計算上は荷装容量が12pFと小さくなり、入出力インピーダンスんは3.3kΩと高くなっています。APB-3で測定してみると帯域幅は約1kHz程度となりずいぶん狭くなってしまいました。要因を考えるにまずラダー型の設計式を見てみると...
Ct=2xCs((δF/Bw)-1))
Ct:荷装容量 Cs:端子間容量
δF:並列共振周波数 - 直列共振周波数 Bw:-3dB帯域幅
とあり、Bwに対してプラスに影響するものは荷装容量が小さくなること、水晶振動子の端子間容量が大きいこと、並列ー直列共振周波数差がおおきいこと、と読み取れます。荷装容量を大きくすると帯域幅が狭くなることは知られており、可変させることでフィルター帯域を任意に変化させることも可能です。しかし、荷装容量を減らすと(ブレッドボードで組んでるためか)浮遊容量などの影響が大きくなって設計値より大きくずれてしまうようで(帯域幅が広がらない)、かつインピーダンスも上昇します。
となると、荷装容量を変えないで帯域を広げるならば、水晶振動子の端子間容量を増やせば...そうだ振動子をパラにすれば良いかも、という単純な発想で早速準備してみました。まず、2つの水晶振動子をパラレル接続にした場合と単体で測定比較してみました。端子間容量は当たり前かもしれませんが倍の3.6pFとなり、直列共振周波数は単体よりやや上昇(200Hz程度)し、直列ー並列の差はごくわずかに広がりました(100Hz程度)。
濃い曲線が振動子単体 右にシフトしている薄い曲線は2つパラレル接続
シングル・パラレル接続4素子フィルター(設計Bw = 2.1kHz)
ブレッドボード上で4素子フィルターを組み、2.1kHz幅として計算した荷装容量でシングルとパラレルで構成したフィルターを測定しました。濃い曲線がシングル、薄い曲線がパラレルの測定結果ですが、荷装容量にかかわらずパラレルの方が帯域幅が広がっています。ただ、やはりせいぜい1.5~1.6kHz幅止まりで十分広がりません。
シングル(濃曲線)・パラレル接続(薄曲線)フィルター特性比較
(測定系とインピーダンスがあってないので帯域内リプルが大きい)
浮遊容量の影響もありますがもともとの水晶振動子の直列ー並列共振周波数差が4.4kHz程度と狭いため水晶振動子をパラレルにしても思うようには広がらないのだろうかと考察します。
また、もとの文献をまだ見ていませんが直列ー並列共振周波数の半分程度がその水晶振動子で作成できる最大帯域幅と考えるという記述もネット上で散見されており、どうやらこれらの振動子を使ったラダー型フィルターはせいぜい2kHz程度が限界なのかもしれません。
ブレッドボードではなくてちゃんと組んで再検証する必要はありますが、これらの水晶振動子で作るラダー型フィルターはCW用狭帯域フィルターに限ったほうが無難といったところでしょうか。