2017年8月24日木曜日

mcHFのLPFプチ改造

日本でもmcHFキットを入手され組み立てて動かす方も増えてきました。人気があるのか最近ではout of stockが続いています。

先日のCool CQ SDRファンまつりでは、縁あってmcHF実機の展示やプレゼンなどさせていただきました。その中でmcHFの送信波高調波スプリアスについていくつかのバンドで新スプリアス基準を満たしていない可能性があるということで、mcHFフォーラムにNB6M Wayne氏が提示したLPFのミニマムな改造による高調波スプリアス改善テストについて紹介させていただきました。

Wayne氏の実験結果を抜粋引用
オリジナルのLPFでは左のように高調波スプリアスが充分抑え切れていません。自分の測定結果も同様の傾向でした。Wayne氏は各バンドのLPFの出力側のLにパラレルにキャパシタを追加することで160mを除くすべてのバンドで高調波スプリアスを充分抑えることに成功しています。

SDRまつりも無事終了して少し時間が取れたので、私もWayne氏に倣ってLPF改造テストを行ってみました。


ひさびさにmcHFのケースを開け、RFボードを取り出し、L21,22,23,24にパラレルに各々キャパシタを追加しました。改造後バンド毎に以前に計測した結果を比較してみました。(2次高調波レベルの比較です)

160m(改造前(左 -16dBc)と改造後(右 -16dBc)

80m(-40dBc ⇒ -73dBc)

40m(-53dBc ⇒ -61dBc)

30m(-31dBc ⇒ -70dBc)

20m(-57dBc ⇒ -62dBc)

17m(-25dBc ⇒ -56dBc)

15m(-47dBc ⇒ -56dBc)

12m(-50dBc ⇒ -73dBc)

10m(-46dBc ⇒ -60dBc)

とまぁたった4つのキャパシタ追加で高調波スプリアスはかなり改善しているようでした。詳しく精査していませんが回路的には最終段を楕円フィルタ化して切れをよくして高調波を減衰極に置くなどしているのでしょうか。ミニマムな改造の割には効果が高いです。

但し、ハイバンドはインピーダンスが50Ωから離れるのかVSWRが高くなります。内蔵のVSWRメーターでは50Ωのダミーロードを接続すると10mバンドではVSWR2.5程度まで上昇します。20mバンドよりも低い周波数ではVSWRは上がりません。どうやらハイバンド用のLPFは全体を設計しなおしたほうが良さそうです。

もともと17mから10mまで同じLPFでまかなうには少々無理があると思われますが、当初mcHFはHF帯全域カバーを想定していなかったのかもしれませんね。

結局160mバンドまでカバーしようとすると4バンドでは無理で5バンド化は少なくとも必要と考えます。ファームウエアのバンド切り替え構成を換え5バンド化してオールバンド対応にしてみたいです。

まぁぼちぼち楽しみながらやっていきます。

2017年8月17日木曜日

160m用E級アンプ顛末記と今年のハムフェアについて

7,8月といろいろイベントが重なって160m用の送信機を弄る時間がありませんでしたが、ちょっと落ち着いてきたので、しばらく悩んでいた不具合の原因を探っていました。

160m版はVN-4002とは異なりプッシュプル型のE級アンプで構成しています。


Si5351Aで発生させた1.9MHz台の矩形波を180度位相差をつけるため、片方だけに(回路図の上側部分)インバータを通します。各信号を74HC04を3パラにしたドライバでNchパワーMOSFETのFKI10531を5Vで駆動しています。

電源9Vで8W強、12Vで15W、13.8Vで20W前後得られますが、13.8Vの場合符号を打っているとランダムなタイミングで急に電流が上昇して必ず上側のFETだけが壊れてしまいます。また過電流でキーイング用のDMG3415も壊れてしまいます。まずはDMG3415を高耐圧のPchMOSFET 2SJ334に交換しました。

対策を模索しゲート・ソース間の抵抗値を下げたりゲートにシリーズにコンデンサを挿入したりしましたがまったく効果なし。ローサイドドライバを間に挿入してみたけれど、今度はドライバが壊れてしまうという泥沼に・・・壊れたFKI10531はかれこれ十数個にのぼり・・・(涙

しかし、上側のFETだけがいつも壊れるのでどうもロジック回路になにか問題があるのかと考えロジック出力とFETのゲートを一旦切り離してロジック回路の動作検証を行いました。

上側部分は送信用信号入力から一度インバータを通しているので、信号が途絶えるとロジック出力はHI状態が続きます(下側はLO状態が続きます)。このため信号がないときはNANDゲートを通してキーイング信号をLOにすることで、上側のロジック出力もLOになるようにしていますが、何かが原因で上側の出力が持続してHIになっているのかもしれません。

で、キーイング信号と上側ロジック出力、上下ロジック出力をそれぞれ同時観察して符号を繰り返してみると・・・

 ちょっと斜めになってます^^;
上の赤い曲線はキーイング信号で下の黄色は上側のロジック出力です。約500μ秒HIが持続してから1.9MHz台の矩形波となっています。どうやら信号入力に対してロジックがしばらくの間無反応になっているのかもしれません。さらに厄介なことに、この現象はランダムに出現します。

 ロジック回路の電源もキーイング信号でオンオフしている関係なのか曲線が乱れ分かりにくいため、ロジック回路の電源を常時接続に換え、今度は両方のロジック出力を観察しました。

(上下逆にすればよかった^^;)
上の赤い曲線は下側のロジック出力です。オシロが2現象タイプなのでキーイング信号曲線は観察できませんが,ランダムに↑画像のように700μ秒ほどHIレベルが持続している現象が確認できました。

FKI10531のデータシートの安全動作領域図とVGS-ID曲線をみると、

  と、VDS13.8V、500~700μ秒のパルス幅ではID10~20Aが限界ラインに見えます。30A供給可能な電源を繋げゲートに数百μ秒間5Vかかると、一瞬大電流が流れてFETが壊れてしまいそうです(直流負荷がほとんど0Ωなので)。

 この現象について、たまたまこのロジックIC固有の問題かそうでないのか考えてみましたが、データシートを見ているとどうも入力信号のHIレベル3.3Vに対して5Vロジックで受けていることが原因かと思い、ロジック回路の電源を3.3Vに下げて観察すると上のようなランダムな現象は起きませんでした。というわけで結局5Vでは3.3Vの入力HIレベルはギリギリなためという一応の結論になりました。(最初からレベル合わせろよという声が聞こえます・・・はい、ごもっともです、すいませんごめんなさい^^;)

ID-VGS曲線を眺めているとVGS3.5VあたりでIDが25A程度となって、3.3Vで駆動するともう少し少なくなります。オン抵抗や効率では多少劣るものの安全面、精神衛生上良いかもしれません。

ということで、VDS13.8V、VGS3.3VでFKI10531を駆動してみました。

赤がVDS、黄色がVGS曲線です。Cissが1500pFと高いので立ち上がりと立下りがかなりなまっていますが一応駆動できているようです。このときの出力は約18W(LPF通過後)、電流は1.72Aで効率は約75%程度となりました。

しばらくこれでテストを続けてみて問題なさそうであればプリント基板を起こしてみようと考えています。

・・・これで順調かと思われましたが、やはり13.8Vで送信しているとどこかのタイミングで上側のFKI10531が壊れてしまいました。どうもロジック回路がほんとうの原因ではなさそうです。ちょっとめげそうになりましたが、ロジック回路以前の制御系が問題なのではないかということでコントロール部の送信波出力とキーイング信号を引き出してオシロスコープで観察してみました。

赤がキーイング信号 黄色が7MHzの送信波出力
 送信波出力が発生して約2ミリ秒後にキーイング信号出力がHIになっています。これは設計どおりの動作です。しばらく符号を繰り返していると・・・


 ときどき送信波出力発生からキーイング信号HIまでの時間が短くなったり、さらに


 キーイング信号が先にHIになって約500~700μ秒遅れて送信波が発生しています。
これらの現象がランダムに起こっており、最後の画像の場合上側のFKI10531のゲートが500~700μ秒オン状態が持続していることになり、その結果上側のFKI10531が壊れてしまったというところまで突き止めました。

ファームウエアのコードを見直し問題を見つけて修正したところ、このランダムな現象はようやく解消されました。ソフトウエアの問題でこれだけハードの障害をおこすという事例自己解決することができましたがとても勉強になりました。

最初に疑っていたロジック回路には問題がないとおもわれるので5V駆動に戻そうかと思います。

閑話休題。

ところでまもなくハムフェア2017が開催されますが、今回は残念ながら別の用件で両日とも参加できなくなってしまいました。したがってここ数年参加していた全日本長中波倶楽部やVN-4002の展示や頒布もありませんのでご了承ください。

2017年8月4日金曜日

VN-4002キット完成報告いただきました!

先月からポケットサイズ 7MHz QRP CWトランシーバ VN-4002キットを頒布させていただきましたが、早速完成レポートといくつかいただいております。

MSOP10チップすらも手ハンダさせるという某所では『鬼のキット』と呼ばれていますが(笑)、なかなかどうして皆さんしっかり完成させているようで安心しました。レポートいただいて拝読し感じたのは、皆さんの技術力は相当高いということでした。ですから臆することなくどんどんチャレンジして欲しいです。

自作環境においても部品のダウンサイジングが進んでいて、面白そうなデバイスはほとんどが表面実装タイプのものばかりです。ですからチップ部品くらい多少見えにくくても装着できるようにならないと、この先自作が楽しめなくなってしまうのではないだろうか、と私は思ったりしているわけで、これからも積極的に取り入れていく所存でありますHi

徒然はそれくらいにしておいて、完成したVN-4002の画像をUPまたは送っていただいた方がいらっしゃいます。

 まずは、PUPさんの完成機の受信動画です。

VN- 4002 QRP CW Transciver ← 新しいウインドウが開き動画のリンク先に飛びます

PUPさんは、こちらのブログで様々なキットを紹介&頒布されている方です。先月の関ハム2日目にブースにおいでいただきキットを購入されました。(私もそのあとPUPさんのブースにうかがいDSPラジオの基板、アクリルパネルセットを購入して組み立てました。)2日ほどで完成されたようですが、最初受信音が鳴らなかったそうです。チェックの過程でオペアンプの電源ピンが浮いていたことを突き止めてすぐに解決し無事完成されました。

やはり多ピンデバイスのハンダの問題は結構確率としては多そうです。一番最初に完成されたJR1JWZさんもSi5351Aのピンの内部ショートが原因で最初発振出力が出なかったようです。

PUPさん、関ハムのブースではいろいろとお話いただきましてありがとうございました。 

次は、JE3QDZ吉村さんの完成レポートに添えられた完成画像をご紹介します。


どうです?これめちゃくちゃカッコいいじゃないですか!!

キットには側板を用意しませんでしたが、早速側板(横方向は透明のプラ板、縦方向はメッシュのアルミ板)が装着されているではありませんか。これだけでも雰囲気はかなり変わり、良い感じに仕上がっています。しかも手前に自作のミニ電鍵、バックにMIZUHOのDC-7Xとは・・・恐れ入りました。

吉村さんは、Keyer Mini-V2評価版キット、Keyer Mini-V2 Revision2(たぶん半完成版ではなくてフルキットの方?)も組み立てていただいたそうです。しかもファイナルのゲートードレイン電圧曲線まで測定していただき、思ったよりもE級ネットワークのロットによるバラツキは少ないことが分かりました。貴重なレポートとすばらしい写真ありがとうございました。

というわけで自分も写真を撮ってみました。


う~む、何かが違う・・・恥ずかしいので画像は小さめにしておきました(笑)

現在、VN-4002キットは15台分をキッティング作業中です。今回ハムフェアは所用で参加できないため頒布準備が出来たらKeyer Mini-V2と同様にメールによる受注という形にさせていただきます。(ただし、来週末どこかのイベントに数台出すかもしれませんが)

準備が出来次第ここのブログもしくは、専用ブログ他で告知します。