2017年3月24日金曜日

mcHF送信部ファイナルMOSFET組み込みと基板到着

mcHF v0.6の受信部正常動作を確認したところで送信部のファイナル用素子として手持ちのRD16HHV1を2本装着、大き目のヒートシンクをネジ加工してファイナルと電源部の低電圧レギュレータにそれぞれ装着しました。ロータリーエンコーダに小さなつまみも取り付けました。

大き目のヒートシンクが後脚になって、ほどよい傾斜になってます^^
 ケースは一時eBayなどで専用のものが頒布されていたようですが現在は残念ながら出てないようで、自力で起こすしかなさそうです。ネットをみると3Dプリンタで作ったりいろいろと工夫されているようです。小型軽量なので移動用にも持ち出してみたいですし、折角なので自分で作ってみようかと思います。

 さてこのヒートシンクですが、ファイナル部はこのくらいの大きさは仕方ないにしても電源のレギュレータICにこの大きさは・・・と思われるかもしれません。しかし、動作時これら2本のレギュレータがハンパなく熱くなってしまうのです。回路図では12V電源から低周波アンプとファイナル部のバイアス、USBホスト電源用、後に続く別の5Vライン生成用に8Vに調整されたレギュレータと5V生成用のレギュレータが熱源になっています。

このくらいの大きめな放熱器をもってしてもまだ暑いくらいなので、スイッチングノイズが気になりそうですがここの部分をもっと効率のよいDCDCコンバータに切り替えてみたいです。

基板の裏側から
いよいよダミーロードを繋いで設定でバイアス電流調整とバンドごとの出力調整を行います。

ローバンドでは余裕で5Wは超えましたが、ハイバンドでは最大で2から3Wにとどまります。おそらく終段のトランスT2の2次側の巻き数を若干増やすと10mでも5Wくらいは出せそうです。でもまぁ慌てずあとの楽しみのためしばらくデフォルトのままにしておきます。
また160mも出力できますが、専用のLPFが内蔵されていないので2,3次高調波レベルが著しくそのままではアンテナには繋げられません。ドキュメントにももし運用するのであれば外付けでLPF装着するように促しています。オシロスコープでみると正弦波にはほど遠いので恐ろしくてそのままアンテナに繋いで送信出来ませんね。

それから日本ではまだアマチュアに解放されていない60mバンドも送信できてしまうので、保証認定の際は要注意です。

というわけでまだいろいろと調整が必要ですが、とりあえずトランシーバとしての体をなすところまでは辿りつけたようです。

いまのところバンドや短波放送などをワッチしています。選択したフィルタにも拠りますが全体的に音質は良いとおもいます。AGCのかかり方もごく自然でメーカー製のリグと変わらないレベルだと思います(オーディオ関係は詳しくないのであてにならないかもしれませんが^^;)。

閑話休題

人柱版で指摘されたポイントなどをまとめレイアウト調整を行った正式版に使おうと考えている基板が出来上がりました。

安くてお得意先になったFUSION PCBに発注し、少しデータトラブルがあったものの2週間弱で手元に到着しました。

お隣の国から1日強で到着します。早い。
初めてオーダーした青いレジスト色なかなか良いです
 RGB3色同時発注してみました。なぜ3色なのかは秘密です(笑)

この新基板で最終試作テストを行い頒布に進む予定です。

2017年3月22日水曜日

mcHFというQRPトランシーバキット

VN4002正式版の基板発注が済んだところで、以前入手したmcHFというHFオールバンド、マルチモードなQRP SDRトランシーバキットを組み立て、ソフトウエアをインストールし受信動作を確認しました。

mcHFは英国のM0NKA Chrisさんが主導するHFオールバンドのSDRトランシーバプロジェクトです。IC7300のようなダイレクトサンプリングではなく、KX2やKX3に似たシングルコンバージョン後のベースバンド信号をサンプリングしてSTM32F4プロセッサで処理するタイプのSDRトランシーバです。

詳細については、こちらのページをご覧いただきたいですが(英文) 、キットとして頒布を行っています。表面実装部品装着済みのものと、完全バラキット(但しファイナルのMOSFETとスピーカー、ケースなし)の2種類ありますが、当然完全バラキットのほうを選びました(笑)

paypalで支払いましたが送料込みで219.99GBP、日本円で3万ちょっとでした。

重量がかさむのでスピーカは同梱しないのだそうです
1,2週間ほどで到着。中を開けてみると、UI(コントロール部)、RF部の基板と各パートの表面実装部品を収めた袋とそれ以外のパーツを入れた袋が入っていました。当然のことながらマニュアルはなく各袋にパーツリストは入っているのみでした。

パーツの値ごとにひとつずつ収められた袋がたくさん入っていてつくりごたえあります
丁寧な組み立て手順を示した製作マニュアルがありませんので、袋に入っているパーツリストと基板のシルク印刷されたパーツナンバーを照らし合わせて地道に装着していきます。




難関はやはりMPUのSTM32F4とaudio codecのICでしょうか。ランドはハンダレベラー処理を施されているので、フラックス塗布作戦で装着しました。(なかなか起動しなかったので不完全装着かもしれないと思い、念のためハンダ盛り吸い取り線除去してしまいましたが(汗)

UI部にすべてのパーツを装着するまで延べ約8時間ほどかかりました。

日を改めて、RF部に進みました。


整然と並んだBPFのチップパーツとLPFのトロイダルコアが圧巻です
RF部はコイル巻きに手間がかかりますがこちらも地道な作業です。こちらは2日ほどかかりました。

一番失敗したところは基板上の30ピンヘッダ装着方向です。確認を怠りうっかり逆方向に取り付けてしまって1ピンずつ引き抜きモールドに戻して再装着しましたが、パターンが細いためランドが半田ごての熱で取れやすくなってしまいました。そういうわけでここの部分のリペアには時間がかかりました。当時は泣きながら作業していました(笑)。

なんだかんだで組み立てはかなり手ごたえがあり、すべての部品装着にはだいたい1,2週間ほどかかりましたが、ここではまだまだ終わりませんでした。MCUにはソフトウエアが全く入っていないので、自力でインストールしなくてはいけません。

また最初にすべてのパーツを装着してしまいましたが、いろいろバージョンがあったりオプションがあったりで、いくつか部品を外す必要が出てきました。その後はMCUにブートローダとファームウエアをインストールします。

備忘録として具体的に、現在の最新バージョンv0.6では

1.UI基板のR43a R43b (USB関係)、R42 R43(TCXO関連)、R47b R47c R47d(Wifi関連) の0Ωシャントをすべて取り外す。
LCD関係はそのまま(ファームウエアによっては画面が真っ白になったままになるので、DF8OEのファームウエア1.60を導入することが前提(新しい2.0は肝心のDSP関連が作動しないので不可)。)

2.必要なソフトをダウンロードする。
・ブートローダインストール用のDFU UtilityアプリケーションDFuSE 3.0.5(STMicroから WindowsOS用のDFUデバイスドライバも同梱されています)
・ブートローダ mcHF_boot_0.0.0.14のダウンロード
・mcHF firmware upgrade utility mcHFManager v0.1のダウンロード
・mcHF firmware 1.60 のダウンロード

3.ブートローダのインストール
ドキュメントに手順が示されているので詳細は割愛しますが簡単な手順としては、まずもともとROMに内蔵されているDFUモードのブートローダを起動します。P6ジャンパをショートしてUSB経由でPCに接続。BAND+を押しながらPOWERを押し、POWERはそのまま押し続けながらPC側のデバイスドライバがインストールされたことを認識したらBAND+を離します(POWERはインストール済むまで押し続ける)。
ダウンロードしたDfuseDemoを起動させてmcHF_boot_0.0.0.14.dfuファイルを選択して書き込み、完了したらPOWERを離します。これでブートローダインストール完了です。

4.ファームウエアインストール
こんどはPCとUSBで繋いだ状態でBAND-を押しながらPOWERをし押しつづけると、LEDが緑と赤で点滅開始しますのでその時点ですべてのボタンを離します。PCがドライバを検索し始めますがネットからは検出できないので、検索停止するまでしばらく待機します。検索中止したところで、PCのデバイスマネージャを開きmcHFをダブルクリックし手動でドライバをインストールします。対象のディレクトリは、mcHFManager_0.1フォルダにあるdriverフォルダを指定すると自動的にファイルを見つけてインストールしてくれます。
インストールを確認したらmcHFManager.exeを起動して、あらかじめダウンロードしたbootloader.dfu (ver1.6.0)を選択してupdateボタンを押せばファームウエアがインストールされます。

とまぁここまで来るのに1,2日要しました。

で、早速アンテナ繋いで受信を試してみます。

ここまで来るのにかなり悩みました(汗)

実際に触れてみるまではSDR特有のレイテンシが気になっていましたが、なかなかどうして思ったよりレイテンシが少なくて違和感はかなり少ないです。まだ送信部のテストは行っていませんが、実用的な雰囲気を感じます。

確か三菱のMOSFETストックしていたので、送信部に進みたいと思います。

2017年3月5日日曜日

月間工作王!

先日月イチで横浜の野毛で催されている横浜電子工作連絡会の定例ミーティングに初めて参加させていただきました。

以前からミーティングを紹介しているページを見ていてとても気になっていたのですが、ようやく重い腰を上げて行ってきました。

うっかり写真を撮り忘れてしまいましたが、居酒屋さんの2階のちょっとした宴会場に上がるとすでにビールやお料理をつまみながら作品を囲んで談義に花が咲いておりました。

10名ほどの参加者で部屋はいっぱいになり順番に作品を披露しました。

自分は例のポケットトランシーバとそのプロトタイプ版、Keyer Mini-V2 revision2を持参しましたところ、初参加でしたがなんと月間工作王を頂戴いたしました。

トロフィーとメダルです。以前は『工作王』と印刷されたTシャツだったそうです
みなさんの作品もどれも独創的で面白かったです。今後の工作に参考にさせていただくとともに、モチベーションも上がりとても有意義な時間でした。参加各局、幹事のMISさんどうもありがとうございました。

秋葉原QRP懇親会とちょうど重なってしまうため今後毎月参加できるかどうか分かりませんが、今回工作王ありがたくいただきましたので来月も参加する予定です。(QRP懇親会もその次の会には参加したいです^^;)

自作がお好きな方はこのような会はとてもためになるので参加されると良いと思いますよ。

2017年3月2日木曜日

136kHz帯用20W E級プッシュプルアンプの実験

勢いにのって136kHz(2200m)帯用のE級アンプ実験を行いました。

136kHz帯では通常設置可能なアンテナの利得は条件が良くても-20dBi前後になるため、単純には空中線電力が50WであってもEIRPは500mW以下のQRPpになってしまいます。

ましてや数WならばEIRPは数10mWなので、余程受信側の条件が良くなければCWでの交信は非常に厳しくなります。

というわけで今回は475kHz帯の申請も見越して出力20Wを目指したE級アンプの実験を行いました。

前回の実験で使用した2SK2796LというMOSFETを今回も採用しますがVDSSが60Vと低く、そのため電源電圧15V以下という条件を満たさないといけません。

低電圧で高出力を得るには、負荷インピーダンスを下げなければいけないのでインピーダンス変換トランスが必要になります。

電源電圧12VではLPFの挿入損失分などを踏まえ、2Ωで25W出力を想定しました。

で、次に回路図です。


今回はプッシュプル増幅回路にしました。理由は、偶数次高調波が抑えられることによってLPFの設計や実装が楽になると考えたからです。136kHz帯という非常に低い周波数のLPFは設計よりも実装が大変で、特にLはコイルも大きくなって巻くのも一苦労です。なるべくコンパクトにしたいので次数も必要最低限にとどめておきたいと考えています。

さておき、各定数はCQ出版社発行POWER ELECTRONICS SERIESの書籍を参考にして算出し、ドレイン電圧波形などを観測して決定してました。計算式などは書籍を参考にしてください。

ドライバは例によって汎用的でコストの安いロジックICでまかないました。プッシュプルなので各FETのゲートには180度反転信号を与えるため、一方にインバータを繋げています。また、信号送られていないときには両方のゲート電圧を0にするために各々NANDを挿入し信号入力時のみゲート電圧を変化させるようにしています(この辺は良くやられている手法だと思います)。最後にFETドライブ用に各々3パラ接続したインバーターを介してFETを駆動します。

E級フライホイールは各FETのドレインソース間のCとインピーダンス変換トランス前の2つのLで構成されます。シングルとは異なり、FETのオンオフで共振周波数は変わらないところがミソです。

最終的にインピーダンス変換機能を兼ねた出力トランスで180度反転合成しインピーダンス変換されて出力されます。巻き数比は1:5でインピーダンス変換比は1:25になります。

この回路をブレッドボード上に組み上げて各FETのゲート電圧、ドレイン電圧、出力波形をオシロスコープで、高調波はスペアナで観察してみました。

左の2つのICはドライブ用ロジックIC、中央付近にFET、フライホイールのL、出力トランスに続きます

FETの供給電圧を5Vと低めに設定して各波形を観察します。


ドライブ出力波形です。上下反転しているのが分かりますね。オーバーシュートが目立ちます。電圧はキッカリ5V、周波数は136.5kHzです。


片方のゲート電圧とドレイン電圧を見ています。下のドレイン電圧曲線は最初計算値だと低い共振周波数のカーブを示していたためドレイン-ソース間のキャパシタを減らして共振周波数を合わせてみました。ただし、曲線の最下点が0Vよりも高いことからおそらく負荷抵抗とのマッチングがずれているようでした。これはインピーダンス変換件出力トランスのインダクタがE級ネットワークに影響している可能性が考えられます。

5Vで出力は約6Wほどでした LPF通さなくても正弦波に近いです

マッチングのずれなどによるスイッチング損失のためか、増幅中FETパッケージが熱くなります。また低電圧で出力を稼ぐためドレイン電流が多くFETのオン抵抗での損失による発熱も考えられたため、各々のFETを2パラ接続してみたところ発熱が和らぎました。


次に電源電圧を13.8Vに上げ、60dBのアッテネータを通しAPB-3スペアナモードで出力レベルと高調波をチェックしました。


ブレッドボードの配線のためフロアが騒々しいですが、基本波は60dBのアッテネータ挿入時で-13.9dBmで計算上+46.1dBmでした。実際はもう少し低いです(オシロスコープの計測で27W程度)。高調波については2次高調波が基本波に対して-31.41dBと3次よりも抑制されているというプッシュプル増幅の特徴が出ています。そのほかの偶数次高調波も明らかに低く抑えられています。これならLPFの設計も余裕が出てくると思います。

この回路では出力トランスのインダクタの影響などをみて改善する必要がありそうです。

あと10A程度の電流計を調達して効率を測定しなくては(汗)