2019年7月2日火曜日

通過型電力計の製作(その1~回路編)

運用中の送信出力やVSWRモニタリングはメーカー製のトランシーバであれば、たいていは内蔵されているものですが、そういった機能を持っていないVNシリーズなどキットや自作QRP機を運用していると、実際出力が出ているのかどうか気になってきます。またアンテナ調整はアンテナアナライザであらかじめ調整しますが、運用中のアンテナトラブルも特に移動運用では少なくありません。

送信しても呼ばれないなぁとかなんとなく感度が悪いなぁと思っていたら、極端な話エレメントが切れていたなんてこともない話ではありません。

というわけで運用中のモニタリングとして通過型電力計の必要性を感じました。メーカー製のしっかりしたものもありますがここはやはり自作で、ということで製作を試みました。

それでは最初に回路を吟味していきましょう。通過型電力計は方向性結合器と整流部、それに表示部で構成されています。HF~VHF帯で使用されている回路は、方向性結合器としてCM結合のものが多く、整流にはVfの低いゲルマダイオードやショットキーダイオード、表示部はメカニカルなメーター(パネルメーターやラジケーター)といったところが通常でしょうか。

まずは方向性結合器ですが、先ほど述べた通り自作の通過型電力計として好んで採用されている回路のほとんどがCM型と呼ばれる回路です。



CM型は図のように電流検出用としてトロイダルトランスなどを用い、コンデンサにより電圧検出を行っています。この方式は比較的単純ですが、素子によるばらつきや周波数による結合度の変化など不安定要素もあり、なるべく調整箇所を少なくしたいことから次の図のように電圧検出もトランスを用いた回路を採用してみました。(今回mcHFに採用されている回路を参考にしました)



これってMM型っていうのでしょうか?タンデム型と呼んでいる文献も見かけたことがありますが、正式には何と呼んでいるのかは分かりません。いずれにせよトランスの巻き数比によって計算通りにインピーダンス変換することが可能です。

それから各トランスの巻き数比については大きくとることで電力計挿入による影響(損失や不整合、高調波の発生など)を少なくする事が出来ますが、検出した信号をダイオードで整流する場合信号が小さい、特にダイオードのVfを下回る時には電流はほとんど流れません。したがってこの場合例えば出力が小さいQRPの場合VSWRの値は過小評価になってしまいます。

色々な製作例などを見てみると巻き数比10:1として20dBカップラーとしているものがほとんどですが、これはダイオード整流の場合の妥協点なのかなと勝手に想像しています。実際今回のプロジェクトでは5W前後の出力を対象にするつもりなのでこの巻き数比で進めることにします。

もしQRPp(~27dBm)から100W級(+50dBm~)を一台でカバーする電力計を作るとするならばトランスの巻き数比は33:1にして、アッテネーターを加え十分レベルを下げたところで整流(レベル検出)にダイナミックレンジの広いログアンプを使うべきでしょう。

整流には定番のゲルマニウムダイオード1N60よりもVfが低く高周波特性の良い1SS106というショットキーダイオードを採用しました。2019年7月現在秋月でセカンドソース品が販売されています。負荷抵抗はやや高めの10kΩとしてその後にPICマイコンのアナログ入力ポートに接続します。PICの入力ポート保護のためにツエナーダイオードなどによるクランプやオペアンプのボルテージフォロワを前置したほうが安全ですが、実測20Wまでなら整流電圧がPICの電源電圧を超えないことを確認したので、5W前後での使用であれば問題なさそうということでシンプルさを優先して省略しました。

進行波、反射波それぞれの整流電圧を8ピンPICのPIC12F1840の対応するアナログポートに接続しPIC内でAD変換、数値演算とLCD表示制御を行います。このPICは8ピンPICの中でもプログラムメモリやRAMサイズも大きく、今回のプログラムを純正のXC8コンパイラフリー版でコンパイルしてもプログラムエリアの50%弱に収まっています。しかも1個120円(秋月)と安いので使い勝手、コストパフォーマンスが非常に良いです。その代わりピン数が少なく今回の製作ではすべてのピンを使い切っています。でも逆に制限があるほうがいろいろと工夫を考えるのでこれはこれで良いのかもしれません。

というわけで下に固まった回路図と、プロトタイプ版の画像を上げておきます。

ディジタル通過型電力・VSWR計回路図

秋月基板Cタイプに方向性結合器と整流部を実装し動作テスト

 ~次はプログラム編に移ります。

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