と思われましたが、入手性や価格からBS170に決定しました。

 結局オーソドックスなところに落ち着いたわけですな^^;

早速ブレッドーボード実験からユニバーサル基板へ試作しました。

基板右下は別の回路で後日外しました

 このあともオシロスコープやスペアナを駆使して回路追加などを行いましたが、その顛末は次の投稿にて!

2016年5月11日水曜日

5/8 伊豆の国市136kHz移動運用

GW連休後半某団体の旅行で大仁温泉に出かけておりましたが、最終日の8日近くの狩野川の河原に出向いて朝から昼過ぎまで久しぶりに136kHz移動運用を行いました。

(実は前日沼津市にちょっとした丘の上の展望台を見つけて視察兼ねてで向かいましたが、途中がけ崩れなどで通行止めになってしまっていたためやむなくこちらの河原で運用することになりました。展望台の駐車場まで行ける機会を見つけて再トライしてみたいことろです。六甲山展望台や伊豆スカイラインの展望台駐車場同じような環境なので飛びが期待できそうな場所なのです。)

前日夕方宿の窓から撮影した富士山 絶景です
装備はいつものように、JUMA TX136改にFT857DM直接受信(TX136内蔵20dB受信プリアンプ入り)とし、アンテナは12m高2条傘型で最大9mHのバリオメーターつきローディングコイル、アースは60x90cmのガルバリウム鋼板10枚敷きです。
地面が一部コンクリっぽかったんですが、接地抵抗は思うようにはいきませんでした
 アンテナアナライザで測定したアンテナ入力抵抗は同調周波数で約75Ωとなり、接地損はコイル抵抗を差し引いて概算63Ωといったところでやはりいまひとつでした。

そこで車体にアースをつなげてみたりアースマットの位置をずらしてみましたが、ちっとも変化がないので諦めてインピーダンス変換トランスに接続し、送信機側から見た純抵抗を50Ω近くにあわせました。

午前10時前から136.5kHzでVVV及びCQを出したところ、相模原市城山湖移動のJN1MSO/1局、横浜市のJH3XCU/1局とCWモードでQSOすることが出来ました。

また、当日宮ヶ瀬フィールドミーティングで公開運用を行っていたJH1YMC/1局の連続CQを137.3kHzで受信できましたが、コール及ばずでQSOなりませんでした。

ついでにWSPR2とDFCW30でID送信したところ、各局に捕捉されたようです。
 

まずはWSPR2モード
JA1NQI局、JA8SCD局によく届いていました GL6桁送信のプログラム作らなきゃ(汗


続いてはDFCW30モード
JN1MSO局グラバー 部分的にかすれているところはノイズレベル上昇によるものだと思われます
7L1RLL局のグラバーにもなんとか映っていました
JA8SCD/1局 台東区グラバー 安定して受信されていました
今回、風の影響もほとんどなくDFCW30モード送信中もVSWRはとても安定していましたが、バリオメーターを最小にしても同調点が低くてDFCWの周波数(137.775kHz)では出力を抑えなければなりませんでした。

リッツ線を巻いて作成した新しいローディングコイルは当初からやや巻きすぎの感がありましたが、実際に傘2条スタイルでも上の周波数では同調が取れなかったため、次回の移動までに数回程度コイルを解いてインダクタンスを減らそうかと思います。

14日にも長波フィールドデーで各局の移動運用が予定されております。自分も移動運用する予定でしたが、私用のため参加が微妙です・・・

2016年5月3日火曜日

7MHzCWトランシーバ受信部基本形ひとまず完成?

Si5351AクロックジェネレータをVFOとBFOとして使用したモノバンドCWトランシーバシステムの受信部ですが、AGC回路とSメーター駆動部の組み込みが完了し、ようやく基本形が出来上がりました。


IFアンプモジュールは、AGCラインの増設と2SK241のソースとグラウンド間に2.4kΩを挿入してバイアス点をずらしAGCがかかりやすくなるような形にしました。

AGC電圧の生成には、最初IF最終段の出力につないだ小容量のカップリングコンデンサから元信号を引っ張り、2SK241の1段増幅を経て1N60 2本の倍電圧整流で負電圧を作り出してIFアンプの各ゲートに送り込むようにしましたが、どうにも出力される電圧が低めでAGCはまったくかかりません。

引き込む信号のレベルを上げるためにカップリングコンデンサの容量を増やすと、元のIFアンプへの影響が大きくなると思われることや、負電圧を増幅するとなると回路的に複雑になってくることから、IFアンプから引っ張るのは早々に諦めて回路を変更してAF出力(プロダクト検波から1石AFアンプ)から引っ張ることにしました。

具体的には0.1μFでAF出力と結合して汎用のスイッチングダイオード(1N4148)で倍電圧整流し、10μFをパラレルにつないだところからAGC電圧としてIFアンプモジュールにフィードバックするようにしました。

また別途正電圧になるようにした倍電圧整流回路を組み込み、その出力をPICのADC入力ポートに接続してバーグラフSメータ表示としました(ADC入力は正電圧のため、AGC回路とは別に整流回路を作るようにしました)。

完成後アンテナをつないでワッチしてみました。


大きい信号は多少歪むものの結構綺麗にAGCがかかっています。

1段目やRFアンプにもかけてみても良いかとは思いましたが、このままでも充分です。Sメータの振れ調整もAGCレベル調整とは独立しているので変な相互作用はなく、思ったよりFBでした。

正式に感度測定やAGC調整範囲など測定したいところですが、またおいおいと。

それから、DBM駆動にSi5351A矩形波出力を3dBパッドを介してそのまま接続しているため、局発の3倍高調波によって周波数変換された(3MHz x 3 + 4MHz)13MHz台の放送波がまれに聞こえること、さらにおそらくAGC回路から進入した局発もしくはBFO信号でごく弱いながらも混信信号が聞こえてきます。

ユニバーサル基板でしっかりグラウンドを取っていないことによる弊害とも思われますが、場合によっては局発やBFO出力にはLPFを挿入したほうが良いのかもしれないのでこちらもまだ要検討です。

何はともあれ、一応まともそうな受信機が出来上がったので送信部と切り替え制御へ進みトランシーバへ徐々にまとめていきたいと思います。